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鉛フリーはんだの実装技術とトラブル対策および事例

目次
鉛フリーはんだの実装技術が製造現場にもたらす新時代
鉛フリーはんだの導入は、製造業の現場におけるサステナビリティ推進や国際的な法規制対応の大きな転機となっています。
従来の鉛入りはんだから置き換えることで、環境負荷の低減や、作業者の安全性向上など多くのメリットがあります。
しかしその一方で、鉛フリーはんだ特有の実装トラブルや、新しいプロセスへの適応といった課題に頭を悩ませる現場も多いです。
本記事では、鉛フリーはんだ実装の最新技術、発生しうるトラブル、現場での具体的対処法、事例に基づくノウハウといった「今すぐ役立つ現場力」にフォーカスして詳しく解説します。
サプライヤー・バイヤー双方の視点からも考察を加えていきますので、ご自身の業務や交渉のヒントとしてぜひご活用ください。
鉛フリーはんだ導入の背景とその必要性
なぜ鉛フリーはんだへの移行が進むのか
これまで電子機器の製造現場では、Sn-Pb(スズ・鉛)合金を主成分とするはんだが広く使われてきました。
この理由は、低価格で扱いやすく、接合部に不良が発生しにくい点にありました。
しかし「RoHS指令」に代表されるような国際的な環境規制の強化が進む中、製造現場は鉛フリー化を余儀なくされています。
特にヨーロッパ市場へ製品を輸出する場合、RoHS非対応では通関できません。
日本国内においても大手電機メーカーを中心にサプライチェーン全体で鉛フリー化が求められています。
鉛フリーはんだの基本的な要求特性
鉛フリーはんだは、主にスズ(Sn)をベースに微量の銀(Ag)・銅(Cu)を添加した「Sn-Ag-Cu系(SAC)」が主流です。
性能面では、従来品同等の導電性と機械的強度の維持が必要です。
さらに長期信頼性(クリープ破壊や熱疲労への耐性)、はんだ付け作業時の濡れ性や拡がり性、リワークのしやすさも現場で重視されています。
ただし、実際の現場では従来のはんだとの性質の違いから、さまざまなトラブルが多発しています。
鉛フリーはんだの実装プロセスと技術ポイント
リフローはんだ付けの最適化
鉛フリーはんだの代表的な実装方法はリフローはんだ付けです。
この技術では、プリント基板上にクリームはんだを印刷し、その上に部品を載せて、温度プロファイルに従い加熱・冷却することで接合を行います。
鉛フリー化に伴い以下の点に注意が必要です。
- 融点が高いため、より高温なプロファイル設定が必要
- 部品や基板の熱ストレス上昇(割れ・反り・変色・部品剥離リスク)
- はんだボールやブリッジ、はんだ未達といった新たな不良モード
現場対応としては、基板・部品の耐熱性チェック、プロファイルの最適化、適切なフラックス選定がポイントになります。
はんだ印刷と材料管理
鉛フリークリームはんだは、従来品に比べて融点が高いため、印刷時の温度・湿度管理がシビアです。
またペーストの保管温度・開封管理、スキージ圧や版離れタイムの最適化などが良品率維持のカギとなります。
印刷不良が後工程へ顕在化しやすいため、「横持ち」観点で現場の各工程が一致した温度湿度管理・タイミング管理ルールを徹底する必要があります。
はんだ自動検査と品質保証
鉛フリーはんだの実装では、はんだ付け後も自動外観検査(AOI)、X線による内部ボイド検査が必須となっています。
鉛フリー特有の表面肌荒れ(マット表面)や異常形成は、従来型の自動検査装置では見抜けない場合があります。
新しい検査パターンの追加や、不良検知アルゴリズム・人手のダブルチェック強化が現場では進んでいます。
サプライヤー側としても、納品前検査体制をさらに強化する必要が高まっています。
鉛フリーはんだの主なトラブルとその対応策
はんだ濡れ不良
鉛フリーはんだでは、濡れ性の低下が現場で多発する重大トラブルです。
原因としては基板・部品側の表面処理不良や、クリームはんだの劣化、フラックス成分の働き不足など多岐にわたります。
対策は以下のようになります。
- はんだ材料のロット管理・有効期限管理を徹底
- フラックス成分(活性剤)の見直し
- 基板や部品端子の管理強化(表面酸化・湿度管理)
- 基板側にプリフロー処理(プリベークなど)の導入
- リフロープロファイルの再設計・実験検証
現場では、濡れ悪化を見逃すと直ちに断線・導通不良につながるため、日々の検査データと現場作業を密接に連携させる「横(連携)の品質保証」が求められます。
