投稿日:2025年2月7日

鉛フリーはんだの実装技術とトラブル・不具合対策のポイント

鉛フリーはんだとは

鉛フリーはんだとは、従来の鉛を含むはんだに代わって使用される、鉛を含まないはんだのことを指します。
鉛を含まないため、環境への影響を低減することができます。
欧州連合のRoHS指令など環境規制の厳格化を背景に、製造業界ではこの鉛フリーはんだへの移行が進んでいます。

鉛フリーはんだは、錫(Sn)を主成分とし、これに加えて銀(Ag)や銅(Cu)などが含まれています。
代表的な合金組成の例として、Sn-Ag-Cu(通称: SAC合金)が挙げられます。
鉛フリーはんだの導入により、従来の鉛含有はんだに比べていくつかの技術的な調整が必要となるため、実装技術とトラブル対策が非常に重要です。

鉛フリーはんだ実装技術の課題

鉛フリーはんだの実装にはいくつかの重要な課題があります。
これらの課題に対処するためには、具体的な実装技術と理解が必要です。

高い融点による温度管理の重要性

鉛フリーはんだは、一般的に鉛含有はんだよりも融点が高くなっています。
SAC305(96.5% Sn、3.0% Ag、0.5% Cu)の場合、その融点は約217℃です。
このため、リフロー工程やはんだ付けの際には、より高い温度が必要となり、適切な温度プロファイルの設定が重要です。

温度管理が不十分であると、部品への熱ダメージや基板の反りが発生しやすくなります。
また、適切なプロファイルを確保するために、リフロー炉のゾーン調整や実装ラインでの温度モニタリングの強化が求められます。

はんだ濡れ性の対策

鉛フリーはんだは、鉛含有はんだに比べてウェッティング性が低いことがあります。
このため、適切に部品や基板に濡れが生じず、接触抵抗が増加したり、接合強度が不足したりするリスクが高まります。

濡れ性の改善には、フラックスの選定が重要となります。
フラックスは、酸化物の除去や濡れ性の向上を助けるため、鉛フリー対応のフラックスを採用することが推奨されます。
さらに、基板や部品の表面処理やクリーニングの品質も影響するため、十分な前処理が必要です。

機械的強度の確保

鉛フリーはんだは、鉛含有はんだに比べて機械的強度が劣る場合があります。
特に、衝撃や振動に対する耐性が下がることが懸念されます。

このため、合金選択の際に強度特性を考慮する必要があります。
たとえば、銀やビスマスなどを添加することにより、機械的特性を向上させた合金を選定することが可能です。
また、設計段階での部品レイアウトの工夫が求められることもあります。

鉛フリー実装でのトラブル・不具合対策

鉛フリーはんだの実装には、新たなトラブルが発生しやすくなっています。
これらのトラブルを未然に防ぐために、以下の対策が有効です。

表面酸化と湿度管理

はんだ付け前に基板や部品が酸化すると、濡れ性が低下し接合不良が発生しやすくなります。
酸化を防ぐために、適切な保管や取り扱い方法の管理が重要です。

特に湿度が高い環境では酸化が進みやすいため、湿度管理を徹底することが必要です。
湿度をコントロールするために、ドライキャビネットの使用や、はんだペーストの保管温度の管理が有効です。

リフロー工場内のプロセス管理

リフロー工程では、はんだ付けの品質を確保するために、工程内でのプロセス管理が求められます。
温度プロファイルの定期的なモニタリングやリフロー炉の保守管理を通じて、工程の安定化を図ります。

また、熱プロファイルの微調整することで、基板や部品への熱負荷を最適化し、品質を向上させることが可能です。

信頼性試験の強化

鉛フリーはんだを用いた製品の信頼性を確認するためには、適切な環境試験が必要です。
特に、熱サイクル試験や振動試験など、製品の使用環境を想定した試験を通じて耐久性を確認します。

試験結果を用いて、製品設計や製造プロセスを改善し、最終製品の品質を確保することが目的です。

鉛フリーはんだ技術の未来展望

鉛フリーはんだ技術は、環境規制の厳格化を受けて今後ますます普及が進むことが予想されます。
この技術の進展には、いくつかの新たな展望が見込まれています。

高信頼性合金の開発

研究開発が進む中で、より信頼性の高い合金の開発が続けられています。
耐久性に優れた新しい鉛フリー合金が市場に投入され、さらなる品質改善が期待されています。

高温環境や厳しい運用条件でも確実に動作する製品が求められる分野において、こうした高信頼性合金は特に重要な役割を果たします。

自動化技術の進化

工場の自動化が進展する中で、鉛フリーはんだの実装プロセスにも高度な自動化技術が導入されつつあります。
AI技術の活用により、プロセス最適化や不良の早期検知が実現されていくことが予想されます。

また、ロボット技術の進化により、より微細なはんだ付け作業にも対応できるようになります。

教育とトレーニングの充実

鉛フリーはんだ技術を正しく理解し効果的に活用するためには、従業員に対する教育とトレーニングが欠かせません。
特に、製品設計から製造、品質管理に至るまで、全工程での対応が求められます。

オンラインコースや専門セミナーの開催、社内での技術交流を通じて、最新の知見を共有する機会を増やし、技術力の向上を図ることが重要です。

製造分野において鉛フリーはんだは避けられない選択肢であり、より深い知識と経験の蓄積が求められています。
このような技術の進化と共に、ものづくりの未来を切り拓いていきましょう。

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