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投稿日:2025年6月11日

レーザ溶着の基礎とトラブル対策および最新技術

はじめに:製造業におけるレーザ溶着の重要性

製造業の現場では年々高まる生産効率化の要求と、複雑化する製品設計への対応が求められています。
その中で、「レーザ溶着技術」は、自動車、エレクトロニクス、医療機器など多くの分野で急速に普及してきました。
溶接の中でも高い精度・クリーンな仕上がり・自動化への親和性という特長を持つレーザ溶着ですが、長らくアナログ主流だった現場にとっては、戸惑いや課題も少なくありません。
この記事では、レーザ溶着の基礎から、現場視点でのトラブル事例とその対策法、そして今後注目すべき最新技術動向まで、実践的な内容をお伝えします。

レーザ溶着の基礎知識

レーザ溶着とは何か

レーザ溶着(Laser Welding)は、高出力のレーザ光を材料の接合部分に照射し、そのエネルギーで材料を局所的に加熱・溶融し、接合する技術です。
スポット溶接やアーク溶接と異なり、非接触であるために加工物の歪みや熱影響が少なく、細部まで高精度な溶接が求められる場面で能力を発揮します。
特に部品の薄肉化、軽量化が進む最近の製造現場では、その意義がますます大きくなっています。

レーザの種類と特徴

代表的なレーザ発振器には、CO2レーザ、YAGレーザ、ファイバーレーザがあります。

CO2レーザは出力も高く、比較的大型ワークや厚板溶接に向いています。
YAGレーザとファイバーレーザは、ビーム径が細く、細かい溶接や精密加工に強みがあります。
特にファイバーレーザは、近年の技術革新により量産ラインでの導入が進み、高いエネルギー効率とメンテナンスのしやすさが評価されています。

レーザ溶着のメリットとデメリット

メリットとしては、
– 熱影響部(HAZ)が非常に狭く、母材の変形が少ない
– 精密な自動制御が可能
– クリーンな仕上がり

デメリットとしては、
– 設備投資コストが高い
– 反射率や素材の組み合わせによっては溶接が困難
– オペレーターに高度なスキルが求められる

などが挙げられます。
そのため、実際の現場では「使いこなす」ための知識とノウハウが重要です。

現場でよくあるレーザ溶着のトラブル事例と対策

レーザが安定して当たらない・パワーが出ない

現場で頻発するのが「溶着が安定しない」「深さがバラつく」といった問題です。
この背景には、レンズの汚れや光軸ズレ、またはワークの位置ズレなどが潜んでいます。
特に昭和型の現場は、「目視」や「体感」での調整が根付いており、自動化装置やセンサーを活用していないケースも多いです。

対策として:
– レンズやミラーの定期クリーニング
– 自動位置補正機能付き治具の導入
– 作業員への基礎教育とマニュアルの最新化

こうした積み重ねが安定化につながります。

溶着部の割れ・ピンホール・未溶着

溶着時に発生しやすい不良として、「割れ」「ピンホール」「未溶着」が挙げられます。
材料の組み合わせや表面状態(油分・酸化膜)、制御パラメータの設定ミスが主因です。
とくに多品種少量生産の現場では、材料ロットごとに最適条件が異なるため、標準条件に頼りすぎて不良が生まれやすい傾向にあります。

対策として:
– 材料前処理(脱脂・酸化膜除去)の徹底
– 小ロットでもパラメータ検証を怠らない
– 異常検知センサーやAI画像検査の活用

これにより、検証レスでの「現場勘」からデータ根拠のある工程へ進化させることが重要です。

生産設備のダウンタイム増加・自動化未対応

導入当初は順調なレーザ装置でも、メンテナンス不備や「人頼み」の体制、IoT未連携のままでは、ラインのダウンタイムが増え歩留まりが低下します。
この問題は、特に昭和型のアナログ現場で根強く残っています。

対策として:
– 保守点検スケジュールの厳格な運用
– 遠隔監視システムによる稼働状況の見える化
– オペレーターの属人化解消に向けた標準作業化

シンプルですが、この基本徹底が安定稼働の鍵を握ります。

バイヤー視点で見たレーザ溶着の導入ポイント

コストとパフォーマンスの天秤

レーザ溶着のシステムは初期投資が大型化しがちです。
バイヤーの立場で重要なのは、
– 投資回収期間(ROI)
– メンテナンス費用、消耗品コスト
– 増量やリードタイム短縮への貢献度

といった総合的な目線です。
単純な装置価格だけでなく、生産性向上や不良低減効果など、多角的に評価することが最重要となります。

サプライヤーとの強固な連携

バイヤーが求めるのは「単なる装置の売買関係」にとどまりません。
導入後のトラブル対応、パラメータ設定、改善提案まで、一体となって現場を底上げしてくれるパートナーシップを重視します。
サプライヤーとしては、現場見学やサンプル検証に迅速かつ柔軟に対応し、デジタルデータやエビデンスも揃える体制が求められます。

最新動向:レーザ溶着技術の進化と今後

AI×レーザ溶着の時代へ

近年、AI(人工知能)やIoTとの連携による「スマートファクトリー化」が加速しています。
AI画像認識による溶着品質のリアルタイム判定、自己学習型の溶着条件最適化システムの導入が進みつつあります。
また製造データのクラウド共有によって、多拠点横断でのベストプラクティス標準化も実現し始めています。

新素材対応とマイクロジョイン技術

EV化やIoTデバイスの小型化により、アルミや銅など高反射材、また異材接合など、従来困難とされた領域へのチャレンジも活発です。
超短パルスレーザによる微細接合や、レーザハイブリッド溶接といった新手法も注目されています。

今後求められる現場力とラテラルシンキング

標準化・自動化の進展は、逆に現場作業者の主体性や「気付き」「改善力」を重視する流れも生み出しています。
既存設備をどう生かし、次世代技術をどう取り込むか――。
昭和からの“職人ワザ”と、データ・デジタルの融合が問われています。
現場主導で課題意識を持ち、常に新たな可能性を探る「ラテラルシンキング(水平思考)」こそが、今後の製造業現場に求められる本質です。

まとめ

レーザ溶着の基礎から現場トラブル、バイヤー×サプライヤーの相互理解、そして最新技術動向まで、実践的な視点で俯瞰しました。
昭和アナログ型の現場でも、意識と行動を一歩進めれば、レーザ溶着の導入・活用は十分に可能です。
製造業の最前線で働く皆さんが、自分ごととして新技術を活用し、現場力を高めていかれることを期待しています。

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