ボイド(空隙)・はんだクラック
高温リフローの弊害として、はんだ内部やランドとの界面に空隙(ボイド)や微細クラックが生まれやすくなります。
これは信頼性低下や、通電不良・熱伝導の悪化を招くため放置できません。
対策としては
- リフロープロファイルの予熱段階を重視し、アウトガス発生を抑制
- はんだ量の適正化と印刷パターンの再設計
- 高信頼性部品には追加加圧リフローや2回焼成といったハードな工程導入
など、工程全体を俯瞰したプロセス改善が不可欠です。
外観不良と判定基準の再検討
鉛フリー特有の表面がマット(艶消し)になりやすい性質から、従来のSn-Pb時代の外観検査基準がそのまま流用できない場合が多いです。
無駄なNG判定や、「OKなのに疑問視されやすい」現場混乱も発生します。
対策として、実装現場と品質部門で現物サンプル・工程評価を通じて、新しい規格書・外観判定基準を作り直すことが強く推奨されます。
現場で役立つトラブル対策と横展開の実践
トラブル再発防止のための「なぜなぜ分析」
故障・不良発生時に漫然と工程・材料変更だけで済ませず、「なぜなぜ分析」で根本要因まで掘り下げる文化が今、改めて重要視されています。
たとえば、「はんだ濡れ不良」なら
- 材料の保管温度やロット違いが影響していないか?
- 工程間で湿度管理が甘くなっていないか?
- 装置の温度センサー値が定期校正されているか?
など、複数の視点から問題点を検証し、再発防止・予防改善につなげる必要があります。
「見える化」と現場要求事項の共有
ベテラン作業者の勘や経験則を、データとして記録し、数値で見えるようにする「見える化」がますます求められています。
異常値やトレンドを現場・生産管理・開発で素早く共有する事で、現場の“もやもや”を早期解決しやすくなります。
また、トラブル情報や改善内容を他の工程・他の工場へ展開する「横展開型カイゼン」も、デジタル化時代の必須テーマとなっています。
サプライヤー、バイヤー双方によるオープンなコミュニケーション
特に鉛フリーはんだのような新工法導入時は、サプライヤーからの材料変更や処方変更の通告内容をバイヤー(顧客)側で正しく理解・評価することが肝です。
現場レベルの試作・評価結果も、タイムリーにフィードバックする双方向性が最終的な品質向上に直結します。
日本の製造現場では依然として昭和体質(現場主義、暗黙知優先)が根強いですが、紙→データ化、口頭→書面といった新しい情報連携の重要性を再認識すべきです。
最新の技術動向と今後の展望
ハイブリッド材料・装置連携
近年では、鉛フリーはんだの性能向上を狙い、微量合金添加や新しいフラックス設計など付加価値型材料の開発が進んでいます。
また、リフロー炉や印刷機、外観検査装置などのIOT連携も加速しています。
装置パラメータと生産実績データを自動蓄積し、AIが不良傾向を先読み予測する現場も広がりつつあります。
ハード・ソフト一体の次世代実装ラインが昭和の“匠の技”を数値化し、再現性と安定品質という新しい製造業の価値創出につながっています。
グローバル規制対応とSDGs志向
今後ますます製造現場にとって大切なのは「世界標準」と「自社の社会的責任(SDGs)」の両立です。
鉛フリー化はその象徴であり、技術だけでなく経営・調達・品質保証の連動が問われるテーマです。
バイヤーとしてはグローバル目線の調査・教育、サプライヤーとしてはトレーサビリティ強化や、最新データに基づく根拠ある提案型営業が競争優位につながります。
まとめ:製造業の最前線から未来への提言
鉛フリーはんだ実装技術は、単なる法規対応を超え、「工場力」「現場力」「サプライチェーン力」の深化に不可欠なテーマです。
一見すると昭和的“勘と経験”の延長に見えるこの分野ですが、現場情報の見える化・データ化、そして現場と調達・品質部門の壁を越えた組織連携によって、全く新しい価値や安心を顧客に提供できます。
バイヤーを志す方はメーカー現場の苦労を知り、現場で働く方はバイヤーの意図や規格要求の意味を知ることが、これからのモノづくりリーダーには求められています。
成熟した昭和型アナログ思考と、最先端のデジタル・自動化の融合が、「日本の製造業」をさらに強く、未来志向へ導く原動力になります。
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