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*2025年5月31日現在のGoogle Analyticsのデータより

投稿日:2025年6月11日

DRBFMの基礎とソフトウェア開発における実施のポイント

はじめに:DRBFMとは何か?

DRBFM(Design Review Based on Failure Mode)は、製品やプロセスの変化点管理を中心として、設計段階で潜在的な不具合の発生を未然に防ぐための手法です。

DRBFMは、もともと自動車業界のトヨタで生まれたConceptですが、今では家電や精密機器、医療機器といった幅広い製造業、さらにはソフトウェア開発の分野でも重要な役割を果たすようになっています。

従来のFMEA(Failure Mode and Effect Analysis)が全体管理を主眼とするのに対し、DRBFMは「変化点に着目し、小さな違和感を察知し議論を深める」ことに価値を置きます。

業界全体が「効率化」と「確実性」の両立を求められる一方で、昭和的なアナログ思考や職人技への依存が残る現場。

この現実にどうDRBFMが役立つのか、そしてソフトウェア開発領域での実践例を交えながら、その本質に迫ります。

DRBFMの基本プロセスと狙い

DRBFMの流れ

DRBFMは、以下のような基本プロセスで進められます。

1. 変化点(Difference)を洗い出す 
2. その変化による“壊れる(Break)”リスクを徹底的に議論 
3. 対策(Failure Mode)を設計に盛り込む

従来の全網羅型のFMEAとの一番の差は、変化点に焦点を絞って深堀りする点にあります。

「なぜ、それを変えたのか」「どこが変わったのか」「どんな悪さが起きうるのか」をとことん掘り下げる。

これにより設計者や製造現場の“思い込み”や“盲点”を炙り出し、市場不良の芽を早期に発見できます。

なぜ変化点がそれほど重要か?

成熟した製品や工程において、最大の不良原因は「何かを変えた」時に潜んでいます。

たとえば、材料サプライヤーを変えた、工程の一部を自動化した、ソフトウェアのサブモジュールを更新した──こうしたほんの小さな“変更”が、実は全体に大きな影響をもたらすのです。

現場では「前はうまくいっていたのになぜ?」という事象が珍しくありません。

DRBFMの最大の狙いは、「変えるなら、必ず“壊れる”リスクをみんなで真剣に考えよう」という風土づくりにあります。

DRBFMの導入メリット:アナログ業界にも変革をもたらす

なぜ製造現場でDRBFMが根付くのか

製造業の現場では、昭和的な“勘と経験”で物事が進むことが多く、ベテラン作業者の“暗黙知”に頼る傾向が根強いです。

しかし、これからの時代、サプライチェーンの複雑化や自動化、自社開発・アウトソーシングの組み合わせにより、“ちょっとした変化”が大きな影響を与える構造になりました。

DRBFMは“共通言語”として変化点を全員で洗い出し、構造的にリスクを可視化できるため、現場力の底上げに直結します。

また、準備の難しさや議論の面倒さといった“負担感”も、実施回数が増えることで格段に効率化されていきます。

アナログ業界でも実践できる2つの理由

1. 変化点が明確なため導入障壁が低い
どんな小規模メーカーや町工場でも、設計変更や部品変更は頻繁に発生しています。

「変える点だけ」を集中的に議論するだけなら、特別なITツールや巨大な会議体がなくても十分始められます。

2. 暗黙知の形式知化が進む
長年の現場感覚や事故ヒヤリが、変化点ベースの議論で「みんなの知恵」として蓄積されていくため、属人化のリスク低減につながります。

これは、今後ベテラン層が引退していく中で、技術伝承・技能継承上も非常に大きなポイントです。

ソフトウェア開発におけるDRBFMの適用

なぜソフトウェア開発でDRBFMが求められるのか

近年、製造業製品は「ハード+ソフト」の複合体になることが当たり前となってきました。

製品機能の中核を担うのが「組込ソフト」であることも珍しくありません。

しかし、ソフトウェアは設計・リファクタリングや外部モジュールのアップデートなど、“見えない部分”で絶えず変化が発生しています。

【よくある失敗例】
・以前使っていたサードパーティのライブラリを入れ替えたことで、思わぬバグが顕在化
・通信プロトコルや仕様書の一部文言修正が未検討のままテスト工程に進んでしまい、納入後に不具合判明

