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投稿日:2025年6月4日

有機ELディスプレイ有機EL照明の最新技術と市場動向

はじめに:有機ELディスプレイと有機EL照明の基礎知識

有機EL(Electro-Luminescence)技術は、1990年代に登場して以来、急速な進化を遂げてきました。
特に、有機ELディスプレイはスマートフォン、テレビ、車載用モニターなどに採用され、液晶ディスプレイを凌駕する画質やデザイン性を実現しています。
また、有機EL照明はフラットで軽量、自由形状という特長があり、次世代照明として注目されています。

本記事では、20年以上製造現場で実務経験を積んだ筆者だからこそわかるリアルな現場目線と、今だから押さえておきたい最新の技術進化、それを取り巻く市場動向まで深堀りして解説します。

有機ELディスプレイの技術革新と現場課題

高精細化・大面積化の進展

有機ELディスプレイは、その構造上、液晶と異なりバックライトが不要で、自己発光型デバイスです。
このため、黒の表現が美しく、極薄かつフレキシブルな設計が可能です。
2010年代初頭はスマートフォンや小型デバイス用パネルが主流でしたが、近年では55インチ以上の大型テレビ向け、さらには140インチ超の業務用サイネージまで急拡大しています。

ディスプレイ製造においては、「高精細化」「大画面化」「曲面化」への対応が大きなキーワードです。
例えば、RGB印刷方式や蒸着方式によるパネル製造技術が進化し、膜厚制御や歩留まり向上が現場の課題となっています。
特に日本の工場では、従来の液晶生産との設備やノウハウの違いが大きく、「昭和の生産現場」から「デジタル主導の生産現場」への転換が問われています。

歩留まり・コストダウンの闘い

有機ELは、材料費が液晶パネルより高いため、いかにして歩留まりを上げるかが生命線です。
パネル不良は主に「異物混入」「ピンホール」「発光ムラ」「色度ムラ」などが原因となりやすく、これらはクリーンルーム環境管理や搬送ロボットの精度向上、生産管理システムの高度化によって対策されています。

また、量産工程ではAIや画像認識による自動外観検査、MES(製造実行システム)と連携したリアルタイムの不良分析が必須です。
ここで問われるのは、昭和的な「カンコツ力」から最新IT技術との融合力、すなわちDX人材の台頭です。
バイヤーやサプライヤーは、こうした生産革新の現場事情とコスト要因を理解して交渉設計すると有利となります。

産業チェーンでの購買・調達動向

有機EL用材料(発光材料、封止膜、基板、ITO電極器具など)は依然として韓国・台湾・中国メーカーの寡占状態です。
購買担当者としては、「代替材料の開拓」「安定調達先の確保」「技術標準化へのアプローチ」が差別化ポイントとなります。
調達購買の現場では、品質保証契約や供給リスクマネジメントに加え、将来的な原材料高騰・脱中国リスクといった地政学にも目配りが求められています。

有機EL照明技術のブレークスルーと応用展開

有機EL照明の特長と市場ポテンシャル

有機EL照明は薄く、軽く、面発光ができる点が従来のLED照明にない優位性です。
黒色化実装や屈曲性・透明性など新たな美術表現も可能となり、建築内装、車載インテリア、医療照明、広告表示用途で引き合いが増えています。
特に人間中心設計(ヒューマンセントリック照明)が重視される欧州では、「目に優しく」「均一な光」を提供できる有機ELに早くから脚光が集まっています。

日本製造業のアナログ現場と有機EL照明の壁

筆者が工場現場で直面したのは、有機EL照明量産に立ちはだかる「設備投資の高さ」「製造ノウハウ蓄積の難しさ」「歩留まりの不安定さ」でした。
昭和時代から続く、コスト効率重視・大量生産型の思考では、差別化しづらい現状も正直あります。

ところが近年、新規参入メーカーは、クラウド連携の品質トレーサビリティ、印刷プロセスの高精度化、サプライチェーンの柔軟化で突破口を見出しつつあります。
欧米のデザイン事務所とのコラボや、特殊用途(ウェアラブル、医療向けパッチ照明など)への横展開が活発化しているのも注目点です。

現場目線で語るサプライヤー・バイヤー関係と今後の展望

バイヤー視点:有機EL関連部品の選定・交渉戦略

バイヤーが有機ELディスプレイや照明部材を調達する際、必ず押さえるべき視点は「性能(信頼性)」「安定供給性」「リードタイム短縮」「トレーサビリティ対応」です。
技術革新が激しい分、「半年で陳腐化」もざらですから、単に価格交渉に走らず、新規技術・部品の共同開発提案力や、日ごろの技術交流による「信頼の見える化」を強化すべきです。

また、調達サイドとしては、複数サプライヤーの「ポートフォリオ構築力」も不可欠です。
万一のライン停止・材料不足に備えて第二三の調達チャネルを平時から育てておくと大きな武器になります。
AI活用による需給予測、サプライヤーランク付けも実践されています。

サプライヤー視点:求められる「伴走提案」と「インサイダー思考」

一方で、サプライヤー各社は「単なる部品供給者」から「課題解決のカタリスト(仲介役)」への進化が求められます。
一歩先を読んだ応用提案、現場課題への即応体制、納期・品質トラブルの即時共有・ショートループ化――これらはコストを超えた“信頼貯金”につながります。

特にバイヤーの業務負荷を低減できるよう、製品開発部門や生産技術部門と一体となった「価値提案」や「リーン調達」を目指すことが、今後の勝ち残りを左右します。

有機EL技術と市場動向:最新トレンドと今後の予測

中国・韓国企業の台頭と日本企業の勝機

2020年代の有機EL市場は、中国・韓国メーカー(BOE、LG Display、Samsungなど)の猛烈な設備投資と価格攻勢により、ボリュームゾーンを押さえられつつあります。
それでも、日本発の材料メーカーや部品サプライヤーは「高性能品」「信頼性ニッチ」「カスタム対応」において評価が高く、IoTデバイス・自動車用・医療用向けの領域で差別化する余地があります。

SDGs・カーボンニュートラル対応の流れ

持続可能性(SDGs)の潮流も無視できません。
リサイクル性の高い材料の選定、低消費電力型有機ELの開発、グリーン調達を打ち出すこともサプライチェーン競争力強化につながります。

今後の展望と現場・調達の着眼点

有機ELディスプレイ・照明は、今後「フレキシブル」「透明」「高効率」といった新潮流で製品化が進む見通しです。
現場では、生産性と品質向上を両立したスマートファクトリー化、ITシステムとの統合運用、AIベースの予兆保全・自律改善がますます主流になります。
バイヤー・サプライヤーともに「技術知識+現場対応力+デジタル感度」の三拍子が武器となるでしょう。

まとめ:昭和から令和へ、現場が変われば業界が変わる

有機ELディスプレイ・照明の発展は、単なる新技術の普及ではなく、製造業現場の「変革力」や「越境連携力」に支えられています。
昭和型大量生産時代の価値観から脱却し、DXによる現場革新を加速することで、高付加価値市場での勝機をつかむことができます。

購買担当者は、単なるコスト分析にとどまらず、サプライチェーンリスクや新技術のライフサイクルも見渡す広い視野を。
サプライヤーは、現場の課題と可能性をリアルタイムで理解しつつ、価値共創のパートナーとしての意識を。
“昭和の知恵×令和のデジタル力”で、有機ELをはじめとする日本のものづくりの強さを世界に発信していきましょう。

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