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貨物の積付け崩れで発生する損害を避けるラッシング強化と証拠残し

目次
はじめに:貨物積付け崩れの現状とそのリスク
製造業の現場では、完成した製品を国内外の顧客へ安全に届けるために、物流における貨物積付けの管理が極めて重要です。
特に長距離輸送や国際輸送の場合、トラックやコンテナでの積み付け時のラッシング(貨物固定)が甘いと、荷崩れが発生し大きな損害やビジネス上の信用失墜につながります。
本記事では、現場目線で積付け崩れによる損害を最小限に抑える方法として、ラッシング強化と“証拠残し”の重要性、そしてこれらを実践するための具体的施策と動向について詳しく解説します。
なぜ貨物積付け崩れは発生するのか
アナログな慣習が残る業界構造が一因
いくら技術が進歩しても、多くの日本の製造業や物流現場では「これまでずっとこうやってきた」アナログ手法が根強く残っています。
現場任せ、暗黙知による“職人芸的”積付けが多く、標準書や積付け設計書の更新もおろそかになりがちです。
これにより、担当ごとの品質差が積載のバラツキを生み、積付け崩れのリスク要因となっています。
人手不足と経験値低下の波
高度経済成長期から続く熟練作業員の引退と、若年層人材不足により、現場の経験値総量が減っています。
特に積付け・ラッシングの適正判断力やノウハウ継承が不十分なまま、見よう見まねで作業するケースが増えています。
これが貨物崩れや事故、損害発生率の増加を招いているのです。
貨物崩れがもたらす損害とビジネスインパクト
直接的な製品損失・再生産コスト
荷崩れによって発生する最も分かりやすい損害は、製品破損や部品の紛失です。
再生産や補修対応には多大な時間・費用がかかり、サプライチェーン全体への影響も無視できません。
隠れたコスト:顧客信頼の低下とペナルティ
一度でも納入品の破損事故が発生すると、顧客からの信頼低下は避けられません。
損害補償やペナルティ、納期遅延による取引停止など、経営的に見過ごせないダメージとなります。
また、風評リスクも長期的な負担となるでしょう。
ラッシング強化がもたらす現場改革
ラッシング(貨物固定)の役割と基本原則
ラッシングとは、輸送中の振動・衝撃・急制動などに対して貨物を動かないように固定する作業です。
主な資材にはラッシングベルト、チェーン、ワイヤー、コンテナブロックなどがあり、荷重や道路・航路条件、貨物形状に合わせて最適な方法を選ぶことが重要です。
なぜ「強化」が求められるのか?
現代の物流環境は多様化し、海外発送や混載便の活発化、道路事情の変化(高規格道路・低規格道路の混在)、さらには温暖化による気象変動など、従来よりも更に厳しいラッシング基準が求められています。
ラッシング不足のままでは、荷崩れの確率が飛躍的に高まってしまいます。
現場でできるラッシング強化の実践策
積付け設計書と標準手順の整備
まず、貨物ごとの最適な積付け手順・積載パターンをマニュアル化し、全現場で共有することが基本です。
イラストや写真をふんだんに用いた分かりやすい標準書作成が、品質の平準化に直結します。
ラッシング資材の規格化と維持管理
ラッシング資材を標準化し、定期的な点検・交換をルールにしましょう。
ベルトの破損や金具の摩耗などは見逃されがちですが、小さな兆候が大事故に直結します。
定期的な現場教育・シミュレーション訓練の実施
多忙な製造工場ほど教育時間は後回しになりがちです。
しかし、実際に荷崩れ・被害が出た現場写真や事故事例を使った、リアルな危険共有・訓練の実施でスタッフの意識は大きく変わります。
IT・IoTを用いた記録・監視体制の構築
コンテナ内カメラやロガー(振動・衝撃記録計)、積付け状況の写真撮影・クラウド保存など、現場にあった記録・監視体制を導入しましょう。
これが次項の“証拠残し”にも直結します。
証拠残しの重要性と実践例
なぜ証拠残しが必要なのか
損害発生時、バイヤーとサプライヤーの間で“どこで、どういう過程で問題が発生したか”を証明できなければ、責任の押し付け合いになりがちです。
特に海外向けの物流では、法律・商習慣も異なるため、客観的な証拠がトラブル解決の要です。
証拠残しの基本:積付け・ラッシング後の写真&動画
・貨物形状
・梱包状態
・ラッシング方法と本数
・封印の有無
これらを輸送者・現場責任者の立ち合いのもと、スマホや専用カメラで記録保存します。
できるだけ同じ構図・アングルで時系列ごとに撮ることがベストです。
IoT・ロガーでの輸送中データ保存
加速度センサーなどIoTロガーを使い、輸送中にどのような衝撃・荷重変化があったかも記録できます。
荷崩れ発生時には「現場でのラッシングは適切だったか」「輸送途中の想定外衝撃か」を科学的に検証できます。
記録の活用シーン
・損害保険請求時
・顧客クレーム対応時
・社内現場改善活動
記録を蓄積し、事例ごとの傾向把握や現場指導へフィードバックすることが、次世代の“品質力”構築に繋がります。
業界動向:積付け崩れ防止へ向けた最新トレンド
国際基準(CTUコード等)の導入加速
近年、国際物流では「CTU(貨物運送単位)コード」など国際規格を意識したラッシングルールの導入が拡大しています。
グローバルサプライチェーンの一員になるためには、こうしたルール遵守が必須となります。
AI解析による積載最適化支援
物流IT業者が開発する積載シミュレーションAIが登場し、どのような積み方が最も安定するか、最適なラッシングパターンを算出できるようになっています。
今後は人間の“カン”ではなく、数値とロジックに基づいた積付けが主流となるでしょう。
現場力×デジタルの最適融合
最後はやはり現場で働く人の“気付き力”“責任感”が不可欠です。
デジタルの進化と現場目線のノウハウを融合させることで、真に安全安心な物流を実現できます。
まとめ:これからの積付け・ラッシングに求められること
製造業の現場が高度化・グローバル化するほど、「貨物積付け」「ラッシング」「証拠残し」の重要性は高まっています。
最新技術の活用はもちろん、現場での意識改革・標準化、そして証拠残しの習慣化によって、予期せぬ損害や信頼失墜を未然に防ぐことができます。
バイヤーを目指す方は、調達先サプライヤーにこうした管理体制を求める“見る目”を磨いて下さい。
またサプライヤー側も、客観的証拠と高品質な積付け体制を構築し続け、競争力を高めていくことが肝心です。
現場目線の「積付け・ラッシング強化」と「証拠残し」は、決して守りの手段ではありません。
未来のアナログ脱却、品質革新の“攻め”そのものなのです。
ログ化のできる現代を逆手にとり、現場力にさらなる磨きをかけていきましょう。
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