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LED照明の劣化メカニズムと加速試験寿命推定法および市場クレームの発生原因と対策

目次
はじめに:LED照明の信頼性と市場要求
LED照明は、いまや街路灯や工場、オフィスの照明をはじめ、日常生活のさまざまなシーンに欠かせない存在です。
その省エネ効果と長寿命が高く評価され、これまでの蛍光灯などに比べて大幅に導入が進みました。
ですが、導入後に発生する市場クレーム、そして本当に「期待寿命」を全うできるのかという点は、多くのメーカーや購買バイヤー、サプライヤーに共通するリスクです。
本記事では、昭和時代から続く製造業ならではの現場目線と最新の業界動向を織り交ぜながら、LED照明の劣化メカニズム、寿命推定の加速試験、さらに市場クレームの原因や対策までを解説します。
LED照明の基本構造と主要部品
LED素子(チップ)
LED照明の発光源であるチップは、窒化ガリウム(GaN)の半導体を主材料にしています。
この半導体に電流を流すことで発光し、長寿命・高効率が特長です。
しかし、半導体は熱や電気的ストレスに弱く、それが劣化の主なトリガーとなります。
パッケージ・封止材
LEDチップは樹脂やシリコーンなどで封止され、光を均一に拡散させる役割を担っています。
封止材も経年劣化しやすい部品で、紫外線・熱・湿気など外部環境の影響を強く受けます。
電源(ドライバー)
交流電源を直流に変換し、最適電流でLEDを駆動する電子回路です。
内部のコンデンサやICチップの劣化が早いと、LED本体より先に製品寿命を迎える場合もあります。
放熱部(ヒートシンク)
LED素子は発熱量が小さい一方、放熱設計を誤ると素子温度が過度に上昇し、急速な劣化を招きます。
現場ではしばしば、この設計ミスやメンテナンス不良が根本要因になります。
LED照明の劣化メカニズム
光束維持率(L値)の低下
LED照明の寿命は「全光束(明るさ)が初期値の何%に低下したら寿命か」を基準に定めるのが一般的です。
たとえばL70寿命とは「初期光束から70%に低下するまでの期間」を示します。
現場感覚としては、このL値低下の要因は主に以下です。
– LEDチップ自体の内部欠陥進行(結晶欠陥・金属電極の腐食など)
– 封止樹脂や蛍光体の劣化・黄変
– 放熱不良によるチップ温度上昇(アレニウス則による劣化加速)
点灯不良(早期故障・不点灯)
光束の緩やかな低下とは別に、突然不点灯(ブラックアウト)になる「バサ落ち」も市場クレームの主因です。
これは主に電源回路(コンデンサの劣化、電解液の蒸発)、LEDチップの配線断線、予期せぬ過電流・過熱がトリガーとなります。
また、劣悪な実装・組立工程も早期不良の常連犯です。
LED寿命推定と加速試験の現状
アレニウス則に基づく高温加速試験
量産現場では、製品が数万時間もつかをリアルタイムで評価できません。
そこで高温・高湿などのストレスを与え、劣化現象の進行を加速して短期間で寿命を推定します。
代表的なのがアレニウス則を用いた高温保存試験や、高電流ストレス試験です。
一定期間(例えば1000時間)、70度C・湿度85%環境下で点灯させ、その後の光束維持率から実寿命を外挿します。
IEC・JIS等の試験規格と現場実態
現在、日本ではJIS C8155やIEC62722-2-1などがLED照明の寿命試験ガイドラインとなっています。
これらの規格では、点灯モードやサンプル数、光束測定法の標準化が求められます。
しかし、実際の現場では、部材ロット・実装ばらつき・放熱環境の違い、加えてサプライヤーの設計基準の差異など「アナログ」な要素が根強く残っています。
バイヤーや設計者双方が試験規格の趣旨と限界を理解し、真の「安心感」を作り込む努力が不可欠です。
加速試験の活用で気をつけるべきポイント
– 加速条件(温度、湿度、応力)の設計は「現実の使用環境」にどこまで近づけるかが肝心です。
– 初期ロットだけでなく、量産移行後やサプライヤー変更時にも同様試験を継続すべきです。
– 異常値(アウトライヤー)の見落としが、市場クレームの温床となるのでロットごとのばらつき解析が不可欠です。
市場クレームの発生原因:なぜ「期待寿命」に達する前に壊れるのか?
