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投稿日:2025年6月6日

清掃用ブラシの製作における素材選定と製造技術

清掃用ブラシの製作における素材選定と製造技術

清掃用ブラシは、製造現場のみならず、私たちの生活の多くの場で活躍しています。
しかし、一見地味な存在でありながら、その素材選定や製造技術は非常に奥が深いものです。
この記事では、現場の実務経験や業界動向を踏まえ、清掃用ブラシの基礎から最新の素材、製造技術、さらに調達やバイヤー目線のポイントまで詳しく解説します。

なぜ素材選定が重要なのか? 現場で感じる清掃ブラシの「違い」

清掃用ブラシには、実に多様な素材と形状が使われます。
これは、「用途」「対象物」「現場の環境」によって求められる性能が異なるためです。
一つの工場だけでも、床、配管、設備、精密部品、工具など清掃対象は多岐にわたります。
それぞれに最適なブラシ素材の選定が、清掃の効率化や品質維持に直結しています。

例えば、昭和時代から使い続けられている床用のナイロンブラシ。
当時は素材の種類も少なく、「とりあえずナイロン」が定番でした。
しかし現代では、耐薬品性や摩耗性、帯電防止、微細粉塵の除去能力まで考慮する必要があります。
現場目線から言えば、「安い」「すぐに手に入る」だけでは済まされない問題が増えたのです。
バイヤーとしても、コストだけではなく、使い手のニーズや作業環境を深く理解した選定が求められています。

清掃用ブラシの主な素材

主に使われる素材には、次のようなものがあります。

  • ナイロン(PA)
  • ポリプロピレン(PP)
  • PBT(ポリブチレンテレフタレート)
  • 天然毛(豚毛、馬毛など)
  • ステンレス線、真鍮線

それぞれの特徴を簡単に解説します。

ナイロン(PA)

汎用性が高く、耐久性や柔軟性に優れます。
油、薬品に対する耐性もまずまずで、幅広い現場で利用可能です。
一方、耐熱性や帯電防止は比較的弱めなので、用途によっては見直しが必要です。

ポリプロピレン(PP)

水や多くの化学薬品に強いのが特徴です。
コストも安価なため、床ブラシやトイレブラシの主流素材でもあります。
ただし、ナイロンよりも摩耗しやすいというデメリットも。

PBT(ポリブチレンテレフタレート)

弾力性があり、耐熱・耐薬品性も高い素材です。
希少価値が上がりつつあり、電子部品や精密作業向けのブラシに重宝されています。

天然毛

豚毛・馬毛などは、適度な水含みと柔らかさがあり、繊細な作業に最適です。
しかし耐久性や耐薬品性には劣るため、特化した用途での活躍となります。

金属線(ステンレス、真鍮など)

強い研磨力を求める場合や、配管・機械のこびりつき除去に活用されます。
一方で、キズが付くリスクや静電気の問題、サビにくい合金の選定が必要です。

製造技術の進化と課題

清掃用ブラシの製造現場は、昭和からのアナログ手法を引き継ぎつつも、着実に自動化と合理化が進んでいます。
しかし、他の製造分野と比べて「自動化の壁」が高いことも否めません。
その理由を解説します。

ブラシ製造の工程

一般的に、以下のプロセスが必要です。

  1. 原料選定・混合
  2. 繊維形成(押出成形など)
  3. カット・束ね
  4. ブラシヘッドへの植毛
  5. 仕上げ・梱包

このうち、「植毛」や「仕上げ」などは繊細な人手作業が多く残されています。
特に多品種小ロット対応やカスタム形状では、完全自動化が難しい分野でもあります。

実際、いまだにベテラン作業者の「勘」や「手さばき」に頼る工場が多く、これこそが業界の昭和的“職人芸”を支えています。
しかし人材の高齢化や後継者不足、リードタイム短縮のプレッシャーが年々深刻化しています。

自動化技術の動向と課題

一部の先進企業では、3DカメラやAI、ロボットを活用した自動植毛システムの導入が進んでいます。
製造現場のIoT化も進展し、「稼働状況の見える化」「予防保全の徹底」も導入のターゲットとなっています。

それでもなお、繊維の“曲げ・抜け”精度の調整や、独自の形状段差を伴うブラシの加工工程では、アナログな職人技との融合が求められています。
バイヤーや新規参入を狙うサプライヤーは、最新技術だけでなく、「現場の暗黙知」「手作業の凄さ」が依然価値を持っていることを認識しておく必要があります。

バイヤー・サプライヤー視点で押さえておくべきポイント

実務経験から、バイヤーやサプライヤーの皆さんに特に伝えたいのは以下の3点です。

用途の可視化とフィードバックの徹底

「どの現場で」「どんな素材に」「何を除去したいのか」という現場情報を細かくヒアリングすることが、最終的なコストと満足度に直結します。
実際、スペック上“問題なし”の安価商品を大量購入した結果、現場でクレームが多発し、かえって清掃工数や歩留まりが悪化したという事例が後を絶ちません。

単なる「安さ重視」から「現場課題の本質重視」へ視点を転換しましょう。

サプライヤーとの相互理解の重要性

特に中堅・中小のサプライヤーは、従来の“言いなりOEM”や“コスト削減だけ”発注に、しばしば苦しんでいます。
「実際の使い方」「現場の声」「ロスや歩留まり」について情報をきちんと共有し、彼らの職人技や改善提案も積極的に評価・反映してください。

高度なカスタム案件は、安易な海外調達よりも、国内サプライヤーとの長期的信頼関係のほうが、トータルコスト低減に寄与する場合が珍しくありません。

トレーサビリティと品質保証体制の徹底

品質管理の高度化が進む中、素材のロット管理や異物混入防止、各工程での検査記録がますます重要視されています。
口頭やFAX一本でのやり取りから、「品質データのオンライン共有」「現場の動画記録」などへシフトする企業が増加しています。

自社のCSRやESG対応の要求も拡大する今、バイヤーがサプライヤーに対し「品質保証体制」をヒアリング・監査するのは当たり前の時代です。
それぞれの役割を果たしましょう。

今後の動向と製造業が目指すべき姿

清掃用ブラシ製造は、高度成長期から令和の今に至るまで、「省力化」「コスト競争」「高品質化」という矛盾したテーマを同時に背負い続けてきました。
「人手」と「自動機」のバランス、「現場ニーズ」と「SDGs/ESG」の両立が求められています。

たしかに完全無人化やAI化がものすごいスピードで進む大手工場もあります。
しかし、清掃用ブラシという細やかな商材分野では、現場の声や手作業の尊重が決して廃れることはありません。

昭和の職人技と、令和の自動化技術、そして現場目線の知恵。
この三つの力を融合することが、日本の製造業、そしてサプライチェーン全体の競争力を底上げするのだと確信しています。

清掃用ブラシの世界は奥が深く、常に新たな試行錯誤が求められる“現場発”のイノベーション分野です。
現場、バイヤー、サプライヤーが連携し、ともに発展していきましょう。

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