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物流費の可視化で内陸・港湾・保管を分解する着地原価管理

目次
はじめに:着地原価管理の重要性と現場目線の物流費可視化
製造業の現場において、ものづくりの価値を最大化するためには、単にモノを作るだけでなく、そのモノが顧客の元に届くまでの一連のコスト、いわゆる「着地原価」を正確に把握し、最適にコントロールする力が不可欠です。
しかし、実際の現場ではこの「着地原価」の管理が属人的・アナログ的になっているケースも多いのが実態です。
特に物流費は、内陸輸送、港湾輸送、保管・荷役と大きく三つのフェーズに分かれるものの、それぞれの費用が”ざっくり一括”で集計されていたり、外注任せで実態が見えにくいという課題が長年続いています。
本記事では、物流費の可視化の必要性と、その具体的な分解方法、そして昭和時代から根強く残るアナログ業務の現場感覚も加え、着地原価管理の実践的なノウハウをご紹介します。
サプライヤー、バイヤー、そして現場責任者としての多様な立場から、「次の一手」を見つけていただければ幸いです。
物流費の見える化がもたらす価値
物流費の可視化とは、モノが自社から顧客へ届けられる過程で発生する一切の費用を、細かく分解して把握することを指します。
この見える化によって、以下のようなメリットが生まれます。
コスト競争力の強化
着地原価を正確に把握することで、自社製品の価格競争力を保ったうえでの利益確保が可能となります。
現場でありがちな「なんとなくこのぐらい」「他社も同じくらい」という曖昧な管理では、本来削減できるコストにメスを入れることができません。
課題箇所の特定と改善
内陸・港湾・保管──三つのセグメントでコストを分解すれば、どの工程で非効率やムダが生じているのかが明らかになり、ピンポイントで改善策を打てます。
たとえば、内陸輸送だけが突出して高かったり、港湾での滞留が長すぎるなど、従来「物流費」とまとめていた曖昧なコスト構造をクリアにできます。
サプライチェーン全体での競争優位性獲得
物流費の可視化は、サプライヤーとバイヤー双方の間でコスト構造に対する透明性を高め、Win-Winの関係構築をもたらします。
取引先選定やパートナーシップの見直し、海外進出時の原価コントロールにも直結します。
内陸・港湾・保管に分解する意義――実践的アプローチ
物流費を「内陸」「港湾」「保管」という三つの区分で管理する理由はどこにあるのでしょうか。
それは、物流プロセスごとに意思決定・交渉・見直しが求められるコスト構造やリスク要素が大きく異なるからです。
内陸物流:現場のムダと改善余地の宝庫
内陸物流は、工場から港・倉庫までの国内輸送や、荷積み・荷下ろしにまつわる費用です。
アナログ色が強い現場では、長距離トラック利用、複数回の積み替え、帰り荷の未活用といった旧態依然の運用が多く、まだまだ「可視化」の余地があります。
現場目線では、物流業者とのリアルな折衝力や積載率アップ、共同配送の仕組み化が重要です。
最近ではトラックドライバー2024年問題もあり、内陸物流の効率化はコストだけでなく、供給安定性の面でも避けては通れないテーマです。
港湾輸送:見えにくい費用の落とし穴
港湾輸送は、主に国際物流や遠隔地への輸送に関わるもので、船賃・ターミナルチャージ・通関費用など多岐にわたります。
ここには為替リスクやサーチャージ、インボイス発行・B/L(船荷証券)管理などの見えにくいコスト要素が紛れこんでいます。
現場では「フォワーダーに丸投げ」で見積の明細がよくわからないまま通過しがちですが、1アイテム・1顧客単位での費用分解、定期的な見直しと比較が黒字化の切り札になります。
保管・荷役:動かないコストに潜むリスク
保管費用については、昭和と令和で大きなトレンドの違いが出てきました。
昔ながらの自社倉庫志向から、近年はサードパーティロジスティクス(3PL)活用の拡大によって、コストの中身やサービスレベルが多様化しています。
一見地味なコストですが、長期滞留や荷役作業のムダ、過剰在庫のリスクが内在しており、作業改善や可視化の徹底で大幅なコストダウン余地が生まれます。
ここを管理できる工場長・購買担当者は、現場力の高さが問われるポイントです。
昭和的アナログからの脱却:デジタル時代の物流費分析
物流業界、製造業界は「昭和的なアナログ文化」が根深く残る世界です。
FAXや紙帳票、エクセル手作業に頼るコスト集計、感覚的な値決めは今なお珍しくありません。
この課題を解決する鍵は、業務プロセスの標準化とデジタル技術の導入です。
標準化の第一歩——物流費用のテンプレート化
まずは、内陸・港湾・保管ごとに費用項目を一覧化し、毎月・毎案件で必ず同じ切り口でデータを蓄積・比較できるテンプレートを設けましょう。
「複数の仕入先から請求書がバラバラに届く」「仲介業者の手数料構造が不透明」など、現場で感じている不満や面倒も、テンプレート化とデータ化で大きく効率化できます。
デジタル化――現場で活きるIT活用
最近では物流費管理に特化したSaaS型ツールやBI(ビジネスインテリジェンス)も増えています。
全社レベルで導入できなくとも、まずは自部門やサプライヤー間でGoogleスプレッドシートやPowerBIを使った共同管理から始めるだけでも効果があります。
「現場で忙しくてITなんて…」という声も多いですが、一度ベースを作れば毎月の集計や比較、異常値アラートも自動化でき、現場力そのものを引き上げてくれます。
着地原価見える化で現場と経営が一体となる仕組みづくり
着地原価管理を高度化すると、単なるコストダウンだけでなく、現場(工場・物流)と経営(管理部門・経営企画)が同じ目線で課題を語れるようになります。
この「共通言語化」こそ、強い製造業、バイヤー、サプライヤーの組織体質をつくる最大のポイントです。
バイヤーにとってのインパクト
バイヤーは購買価格だけでなく物流コストも含めた「本当のコスト」で比較・選定ができるため、調達先選定や価格交渉のレベルが一段上がります。
また、サプライヤーとのパートナーシップ強化や、海外展開でのコストシミュレーションも迅速かつ精緻に行えます。
サプライヤーにとってのメリット
サプライヤー側も「価格競争」だけでなく、「一緒に物流費・保管費も下げていける提案型」の攻めの営業が可能となり、バイヤーとの”安売り合戦”から脱却できます。
クロスドックなど物流イノベーションの協働や、着地原価削減を軸とした新たな取り組み提案も生まれやすくなります。
現場に根付く「コストを自分ごと化」する文化
本質的な着地原価管理は、現場リーダー・工場長・物流管理担当一人ひとりが自分事として「自工程のムダはないか」「今月の物流トレンドは異常値か」と問い続ける文化を生みます。
この組織力こそ、AIやロボットだけに頼らない、現場発の強い製造業づくりに直結していきます。
まとめ:物流費の可視化こそが未来の製造業の根幹
物流費を内陸・港湾・保管に分解し、着地原価管理を現場レベルまで徹底することは、「ものづくりの本当の力」を最大化するために避けては通れない課題です。
昭和的アナログと現代的デジタルを融合し、業務プロセスの可視化・標準化・IT化を進めてこそ、新しい地平線が開けます。
物流費分析の熟練度は、単なるコストダウンでは終わりません。
海外戦略、サプライチェーン強靭化、取引先との信頼構築、そして自らのものづくり哲学を未来へと継承する力となります。
製造業に携わるすべての方へ。
今こそ身近な“物流コストの細分化”に目を向け、実践的な「真の着地原価経営」に挑戦してみてはいかがでしょうか。
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