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潤滑油最適選定と劣化診断で摩耗トラブルを防ぐ潤滑技術入門

目次
はじめに:潤滑油最適選定の重要性を理解しよう
製造業の現場では、設備の稼働時間を最大化し、不良率や突発的な機械トラブルをいかに抑え込むかが、競争力そのものと言っても過言ではありません。
特に現代の工場では、昭和時代から変わらず「止めるな」「壊すな」「コストを下げろ」の三大命題が突きつけられます。
その中で、潤滑油という存在はテーブルの隅に追いやられがちですが、見落とすと莫大な損失や経年摩耗によるトラブルにつながる重大なファクターです。
本稿では「潤滑油の選定方法」と「劣化診断の勘所」を現場で本当に役立つ視点から解説します。
バイヤー志望の方はもちろん、潤滑油を納入する側のサプライヤーや現場管理者にも、多くの気付きが得られる内容を目指します。
潤滑油の役割と機械寿命へのインパクト
なぜ摩耗が減らない? 原因の多くが「潤滑の盲点」
油種の選定ミスや、使用環境とのミスマッチによって機械部品の摩耗トラブルは後を絶ちません。
現場で「グリース足せば直る」と短絡的な応急処置で済ませてしまい、根本治療を怠った結果、軸受やギヤの早期破損が発生する事例を多く目にします。
潤滑油は単なる滑りやすさの提供だけでなく、防錆・冷却・洗浄・密封・振動緩和など多様な機能を担っています。
適切な潤滑管理が、設備の寿命を下支えしていることを改めて意識しましょう。
設備コスト削減と潤滑油の密接な関係
機械購入・更新費用を下げたくても、周辺パーツや潤滑油の選定をケチると「安物買いの銭失い」に陥ります。
中古設備にも最適な油種を見極める目が問われ、経年摩耗の進行度合いを把握して、計画的にオーバーホールやオイル交換をできる現場こそが強い生産基盤となります。
安易な標準化や、既存油種の流用(思考停止の横並び)はリスクでしかありません。
潤滑油選定の実務ノウハウ
用途別に考えるべき主な潤滑油の種類
1. 産業用ギヤ油
2. 軸受用潤滑グリース
3. 油圧作動油
4. スピンドル油・タービン油
5. 食品機械用潤滑油(H1グレードなど)
それぞれに要求される性能が大きく違います。
例えば、ギヤ油には耐圧性や油膜保持力、作動油には安定した粘度指数や酸化安定性が求められます。
現場で「なんとなく同じ油種を使っている」といったケースは今も珍しくなく、ここが摩耗トラブルの温床です。
油種選定で押さえたい3つのポイント
1. 機械メーカー仕様の確認
2. 使用温度・負荷条件の把握
3. 現場環境(湿度、粉じん、特殊気候など)の分析
これをおざなりにして定期発注している現場は、誰も気付かないうちにダメージを機械に蓄積させていきます。
必ず製造元の推奨油種だけでなく、最新の用途別油剤進化(高性能合成潤滑油など)も調査し、コストvsパフォーマンスで現場ニーズに合致するか確認しましょう。
昭和型“勘と経験”から脱却しよう
「前任者が使っていたから」「みんな使っているから」だけで油種を選んでいませんか?
油剤メーカーの技術者に現場見学を依頼し、最新の添加剤技術や、省エネ・長寿命化事例などを自社で検証する取組みは、昭和的な勘による選定から抜け出す第一歩です。
現場で起きる“潤滑油劣化”の典型トラブルとサイン
摩耗増加の裏に潜む油状態の変化
油が劣化すると、潤滑性能の低下だけでなく、異物混入・沈殿物・酸化生成物の増加・異臭など明確な症状が次々に現れます。
なかでも以下は現場で頻繁に見落とされています。
– オイル色の濃色化(黒ずみ・茶色化)
– 油面の泡立ち
– フィルターや摺動部のスラッジ付着
– 油中水分の混入(白濁等)
これらは油剤の化学的な老化現象の現れで、放置すると金属表面も腐食・早期剥離・焼付きへと進展します。
現場の声:劣化を見抜けなかった“3つの失敗”
1. 日々の点検記録が紙だけで、観察数値の管理・解析ができていない
2. 行政検査や監査対策で最小限しかサンプリング・分析していない
3. 他部署や関係会社から苦情が上がるまで何も変えない
このような運用が浮き彫りになってくると、どんなに高寿命な潤滑油・高価な設備を投入していても、実効性のある管理とは言えません。
潤滑油の劣化診断:今すぐできる具体策
油分析の基礎(現場で押さえるべき代表的指標)
1. 酸価(TAN)と塩基価(TBN)
2. 粘度(経時変化の推移)
3. 不溶分(スラッジ・微粒子の増加)
4. 水分含有量
5. 金属摩耗粉の分析(フェログラフィー)
これらは、潤滑油の劣化診断において最低限必要な評価項目です。
油分析サービスを活用して、周期的にサンプリングし、時系列データとして管理することが重要です。
“見える化”で摩耗トラブルを未然に防ぐ
データに基づく診断管理は、設備停止を最小化し、故障予兆を感知できる強力な武器となります。
IoTやAI技術の浸透で、オンライン監視や自動診断サービスの導入も身近になってきています。
例えば機械内部の摩耗センサやオンライン油中水分計を使うことで、稼働中でも劣化状態をリアルタイムに監視し、交換タイミングを最適化できるようになっています。
バイヤー・サプライヤー間で潤滑油に求められる「新しい価値」
単なる“物売り”から“ソリューション提供者”へ
従来は「納期通りに安く納める」ことがバイヤー・サプライヤー双方の最大の関心事でした。
でも今や、機械の全体最適・工程効率化・メンテナンス工数の低減まで踏み込めるかどうかが、取引先との信頼構築の分かれ目です。
サプライヤーとしては単なる油のスペックを説明するだけでなく、現場導入事例、油種変更によるコスト削減・トラブル減事例などを用意し、「経済的効果」も含めてバイヤーへ訴求することが重要です。
バイヤー側も「必要なオイルの型番」だけでなく、“何を解決したいか”という視点で適切な情報提供を求めることが、より良い設備投資につながります。
昭和型アナログ文化の転換と、人材育成のポイント
エクセルや帳票だけで劣化診断した気になるアナログな習慣は多くの現場で根強く残っています。
でも、今後の産業界では「データに基づく意思決定」「ライフサイクルコスト最適化」が標準になります。
若手・中堅現場スタッフの教育でも、「油種の選び方」「トラブル発生時の論理的な要因分析」「データ管理・診断手法」など、実践的な技術伝承が不可欠です。
現場で真に役立つ教育カリキュラムを整え、潤滑油管理を単なるメンテナンス作業から“経営価値”に変換していく視点を持ちましょう。
おわりに:摩耗トラブルゼロを目指す製造現場へ
潤滑油の最適選定と劣化診断は、機械設備の安定稼働・生産性向上にとって不可欠です。
昭和から変わらない「油は脇役」「なんでも同じ」といった固定観念を捨て、最新の技術とデータ解析を武器として積極的に活用していくことが、競争力のある現場作りの第一歩です。
バイヤーを目指す方は、油種選定やメンテナンスコストまで踏み込んで提案できるよう、知識と情報感度を磨きましょう。
サプライヤーの立場でも、「物売り」から「ソリューション提案型」へ発想を転換し、現場ニーズに即した価値あるパートナーとなることが、これからの製造業で生き抜くカギです。
現場で発生する摩耗トラブルを0に近づけるには、油の価値・管理方法を真に現場視点から捉えなおすことから始めてみてください。
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