市場クレームの主要パターン
現役の工場長経験から見ると、LED照明の市場クレームはおおよそ下記4パターンに収束します。
1. 期待寿命より早い光束低下(暗くなる)
2. 急な不点灯(ごく短期間でブラックアウト)
3. チラつき・色むら発生(特に設計初期品に多い)
4. 電源ノイズ・誤動作(主に切替時や雷サージで発生)
現場目線でのクレーム原因究明の流れ
– 保守点検時に不具合品を速やかに回収、「外観観察」「分解解析」はセオリーです。
– 光束維持率、色度、点灯動作確認を徹底的に再現実験することで真因を絞り込みます。
– 生産移行時やサプライヤー切替後の品質変化には特別な注意を払い、各種ロット管理データをクロスチェックします。
業界特有の“油断”ポイント
昭和から続くアナログ気質の強い工場や中小サプライヤーでは、「これまで問題がないから大丈夫」という思い込みが根強く残っています。
現代のLED照明は、部品の微細化や環境依存リスクの多様化で、不具合リスクはむしろ増加しています。
日常点検・定期サンプリング試験の徹底が、これまで以上に重要です。
市場クレーム対策:工場とサプライヤーが連携してできること
事例:現場での再発防止対策
– 温度管理の徹底(ヒートシンクグリスの塗布不良を防止)
– はんだ付け条件やリフロー温度プロファイルの見直し
– 電源部品(特に電解コンデンサ)を長寿命グレードに切替
– 定期的な実装基板の「サンプリングAE」実施で微細劣化を先取り
設計段階のFMEA活用
FMEA(故障モード影響解析)手法によって、どこが市場クレームにつながる不具合リスクか予見し、設計の早い段階から部品選定・組み付け工法まで見直します。
専門家だけでなく、現場オペレーターやメンテ担当の視点も積極的に取り入れることで、「現場に根ざしたクレーム対策」を実現します。
バイヤーが押さえるべきポイント
バイヤー視点では、帳票やスペックだけでなく「現場現物現認」が不可欠です。
初期選定段階からサプライヤーの工場監査を行い、工程管理・部材取り扱い・書類の整合性まで徹底的に精査します。
また、市場からのフィードバックを分析し、定期的な仕様見直しやサプライヤー研修もポイントです。
サプライヤーにとってバイヤーの「見るポイント」とは?
現場バイヤーは、単なる価格交渉だけでなく、品質安定性や生産設備、品質管理体制に対する“本質的信頼”を重視しています。
たとえば、
– 毎年の安定調達が見込めるか?
– 突発不良発生時の初動レスポンスと再発防止策の実行力はどうか?
– 改善・コストダウンの提案力(VE提案含む)は優秀か?
といった長期省察でサプライヤーを評価します。
ですから、サプライヤーは「自社の現場をいつでもオープンにできるか?」「品質データや加速試験結果をバイヤーと共有できるか?」が勝負の分岐点です。
まとめ:長寿命LED照明の「安心品質」とは
LED照明の寿命・信頼性設計は、単なる理論計算やスペック合戦では実現しません。
現場で日々起きるノイズや劣化、部材のばらつきや突発不良――。
こうしたアナログな現場課題にこそ、真のクレーム撲滅・安心品質のヒントがあります。
購買・サプライヤー・生産現場、それぞれが「数字」と「肌感覚」をうまくシンクロさせ、市場クレームを未然に防止する体制がLED照明ビジネスの未来を支えます。
長寿命で安心して使える照明を社会に提供するため、アナログとデジタルの両面を徹底的に追い込む姿勢が、すべての製造業関係者に今こそ求められています。
そして、新しい時代のサプライチェーン、品質保証体制を現場目線でともにつくりあげましょう。
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