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宿泊業がオリジナル寝具を作るための素材選定と試作サイクルの考え方

目次
はじめに|宿泊業と寝具開発の重要性
宿泊業界は、いかに顧客の満足度を高め、リピーターにつなげるかが永遠の課題です。
現代では、顧客の体験価値向上を競うなか、「快眠」を追求したオリジナル寝具は差別化戦略の切り札となっています。
一方で、寝具のオリジナル開発は思ったよりも専門性が高く、多くの宿泊業者は「どこから手を付け、どんな観点で素材選定や試作を回すべきか」と悩みがちです。
今回は、現役のバイヤーや調達担当、生産管理の知見と実体験から、「宿泊業がオリジナル寝具を作る素材選定と試作サイクル」について、現場目線かつ業界トレンドを踏まえた解説をしていきます。
オリジナル寝具が宿泊業にもたらす価値
「オンリーワン」の体験が価格競争を脱却させる
宿泊業界の共通課題は「価格競争」からの脱却です。
アメニティや客室の更新だけでは、なかなか決定的な差別化にはなりません。
そこで注目されているのが、「自社オリジナル寝具」の開発です。
例えば、枕や布団、マットレスが「このホテルでしか味わえない」品質であれば、口コミやSNSでの拡散、さらには宿泊以外での物販ビジネス拡大も期待できます。
“記憶に残る快眠体験”こそが、リピーターや指名予約を生みだす強力な動機となるからです。
寝具は感性価値と科学的裏付けのバランスが生命線
寝具開発でもっとも大事なのは、単なる素材の並べ替えやデザイン変更ではありません。
「顧客が心地よいと感じる感性価値」と「実際にぐっすり眠れるという科学的裏付け」、この両輪を回すことがリピーターを引き寄せる本質となります。
素材選定の基本となる4つの視点
宿泊業向け寝具の素材を選ぶ際は、まず基本の4つの視点を確認するべきです。
1. 快適性:体感温度・肌ざわり・フィット感の追求
快眠を左右するのは、体感温度・肌ざわり・体へのフィット感です。
この部分は、人それぞれの好みに差がありつつも、「気持ちよく休めたかどうか」がダイレクトに顧客レビューに反映されます。
– 体感温度:通気性・吸湿性
– 肌ざわり:繊維種(綿、麻、ポリエステル、テンセル等)、加工方法
– フィット感:中材(羽毛、ウレタン、ポリエステル綿等)の特性と充填量
2. メンテナンス性:耐久性と清掃性
宿泊業の現場では、毎日多数の宿泊者が寝具を使用します。
耐久性や洗濯後の回復力、防ダニ・抗菌などの清掃性も外せません。
素材や構造を工夫することで、交換やクリーニングコストを大幅に削減できます。
– 洗濯耐性:何度洗っても型崩れしない素材
– 防ダニ・抗菌:アレルギー対策
– 乾燥の速さ:回転効率を落とさない
3. コストとサプライチェーン:安定調達の視点
品質や快適性を追求し過ぎると、コストが跳ね上がり、現場に負担をかけてしまいます。
また、稀少素材や輸入依存が高い場合、社会情勢や経済危機で安定供給が脅かされるリスクも無視できません。
– 国産素材か、輸入素材(コスト・リスク分散)
– 仕入先の複数化によるバックアップ体制
– 標準材・サステナブル素材の活用による将来対応
4. イメージ戦略:ブランド・ストーリーとの統合
オリジナル寝具は、ホテルや旅館のブランド戦略そのものとも連動します。
「地元の繊維産業とタイアップ」「エコ・サステナブル訴求」「女性専用フロアで特別仕様」など、宿の“物語”や“らしさ”と直結する素材を選ぶことで、プロモーション力が劇的に向上します。
アナログ業界でも活きる、素材調達の実践知
寝具素材選定では、アパレルや量販店と同じく広範な素材知識が要りますが、製造業で培った「現場の調達ノウハウ」が今回特に役立ちます。
伝統素材と新素材のハイブリッド戦略
