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投稿日:2026年1月5日

ショットブラスト装置で使うハンガー部材の製法とワーク落下リスク

はじめに:ショットブラスト装置の重要性と現場課題

ショットブラスト装置は、多くの製造業工場において欠かせない存在です。

表面処理やバリ取り、スケール除去、さらには塗装前処理まで、様々な目的で導入されています。

とりわけ、航空機や自動車、建設機械などの大型部品加工では、高い効率性と均一な処理品質が求められます。

その中心に位置するのが、ワーク(処理対象物)を吊り下げる「ハンガー部材」です。

ハンガーの信頼性は、作業効率や製品品質を左右する大変重要な要素です。

特に、ワークの落下事故やハンガーそのものの不具合は、工場に大きな損失をもたらすリスクがあります。

今回は、ショットブラスト装置用ハンガー部材の製法と、そのリスク対策について、現場で培った目線と業界最新動向も交え、深く多角的に解説していきます。

ショットブラスト装置で用いられるハンガー部材とは?

なぜハンガーが重要なのか

ショットブラスト工程では、ワークを確実に保持し、回転させながら均一にショット材を投射する必要があります。

このワークを吊るし保持するのがハンガー部材です。

もしハンガーが歪んだり、破損したりすれば、不均一なブラストや部品の落下、最悪の場合はワーク自体の破損や作業者の安全問題につながります。

実際に現場で発生したワーク落下事故は、数百万~数千万単位の損害発生例もあり、軽視できないリスク因子です。

ハンガー部材の主な製法

現在主流となっているショットブラスト装置用ハンガー部材の製法には大きく分けて以下の3方式があります。

  1. 溶接組立方式
  2. 鍛造一体方式
  3. 鋳造方式

それぞれ特徴があり、コスト・耐久性・カスタマイズ性・リードタイムなど判断基準も異なります。

昭和から続く生産工場では、今なお「溶接組立」が多く見られますが、最新の自動化ラインや品質重視の現場では鍛造・鋳造への移行も進みつつあります。

各製法の特徴と現場の実態

溶接組立方式:柔軟性は高いが熟練工頼みのアナログ感

溶接組立方式は、丸棒や角パイプを切断し、治具で組んで溶接する方法です。

最も歴史の古い方式で、個別仕様への柔軟対応や小ロット多品種にも対応しやすいという利点があります。

一方で、作業者の熟練度に大きく左右され、溶接品質のバラツキ、経年変化による歪み、衝撃・屈曲に弱いなどの課題も根強く残ります。

現場でよくあるのが「この部分だけ再溶接して継続使用」が日常化し、結果としてワーク落下や途中破損が発生するケースです。

特に人手不足が常態化する今、技能継承の遅れが顕在化しており、アナログ現場ならではの根深い課題といえます。

鍛造一体方式:高耐久・高信頼の一方でコストやリードタイムに課題

鍛造一体方式は、加熱した鋼材を金型へ圧力で成形し、一体構造のハンガーを作り出す方法です。

極めて高い強度と耐久性が得られ、負荷分散設計や安全係数を徹底できます。

事故リスクが現場全体に及ぶ自動車・航空機系工場では、鍛造へのシフトが進んでいます。

ただし、初期投資や金型費用が大きく、設計変更に柔軟に対応しづらい点、少量多品種生産には向いていない点がネックです。

また、大手サプライヤーでないと量産によるスケールメリットが出せないため、中小企業では導入が限定的となる現状もみられます。

鋳造方式:複雑形状や一体成形に強み、コストバランスも良好

近年注目されるのが、ロストワックス法や砂型鋳造などを活用した鋳造一体成形方式です。

設計次第で複雑なハンガー形状が低コストで製作でき、溶接不要のため強度バラツキも抑えられます。

自動化やIOT化が急速に進展する工場では、設計データから迅速に金型製作・鋳造までを一気通貫で実現し、リードタイム圧縮の成果も出ています。

