投稿日:2025年10月9日

ナプキンが吸収力を維持する不織布と高分子吸収体の積層構造

ナプキンが吸収力を維持する不織布と高分子吸収体の積層構造

はじめに:ナプキンの「吸収力」はどう維持されるのか

生理用ナプキンは、今や現代女性の生活に欠かせない存在です。
あるいは医療現場や介護の現場においても、尿取りパッドのような形で応用されています。
そうしたナプキンに求められる最も重要な性能の一つが「吸収力」です。
一度に多くの液体をしっかりと吸い込み、それを長時間外に漏らさない。
それでいて、肌触りはソフトで、装着感が軽い――。
この相反する要求の両立は、製造現場の技術者たちの知恵と弛みない工夫の結晶です。
今回は、ナプキンの吸収力を陰で支える「不織布と高分子吸収体の積層構造」に焦点を当て、その実践的構造と進化、そして現場運用の視点から解説します。

不織布とは?その特徴と役割

不織布とは、繊維を織ることなくシート状にした素材のことです。
製造方式はスパンボンド法、メルトブロー法、ニードルパンチ法など様々ですが、ナプキンには主にスパンボンド+メルトブロー複合のタイプが使われています。
最大のメリットは、透水性と通気性、加えてコストパフォーマンスの良さです。

不織布はナプキンの最表層――すなわち「肌に直接触れる面」として活躍します。
表面はシルクのような滑らかさを持ち、肌への負担を減らすほか、経血や排尿を素早く下層に通過させる重要なトンネルの役割を果たします。

また、経血や尿は一気に表面に広がりがちですが、不織布の繊維配向性や厚みで流れをコントロールできるため、「伝い漏れ」防止のためのテクニカルな開発が日夜進んでいます。

高分子吸収体(SAP)とは?近代ナプキンの心臓部

高分子吸収体(SAP:Super Absorbent Polymer)は、1980年代に登場して以来、ナプキン性能の改良に革命をもたらしました。
この素材は、「1gで数十〜数百gもの液体」をジェル状に固定できる特性を持ちます。
水分子を自身の構造内部に閉じ込め、逆戻り(リバース現象)をほとんど起こしません。
そのため、ナプキンが薄型になり、しかも吸収量が劇的にアップしました。

SAPは主にナトリウムポリアクリレート化合物が使われており、粉末〜粒の形状で紙パルプと混合され、積層構造の中核として充填されています。
この技術の登場により、昭和時代の「分厚い脱脂綿型」から現在の「薄型でしっかり安全」なナプキンへと進化したのです。

多層構造の知恵:層ごとに異なる役割を持つ構造設計

現代のナプキンは、その“薄さ”と“吸収力”を両立するため、巧妙な積層構造を採用しています。

大まかな層構成は、

・①トップシート(不織布):液体を素早く下層に通す。肌負担を減らすソフト加工済み。
・②ディストリビューション層(分散層):流入した液体を均一に拡散、メイン吸収層へ素早く渡す。
・③コア層(吸収体、SAP混抄パルプ):ここで大量の液体を一気に吸収、ジェル化して保持。
・④バックシート(防水層):外部への漏れを防ぐためのポリエチレンフィルム等。

このようなバウムクーヘン状の積層によって、“瞬時の吸収性”と“保持性”、“モレ防止性”、“肌へのマイルドさ” が一体となっています。

なぜ「積層構造」が吸収力の鍵なのか?現場視点の分析

工場の製造現場を知る者として強調したいのが、「層ごとの連携バランス」です。
どれか1つが強すぎても、他が追いつかずトラブルにつながります。

たとえば、トップシートだけが速く吸い込んでも、下の層がテイクアップできなければ表面で液が滞留し、不快な湿潤感やモレの原因になります。
逆にコア層(SAP)が高性能でも、液体が偏った状態で流れ込めば一部の吸収体だけが飽和し、全体容量が生かせません。

このバランスこそ、現場で常に揉まれて磨かれる「設計思想」の塊です。

現場では、1mm未満の積層配分でも性能が大きく変化します。
テストラインでは、リークテストやダミー液などを何百回と流して最適解を探す“地味で丁寧な努力”が続きます。
昭和の現場魂が今も生きている典型例と言えます。

レガシーとテクノロジーの融合:アナログ魂 VS. デジタル自動化

製造業、特に消耗材分野の工場では、昭和的な職人感覚が色濃く残ります。
例えば、吸収体の敷設密度や不織布の肌触りなど、センサー技術だけでは判断しにくい要素が依然として現場の手仕事~目利き~によって維持されています。

一方で、積層構造の裁断や積み上げ重量の制御、ラインスピードの加速度管理などは、AIや画像処理センサー、生産管理システムの導入で格段に精度UPしています。
しかし完全自動化は難しく、「人の五感+機械」の融合体で現場が維持されているのが現実です。

つまり、「積層技術の本質」は、アナログ時代に培われた素材選択・配分知見と、平成以降のデジタルツールの最適活用、そのハイブリッドにあります。

バイヤー・サプライヤーが知るべき現場の「調達購買」視点

ナプキンという消耗部材は、ブランド毎・製品型番毎に積層レイアウトが異なります。
これが調達購買・サプライヤーの立場からみても“奥深く難しい課題”です。

・高性能な不織布を調達しようとすると単価が上がり、コスト競争力と両立が課題。
・SAPの価格は原油相場や世界情勢に左右されやすく、サプライリスク対策が重要。
・積層厚みの公差が厳しく、寸法管理・物流工程の最適化もバイヤーの腕の見せどころです。

さらに、多層構造素材を複数社から調達する場合は「規格のブレ」「連携失敗による不具合」など、連鎖的リスクが潜みます。
単なる“価格競争の視点”だけではなく、現場が真に“求めている品質・スループット性”までイメージできる調達バイヤーは、現場から信頼が厚いものです。

積層技術の進化と次世代への展望

これからのナプキン市場では、「さらに高性能&サステナブル」を両立した積層構造が求められています。
例えば、

・バイオマス由来の不織布やパルプ素材の採用
・土壌分解性の高い新型SAPの開発
・ナノファイバー応用による極薄・高強度シート設計
・使用後の分別・再資源化対応

など、現場では環境対応型の新設計・新素材導入プロジェクトが急速に進んでいます。

古典的な職人技と、最新テクノロジーとが交錯する現場。
その中心には、ユーザー目線での「吸収力と快適性」、そして社会的視点での「サステナビリティと調達管理」が両立された積層設計思想の進化が求められているのです。

まとめ:吸収力の裏側には現場の知見と飽くなき工夫がある

ナプキンの吸収力を実現しているのは、単なる素材の良し悪しだけではありません。
その「積層構造」とは、現場での細やかな試行錯誤、職人の経験知、調達・供給網のたゆまぬ努力、そして未来を見据えたテクノロジーの結晶です。

昭和時代から令和の今へ、製造業は変化の大波に立ちながらも、アナログ魂とデジタル活用のハイブリッドで本質的価値を追求し続けています。

バイヤーやサプライヤーを目指す方は、単なるスペックや価格の比較にとどまらず、実際に現場で求められている真の価値、そして素材から仕上げ工程までの“重層的な積層経験”に意識を向けてほしいと思います。
それが、これからの製造業を担うあなたの強みとなり、現場と市場の架け橋となるはずです。

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