昭和型の「全部天然素材」「全部国内生産」の発想から一歩進み、最新合繊とローカルな天然素材を組み合わせるハイブリッド戦略が、コストと快適性のバランスを生みます。
– 伝統繊維(綿、麻、シルク、羽毛)は肌ざわりやブランドイメージ重視
– 機能性合繊(ポリエステル、テンセル、冷感素材等)は速乾・防菌・コスト圧縮
デジタル化が遅れている業界ほど、現場目線の実験結果や「一人ひとりの生の声で磨く」ストーリーが評価されやすいのです。
“バイヤー目線”で見る素材メーカー選び
バイヤー視点から重要なのは、単価交渉や納入価格よりも「安定供給力」と「小ロット・個別対応」の柔軟性です。
大手メーカーだけでなく、地方の優良素材業者・工場も積極的にリストアップしましょう。
– 大量生産実績だけでなく、少数ロットや別注にも対応できるか
– 品質ブレや納品遅れへの対応力(納期遵守体制)
– アレルギーや難洗時の現場トラブルにすぐ対応できるか
納品後も3年~5年の品質保証や、定期点検サービスを契約する動きも業界内で定番となっています。
サプライヤーから見たバイヤーの本音
「値引き圧力」だけがバイヤーの関心事ではありません。
導入後の評価、現場からのフィードバックをいかに正直に伝え、次モデルの共同開発に昇華できるかが、信頼されるサプライヤーの条件です。
納期厳守の習慣、緊急時の柔軟な代替提案力も大きなアドバンテージとなります。
睡眠科学・エビデンスを活用する発想
独自性ある寝具を開発するには、「なんとなく心地よい」へのこだわりだけでなく、睡眠科学のエビデンスやユーザーテストデータも必須です。
最新の睡眠サイエンスと素材設計の連動
– 温度調整:芯地や表地に「吸放湿性」「蓄熱性」「冷感機能」などを持つ素材をレイヤー分け
– 体圧分散性:ウレタンの密度・羽毛の質量で体を均一に支え寝返りを減らす設計
– アレルギー対策:ダニ侵入防止の高密度織物、防菌フィルム
一般の消費者アンケートや、試泊モニター制度、AI計測による可視化データも、説得力ある差別化ポイントとなります。
試作サイクルの回し方|短期・小ロット戦略
“一発合格”を目指さず、現場テスト→改良→再試作
「完璧な仕様」を初回で決め打ちするのは現実的ではありません。
むしろ、サンプルの小ロットテスト(20~50セット)でモニター宿泊や社員体験を繰り返すプロセスこそ成功のコツです。
– 第一段階:既存寝具の不満点洗い出し
– 第二段階:仕様案サンプル化&プロトタイプ発注
– 第三段階:現場試用(数週間の宿泊テスト)→アンケート集約
– 第四段階:改良・手直し
– 第五段階:本生産に向けてバイヤー・サプライヤー合同で最終検証
「お客様の声」を反映できる柔軟現場型開発サイクルの構築が、特にアナログ業界では早道となります。
DX活用で試作回数と納期短縮を両立
3D CADやビジュアルシミュレーションを利用した「デジタル試作」も徐々に広がっています。
また、クラウド上のモニターデータ管理や、調達進捗の自動管理も標準となりつつあるので、これらツール導入も効率化のポイントです。
まとめ|宿泊業×製造業の知見が生きる時代
宿泊業がオリジナル寝具を作る上では、単なる見た目や素材選びだけでなく、「快適性・コスト・ブランディング・調達安定性」の多面的な視点が重要です。
昭和型の“勘と度胸”だけに頼らず、蓄積されたフィードバックデータやエビデンス、柔軟な小回りのきく試作サイクルがこれからの業界標準になっていきます。
オリジナル寝具の開発は、地味ですが宿泊業の競争力向上に直結する分野です。
製造業やバイヤー、サプライヤーの現場知見を融合させ、ぜひ“他には真似できない快眠体験”を形にしてください。
製造現場や購買・素材メーカーの経験を活かし、新しい「宿泊体験価値」を共に生み出していきましょう。
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