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投稿日:2025年7月6日

レーザ異材接合で実現する樹脂金属高強度ハイブリッド技術

はじめに:製造業の進化を支える新たな接合技術

製造業の世界では、製品の軽量化や高機能化が求められる中で、異なる材料同士の接合技術が飛躍的に進化しています。

特に、金属と樹脂という従来は難しいとされてきた組み合わせをいかに強固に、かつコスト効率良く接合するかが、今や競争力の根幹を成しています。

レーザ異材接合による樹脂―金属ハイブリッド技術は、まさにそれを実現する革新的なソリューションと言えるでしょう。

この技術の現場の課題とブレークスルー、そして今後の産業応用の可能性について、製造現場で20年以上腕を磨いてきた経験から実践的な視点で解説します。

なぜ「異材接合」に注目が集まるのか

自動車・家電を中心に加速する軽量化ニーズ

自動車業界では、燃費性能やEVの航続距離向上が世界的な課題となっており、「軽い」「強い」素材の活用が最大テーマです。

しかし、一つの素材だけで全てを賄うのは難しく、樹脂と金属、それぞれの強みを生かした複合化が進んでいます。

家電やIT機器分野でも、視覚・触感の向上や新しいデザインニーズ、組み立て効率化の観点から異材接合は重要です。

「構造部品」の進化と生産性向上の両立

バイヤーや開発現場からは、「部品点数を減らしたい」「強度を犠牲にせず組み立て工数も下げたい」という切実な要求が飛んできます。

異材接合技術は、まさにその要望に応え、製品のコスト競争力をダイレクトに左右するポイントになっています。

これまでの異材接合の「壁」とレーザ技術の革新性

従来の異材接合の限界

「樹脂と金属なんて、接着剤でいいじゃないか」と思うかもしれません。

しかし、実際には接着強度や耐久性に課題が多く、特に衝撃や熱サイクルを繰り返すような厳しい環境では「剥がれ」や「クラック」が懸念材料でした。

機械的なかしめやインサート成形もありますが、寸法精度や加工コスト、応力集中による破断事故など、現場でヒヤリとした経験が一度や二度ではありませんでした。

レーザ異材接合の原理とメリット

レーザ異材接合は、光透過性のある樹脂に高精度のレーザを照射し、その直下の金属と樹脂の界面にだけ短時間で火熱を発生させて接合する技術です。

従来の「全体を熱する」工程と違い、ピンポイントでダメージなく、しかもミクロンレベルの高精度制御が実現します。

これによって、意匠面を傷つけることなく、美観性や気密性も両立した強固なハイブリッドを短時間で作ることが可能になりました。

実践現場で見えてきた強みと課題

強固な接合強度と設計自由度の広がり

筆者の経験でも、レーザ異材接合は「強度を確保しつつ、薄肉化や意匠の自由度を大きく取れる」のが大きな魅力です。

コネクター端子のハウジングや、半導体デバイスのパッケージ、バッテリーケースのシールなど、樹脂一体成型や複雑な部品では特に真価を発揮します。

従来の金属だけ、樹脂だけでは成し得なかった「形状」「サイズ」の部品をコスト競争力高く量産できる道を切り拓きました。

高い気密性とFA革新へのインパクト

レーザ異材接合は、超音波や熱融着に比べて気密・水密性に優れています。

特に新しい車載用バッテリーや医療器デバイスなど、漏れやガスの侵入が命取りになる領域で重宝されています。

また、加工エリアがクリーンで、高速・自動化しやすいという特性から、スマートファクトリーや24H無人運用のライン設計にも最適です。

現場で直面する「三つの課題」

一方、実装拡大にあたってはまだ越えるべき壁もあると感じています。

1)材料選定の幅狭さ
レーザ透過性が高く、なおかつ強い化学的接着性を持つ樹脂および金属の組み合わせには制限があります。

ナイロン、PBT、PPSなどのエンジニアリング樹脂とアルミ、ステンレス材が主流となりますが、原価や仕入、在庫管理に「制約」が生じやすいのが実情です。

2)初期導入コストと継続教育
高品質なレーザ発振器、精密光学機器、周辺設備投資は依然として高額。

さらに、現場オペレーター・保全担当への専門教育が欠かせません。

この点に昭和型のアナログ管理文化が根強い中小工場では、キャッチアップの速度差が顕著です。

3)接合部の「見える化」
非破壊での検査が難しく、初期の工程設計や品質管理でノウハウの蓄積・フィードバックループが不可欠です。

長期信頼性試験や量産立ち上げ時のトラブルフリー化には、大手ほどアドバンテージがあります。

サプライヤー・バイヤーの立場で押さえるポイント

サプライヤー(部品・材料メーカー)の視点

サプライヤーとしては「どの樹脂・金属を採用した時に量産加工性が安定するか」「バイヤーが要求するスペックへの柔軟な対応力」が問われます。

具体的には、樹脂の改質(添加剤やフィラーの工夫)、レーザ吸収層の設計、プライマー処理など、独自のノウハウを持つ供給者は差別化できるチャンスです。

また、量産条件(レーザ出力、走査速度・パターン、アニール後処理等)をセットで提案できると、パートナー関係が築きやすくなります。

バイヤー(調達・設計購買担当)の視点

一方、バイヤー・調達担当にとっては「トータルコスト」「安定調達」「工程一貫性」が最重視されます。

新規プロジェクトで採用を増やす場合、「歩留まり率」「実ラインでの検査性」「納期遵守体制」「工程FMEA(工程リスク管理)」など、リアルな現場数字で比較検討が求められます。

また「SDGs」「CARBON NEUTRAL」時代の調達活動では、省エネ化や不良低減のストーリーも重視されてきています。

今後の展望と異材接合が拓く未来

高機能化とサステナビリティの両立

今後、再生材樹脂やマグネシウム、チタンなど新素材との適用拡大、さらには高機能表面処理との組み合わせなど、新たな進化が期待されています。

またリサイクル性やカーボンフットプリント低減の観点から、分解性に優れた「選択的分離・再接合」技術も研究が進んでいます。

国内外サプライチェーン競争への対応

グローバル調達・海外工場との連携では、いかに自動化・無人化を推進しつつ、品質ノウハウを「見える化」してIT化するかが勝負所です。

日本の現場力・細かな気配りをベースに、設計から試作、量産へと初速を上げる仕組み作りが肝心です。

まとめ:異材接合がもたらす「新しい現場力」

レーザ異材接合による樹脂―金属ハイブリッド技術は、単なる工程短縮や単価低減を超え、製品そのものの「性能」「信頼性」「ブランド価値」まで底上げする力を持っています。

今や単なる材料や設備選定ではなく、現場設計・調達・生産・品質管理、さらにはSDGsまで含んだ“全体最適”の視点が求められます。

昭和のやり方に安住せず、異分野連携とIoT、現場で積み上げた知見を融合させることで、新たなモノづくりの地平線が開かれるはずです。

この記事が少しでも、製造現場やバイヤー、サプライヤー、将来の挑戦者の皆様のヒントになることを願っています。

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