投稿日:2025年6月27日

潤滑トラブルを防ぐ潤滑油の劣化診断と最適選定による長寿命化技術

はじめに 〜現場で多発する「潤滑トラブル」の本質〜

生産設備のトラブル原因として、実は「潤滑不良」が大きな割合を占めています。
潤滑油は、機械装置内部の摩耗や焼付きを防ぐために必要不可欠ですが、日々の使用環境や負荷によって確実に劣化が進みます。
その劣化を見逃すと、重大な装置停止や、修理コストの増加、企業の信用失墜にもつながりかねません。

私もかつて、突発的な機械の焼付きによるライン停止、そこから発生する”生産遅延の地獄”や、サプライチェーン全体への損害を現場で何度も経験してきました。
潤滑油の管理は昭和時代からのルールを引きずったままになりがちですが、今こそ、実践的かつデータに裏付けされた劣化診断と、現場に最適な油種の選定が、製造業にとって必須の技術です。

本記事を通して、現場目線に立った潤滑トラブル予防のための具体策や、データ活用、最新業界動向とともに、持続可能な工場運営・製品品質の進化について深掘りします。

なぜ潤滑トラブルが後を絶たないのか?〜アナログ現場の実態と課題〜

アナログ現場で起こりやすい「油まかせ・人まかせ」管理

多くの現場では、潤滑管理が「定期的な交換ルール」や「現場担当者の経験則」に依存しているケースが目立ちます。
例えば、「◯カ月で全交換」といったマニュアルや、「色と臭いで判断」といった属人的なチェックが一般的です。
しかし、これでは設備毎の使用状況や負荷変動、環境汚染リスクまでを十分にカバーできません。
気温や稼働率、部品の設計寿命など、複雑な要素を見過ごすと、交換時期が遅れて深刻なトラブルを招くのです。

工場自動化の裏にひそむ「見えないリスク」

近年、IoTや自動化投資が進む中で、「設備稼働データ」は見える化されても、潤滑油の健康状態までは十分に数値化・監視できていない工場がほとんどです。
突然の機械停止=潤滑油の異常というケースも多いため、「見えていないリスク」をいかに低減するかが、今後の競争力のカギとなります。

潤滑油が果たす5つの基本的役割を再確認する

設備トラブルを未然に防ぐには、まず潤滑油の役割を正しく理解し、現場に根付かせることが不可欠です。
主な役割は下記の5つです。

  • 摩耗・焼付の防止:部品同士の滑らかなすべりを実現し、摩耗/焼付きを防止します。
  • 冷却効果:摩擦熱を油が吸収して持ち出すことで、局所的な加熱・部品劣化を防ぎます。
  • 防錆・錆止め:金属表面に油膜を形成し、湿度や腐食から保護します。
  • 清浄・洗浄作用:摩耗粉やゴミ、不純物の装置内部での蓄積を抑えます。
  • 密封作用:装置内部の気体や液体を漏れにくくし、安定稼働を助けます。

これらの機能が損なわれると、トラブルリスクが一気に高まります。
したがって、「油が劣化して何が問題なのか」を現場でも正確に把握することが重要です。

劣化診断の現場実践〜何を、誰が、どのようにチェックすべきか?

見落とされがちな「早期劣化サイン」

管理者や現場担当者が重視すべき潤滑油の劣化サインには、以下があります。

  • 色調の変化:透明度の喪失、黒褐色への変化は酸化・不純物混入のサインです。
  • 臭気の変化:通常と異なる焦げ臭・酸味は分解や樹脂化の進行を示します。
  • 粘度の変化:油種ごとの規格値との比較が必須です。
  • スラッジ発生:底部や配管詰まりの有無の確認を怠らないことが重要です。

定期的な視覚・嗅覚点検に加えて、「サンプリング → 油分析」も併用しましょう。
設備メーカー/潤滑油メーカーの専用分析サービスを積極活用することで、早期の傾向検知が実現します。

分析値から何を読み取るか

油サンプリングの分析では、下記の数値を重視します。

  • 粘度:規定値外の増減は劣化・混入のサインです。
  • 酸価・中和価:油の酸化進行度を示す重要指標です。
  • 水分、不溶分、金属粉含有率:装置内部の異常や部品摩耗度も評価できます。

これらをトレンド管理し、「交換基準値」に達する前に手を打つ運用がベストプラクティスです。

現場での運用最適化のコツ

劣化診断結果を「現場のスケジューリング」に結びつけ、PDCAサイクルを回すことが重要です。
さらに、異常傾向があれば、
– 品番・ロット別に潤滑油のトレーサビリティを確保
– 異常現場を写真やデータで「見える化」
などのデジタル連携により、「人まかせ」運用から脱却しましょう。

最適油種の選定−多様化する現場ニーズにどう応えるか

機械の仕様と現場のリアルな条件を優先

潤滑油選定にあたっては、
– 設備メーカーが公表する指定油種
– 現場の使用条件(温度・汚染リスク・負荷)
– メンテナンス周期
– コストや購買調達方針
など、多くのファクターを総合的に整理する必要があります。

特に近年は「省エネ」「長寿命」「環境負荷低減」といった要求が強くなっています。
ベースオイルの種類(鉱油系、合成油系)、添加剤の組成なども慎重な検討が必要です。

バイヤーとサプライヤー、両方の立場で考える「最適化」

近年、サプライチェーンの強靭化やBCP(事業継続計画)の観点から、
– 国内外メーカー品の複数確保
– 地域拠点ごとの油種統一 or 分散
– 安定供給体制(緊急納品・予備在庫)の構築
などの調達戦略が重視されています。

バイヤーの立場としては、単なる価格勝負ではなく、「現場の実データに基づく最適油種提案」「納期トラブル時のバックアップ体制」など、現場密着型の視点が評価されます。
また、サプライヤー側も「お客様はどこを重視するか」「何に苦しんでいるか」を想像し、独自の技術サポートやトラブル事例の情報提供で差別化を図ることが大切です。

実践企業事例から学ぶ、潤滑寿命延長と総コスト削減の最前線

データ活用で「予知保全」を導入した先進工場

ある自動車部品メーカーでは、設備ごとに油サンプル分析をトレンド管理し、AI解析も導入。
油の劣化傾向を踏まえた「最適な交換タイミング調整」により、油交換回数を大幅削減すると同時に、ライン停止事故も約60%減少させました。

高性能・省エネ型潤滑油の導入による生産性向上

旧来の一般鉱油系から高耐久グレード(合成油など)に切り替え、部品寿命の延長と消費電力を同時に低減した例も増えています。
設備環境負荷低減や緊急トラブル時の復旧リードタイム短縮にも成功しています。

ライン共通化による調達・在庫コスト削減

複数設備の仕様を見直し、油種ラインナップを絞り込むことで管理工数や保管スペース、在庫コストのムダを解消した好事例もあります。
バイヤー・現場エンジニア・サプライヤーが一体となった抜本的改善が実を結んでいます。

最後に〜「油まかせ・人まかせ」からの脱却で、世界標準の現場力を

昭和時代から続くアナログ的な油管理は、今後のグローバル競争時代で大きなリスクにもなります。
油は「ただの消耗品」ではなく、「設備長寿命化」と「事業競争力」のカギそのものです。
現場・バイヤー・サプライヤーがしっかりとタッグを組み、
– データと実績に基づく管理
– 最適油種の科学的選定
– 先進的な分析技術/予知保全の導入
に取り組むことが、未来の日本ものづくりの新たな「現場標準」につながります。

読者の皆様が一歩先の現場改善やキャリアアップ、そして自社の価値向上を実現できることを心より願っています。

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