一方で、鋳造品特有の内部巣(欠陥)リスクや、鋳肌の粗さなど検査・品質管理面での注意点も多く、ノウハウ蓄積が不可欠です。

ワーク落下事故の実態と、そのリスク要因

「まさか」が常態化する現場のヒヤリハット

現場で最も恐れられているのが「ワーク落下事故」です。

ショットブラスト工程は、大型かつ高重量のワークが多く、落下時の衝撃・損害は計り知れません。

過去の事故事例を振り返ると、ハンガー部材起因の落下は実にヒヤリハット数十件につき1回、多くの現場で繰り返されています。

現場調査で多い原因は以下の通りです。

  • 溶接部のクラック進行の見逃し
  • ハンガーフック先端の摩耗
  • ピンやボルトの脱落・緩み
  • ハンガーマテリアルの経年劣化(材質選定ミス・熱処理不足)
  • 過積載(仕様超過運用)の常態化

現代のトヨタ生産方式やIoT化の波及が及びにくい、アナログ管理下では特に頻発する傾向です。

構造改善とIT化・予防保全の動き

先進工場ではハンガー単体の設計見直しや耐摩耗コーティング、高強度合金の導入が進んでいます。

また、センシング技術やAIによる摩耗検知、稼働データの常時モニタリングなど、IoTを活用した予防保全体制も構築されています。

現場帳票による定期点検では見逃しがちな異常サインも、画像AIやセンサーによりリアルタイムで把握、予知保全が現実のものとなりつつあります。

サプライヤーの製法提案と購買・バイヤーのジレンマ

コストと安全・信頼性、どちらを優先すべきか

バイヤーや調達担当者の立場では、ハンガー部材調達において「低コスト追求」と「高信頼性・安全重視」の間で常に悩まされます。

サプライヤーが安価な溶接組立品を提案する場合、目先のコスト削減メリットは大きいですが、中長期的な事故リスクや保守コスト増を招きかねません。

逆に鍛造方式や高信頼鋳造品は初期コスト増やリードタイム延長のデメリットも。

購買部は、自社工場の実運用・メンテナンス現場目線と、トップダウンでの経営要求(コストダウン目標)という二律背反の狭間で最適選択を迫られる場面が増えています。

昭和型購買からの脱却、現場起点の選考基準づくり

アナログ業界で長らく続く「人脈重視・価格優先」の調達慣習から脱却し、「信頼性・安全性・可視化」を基軸にした選考基準構築が現代では不可欠です。

具体的には、以下の観点を重視すべきです。

  • 過去の事故・瑕疵件数やトラブル履歴
  • サプライヤーの生産体制(QC・トレーサビリティ管理レベル)
  • 設計変更・特注対応スピード
  • 将来の自動化・IoT連携対応力
  • 現場フィードバックを購買部門が吸い上げる仕組み

実際、最新の調達購買業務では、現場とダイレクトに連携する「多能工バイヤー」や「技術系購買」の存在感が高まっており、メーカーの成長ドライバーになりつつあります。

まとめ:未来志向の現場力で安全と競争力を両立しよう

ショットブラスト装置のハンガー部材は、単なる治具ではなく、工場全体の生産効率・安全性・品質・コストに大きく作用する重要部材です。

従来型の慣例や「職人頼みの溶接偏重」から一歩踏み込み、自社の現場実態、作業者の目線、最新の製造技術・予防保全・IT活用トレンドを柔軟に取り入れることが、今後のものづくり現場で生き残る要となります。

バイヤーもサプライヤーも、価格一辺倒や昭和型の固定観念を捨て、「現場発の気づき」を共通言語にした課題解決型パートナーシップを築くこと。

それが、個別最適を超えた“現場の安心”と“日本製造業の競争力強化”につながる核心です。

最後に、現場の小さなヒヤリハットや、ラインからの声を真摯にキャッチアップして課題化する姿勢こそが、未来を切り開く原動力になることを、長年の現場経験者として強く提言したいと思います。

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