ソフトウェア開発現場も、開発リーダーやサプライヤー、バイヤーと多くのプレイヤーが関与しています。

だからこそDRBFMの「変化点へ徹底フォーカス」という考え方が、従来以上に威力を発揮します。

ソフトウェア分野でDRBFMを実践するポイント

1. 変化点リストを「コードベースで可視化」する
ソフトウェアのバージョン管理ツール(Git等)やチケットシステムを使い、「何を、どこを、どのように、なぜ変更したか」を一覧できるドキュメントを作成しましょう。

2. DRBFM議論は「設計者だけ」にしない
実装者、テスト担当、ユーザー部門、調達担当も巻き込んで「変えることで何が壊れそうか」をざっくばらんにディスカッションします。

3. 不具合発生時は必ず“元の変化点”にさかのぼる
品質問題が起きた時、起点となる設計変更・仕様修正・外部モジュールのバージョンアップなど「原点回帰」で真因を洗い出す訓練を習慣化しましょう。

4. メトリクス作成やE-DRBFMによる自動補助ツールも活用
最近はDRBFM専用の補助ツールも登場しています。設計変更情報を自動集計したり、過去事例の横串検索もできるため、効率化の追い風になります。

バイヤーとサプライヤーそれぞれの観点から見るDRBFM

バイヤーにとってのDRBFM活用戦略

バイヤー(調達・購買担当)の視点で重要なのは、「仕様変更や新規採用部品でのリスク回避」です。

DRBFMを契約や仕様承認の前工程に組み込むことで、サプライヤーから上がる設計変更情報の棚卸しや、品質トラブルの元となりやすい“見落とし”を防げます。

また、取引先との連携深化や、経験の浅い若手バイヤーでも共通認識を持ちやすいといった副次効果も期待できます。

サプライヤーから見た場合のメリット

サプライヤーにとってDRBFMがメリットをもたらす理由は主に2つです。

・「なぜここを変えたのか」が論理的に説明できることで、バイヤー(発注元)の信頼を得やすくなる
・設計仕様や工程変更のリスクが事前共有できるため、受入検査や納入後クレームの発生率が明確に下がる

日本的な「お互い様」「暗黙の了解」だけに頼らず、“ロジックベースでリスクを見える化”という新たなコミュニケーションスタイルへの橋渡しにもなります。

DRBFM実施の落とし穴とその「打ち手」

時間がかかる、議論が形式的になる──これをどう乗り越えるか

DRBFMを始めてみると多くの現場で「時間がかかりすぎる」「結局マンネリ化してしまう」といった壁にぶつかりがちです。

しかし、これは「慣れの問題」であり、むしろ勘どころをつかめば実施負担は半減します。

  1. 最初の3回は徹底的にやる。議論のテンプレートを早期に作り、フォーマット化する。
  2. 議論に参加する「現場担当者」と「設計・調達担当者」をしっかりペアにする。
  3. マンネリ解消のために、半年に一度はファシリテーター役を交代する。

こうすることで、DRBFM本来の「現場の知恵、実感」を掘り起こす議論が続きます。

DRBFMが製造業の未来をどう変えるか

製品ライフサイクルが加速し、変化の波が押し寄せる中、製造業の強みは「現場の隠れた知見」と「論理的な再現性」の両輪にあります。

DRBFMはそのどちらの要素も拡張してくれる、非常に有効な武器です。

ハードとソフトが融合する時代、多様なプレイヤー(設計、現場、バイヤー、サプライヤー)が同じ土俵でリスクを共有し、失敗の芽を未然に摘める。

昭和の職人依存から、次世代型のチームマインドへ。

DRBFMは、そんな転換のための知的インフラとして活用できるはずです。

まとめ:DRBFMで製造業に“新しい常識”を

DRBFMは、単なる設計レビューではなく、「変化点の本質を深く掘り下げ、市場クレームの原因を設計段階でつぶす」ための強力な実践ツールです。

特にソフトウェア開発や複雑なサプライチェーン構造にも柔軟に適用でき、バイヤー・サプライヤー間の新しい信頼形成にも役立ちます。

今この瞬間にも起きている、ほんの些細な“変化”に敏感になること。

その変化点を現場みんなで議論できる企業が、次の時代の製造業をリードする存在になるはずです。

冒険する勇気を持って、ぜひあなたの現場・プロジェクトにもDRBFMを取り入れてみてください。

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