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地方行政が牽引する地域中小企業の供給網サステナビリティ強化策

目次
はじめに:なぜ今「地方行政×サステナビリティ」なのか
持続可能なサプライチェーン(供給網)の実現は、グローバル企業だけでなく、地域の中小企業にも及ぶ最重要課題となっています。
特に人口減少や高齢化が進む地方においては、産業の競争力強化とともに、地域全体の雇用・経済を維持する使命が中小企業に課されています。
しかし、デジタル技術の導入や先進的なサステナビリティ戦略は都市部に偏りがちで、昭和時代からのアナログな調達・生産体制から抜け出せない現場も少なくありません。
その進化を後押しする新しい潮流が、地方行政による中小企業のサプライチェーン強化への積極介入です。
自治体や商工団体が供給網の持続性(サステナビリティ)にどのように関与しているのか、現場感覚に基づいて解説します。
地域中小企業を取り巻く環境の変化
サプライチェーンの脆弱化とリスク増加
近年、異常気象や感染症拡大、国際的な物流網の混乱といった外部リスクが拡大しています。
これまで都市部やグローバル企業の話と思われがちでしたが、地方の中小企業にとっても、原材料の調達難・取引先の倒産・人材流出といった問題が秒読みです。
また、事業所の集積が少ない地方では、「この会社が止まれば市内の何社も影響する」「棚卸や生産計画もアナログで連絡がつかない」といった具合に一社、一本の依存度が非常に高いため、サプライチェーン全体の耐障害性(レジリエンス)が弱くなりがちです。
「昭和型調達」からの脱却がなかなか進まない実情
現場ではFAXや電話、紙の帳票が主流です。
長年の商習慣と信頼、人情で物事が動くのがよい面もありますが、「情報伝達が遅れがち」「データ蓄積や分析ができない」「後継者がデジタル推進に腰が重い」などの悪循環も根強く残っています。
地方行政が果たすサステナビリティ推進の役割
1. サプライチェーンの見える化支援
まず地方の自治体や商工団体が進めているのが、中小企業同士の取引状況の「見える化」です。
行政主導でサプライヤー登録制のプラットフォームや、地域内マッチングサイトを運用し、災害時や緊急時にも供給網が把握できる体制づくりを推進しています。
例えば、A県ではデータベースに登録した部品・材料や生産設備の稼働情報を共有し、取引会社が停止した場合の代替調達先を即時に通知します。
従来の「付き合い」「なじみ先」一辺倒から脱却し、現場の属人性・非効率を補っています。
2. デジタル化・DXへの補助金投入とマンパワー支援
中小企業単独ではDX(デジタルトランスフォーメーション)コストが負担になりがちです。
このため自治体が独自補助金制度を設立し、受発注システムや在庫管理・生産管理のデジタルツール導入に手厚い助成をしています。
加えて、専門家派遣やセミナー、他社の成功事例共有を自治体主導で実施し、「何から始めれば?」「現場が混乱しそう」といった現場の不安をワンストップでサポートしています。
3. 災害・BCP(事業継続計画)策定のガイドライン制定
自然災害の多い日本では、BCPの策定がサプライチェーン維持の要です。
行政が中小企業向けのBCP策定ワークショップや、防災訓練、リスク分散マップの作成を主導し、「事業が止まった時どうするか」を経営者と現場リーダー双方の視点で点検します。
この活動を通じて、取引の多重下請構造、固定サプライヤー依存からの脱却を後押ししています。
4. サステナブルな認証制度の普及
「持続可能性に取り組む企業を見える化し、地元発注や新規ビジネスマッチングにつなげる」ための独自認証制度を導入する自治体も増えています。
環境対応(省エネ・再生エネルギー)、労働環境(多様な雇用・働き方)、地域還元など、サステナビリティの観点で優良と認められれば、市独自のプレミアム発注や首都圏からの新規受注チャンスが与えられます。
現場で活きる行政×中小企業サステナビリティ協働事例
地場連携による自動車部品サプライヤーのレジリエンス強化
ある地方都市の自動車部品工場は、親会社の設備トラブルで緊急増産を迫られましたが、行政主導で構築された地域内サプライチェーンネットワークを活用し、数日で代替素材調達と増員要請が可能となりました。
もともと小規模企業間で横のつながりが薄かったものの、行政のコーディネートで互いの生産能力・得意分野を「見える化」し、機動力の高い連携体制が整っています。
この成功事例が波及し、レジリエンス重視の発注傾向が全国に広がるきっかけとなりました。
食品製造業におけるカーボンニュートラル挑戦とブランド化
食品製造を営む市内複数社が、自治体のCO2排出量見える化プロジェクトに参加。
行政支援のもとで省エネ機器導入や再生可能エネルギー導入に取組み、そのデータを新ブランド「グリーン認証商品」に付与して販路開拓を成功させました。
サステナビリティと新たなビジネス機会創出を両立する好例です。
後継者難×デジタル化対応に行政が伴走
ものづくり工場の多くでDXの波に乗り遅れていますが、自治体が地元ITベンダーや大学と中小企業をマッチングする伴走型プロジェクトを展開。
WEB受発注、IoTによる設備保全、自動帳票化など、作業負担や紙管理の削減を実現しました。
生産性向上・離職防止・若手後継者の帰属意識向上にもつながっています。
業界人・バイヤー・サプライヤーが知っておくべきポイント
「サステナビリティ投資」の潮流加速
欧州を中心に、「サプライチェーン全体の持続可能性」が商談・審査で重視される時代です。
バイヤーに選ばれるためには、製品価格だけでなく、CO2排出管理やBCP策定など、「まさか」の備えも提案できることが今後の標準となります。
行政支援を活かす:自社だけでなく地域力の発信も重要
大企業バイヤーや都市部本社が地方のサプライヤーを選ぶ際、「地域でどんな連携体制があるか」「ネットワークやレジリエンスはどうか」を重視し始めています。
行政の支援施策・認証取得・ネットワーク参加は、新たな取引先開拓のパスポートとなるのです。
属人的関係から「データで繋がるサプライチェーン」へ
昭和型の関係重視も大切ですが、それだけでは急な不測事態や外部審査への対応力が弱くなります。
調達購買担当・工場長クラスには、「どこまでデータ化して情報共有できているか?」「行政支援を上手く使っているか?」をぜひ問い直していただきたいです。
まとめ:サステナビリティ推進のために現場ができること
サプライチェーンのサステナビリティ強化は地方行政の主導だけでは実現しません。
中小企業の現場リーダー、バイヤー、サプライヤーも主体的に取り組む姿勢が不可欠です。
現場目線で一歩踏み出すためのアクションをご提案します。
- 行政が開催する見える化・デジタル関連の説明会やマッチングイベントにまず顔を出す
- BCP策定やサステナビリティ認証など、書類化・仕組み化を先送りにしない
- 他地域・異業種の好事例や最新動向にアンテナを張り、現場の悩み・抵抗感も正直に行政に伝える
- 自社単独で出来ないことは、行政コーディネートやサプライヤーパートナーと協働する柔軟性を持つ
最後に、サステナビリティとは「止まらない、止めない」仕組みづくりです。
現場目線で地に足をつけつつも、新たな発想と行政協働で、昭和から続く地域製造業の強さを次世代につなげていきましょう。
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