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製造業で働くなら理解しておくべき材料の機械的性質と試験法

目次
はじめに:なぜ「材料の機械的性質と試験法」を知る必要があるのか
製造業に携わる全ての方が一度は悩むのが、材料選定のシーンではないでしょうか。
どんなに素晴らしい設計図を描いても、実際に手に取る「モノ」の性能や品質は、まさに「材料」に大きく依存します。
とりわけ機械加工、組立、検査、そして購買調達という現場では、材料の機械的性質を正確に理解していなければ、思わぬ失敗に直面することもしばしばです。
この記事では、バイヤーやサプライヤー、現場のエンジニア・管理職など、製造業に関わる全ての皆さんに向けて、材料の機械的性質とその試験法について現場目線&最先端の傾向も交えて深掘りします。
さらに昭和的な「経験則」や「職人芸」に頼りがちな日本の製造業が、デジタル時代の「見える化」「根拠にもとづく意思決定」にどう向き合うのかについても、現場管理職経験者だからこその視点でご紹介します。
機械的性質って何?知らないと失敗する根本理由
材料の「機械的性質」とは、外部から力を加えた際に現れる材料特有の反応や特質のことです。
これらの性質を知っておくことで、設計ミスによるトラブルや不良品の発生を未然に防ぎ、製品品質と生産性を劇的に高めることができます。
また、部品調達やバイヤー業務における最適な材料選びやコスト交渉でも、大きな武器になります。
主な機械的性質の一覧
代表的な機械的性質は次の通りです。
– 引張強さ
– 伸び(延性)
– 硬さ
– 衝撃値(靭性)
– 疲労強さ
– クリープ特性
– 摩耗性
これらを言葉だけで知っていても、現場でどう使うか、どこを見れば不良品を避けられるかまで理解している方は決して多くありません。
主要な材料機械的性質の解説と現場での活用方法
引張強さ:破断を防ぐ「最重要指標」
引張試験で測定される引張強さは、材料が引っ張られて壊れるまでに耐えられる最大の応力です。
自動車や精密機器では、設計段階で「実際にどこまで引っぱれるか」をあらかじめ数値化して管理することが求められます。
たとえばボルトやシャフトなどは、引張強さ不足による破断事故が起きやすいため、図面での要求値クリアがマストです。
現場管理職の経験から言わせていただくと、「コストダウンのために安価な材質に切り替えたが、引張強さが低下し、納入トラブルが続出した」というケースがあとを絶ちません。
カタログ値と実際の試験値(ロットごと、ベンダーごと)が合致しているかを必ず確認しましょう。
延性・硬さ:加工法や後処理プロセスに大きく影響
「板材を曲げる」「プレス加工する」「塑性加工で部品を伸ばす・絞り込む」など、製造業では延性(伸びやすさ)や硬さ(表面の傷つきにくさ)が工程設計の肝になります。
新規開発品やリピート品の材料サンプルの段階で、硬さ・延性のバラツキが顕在化することは少なくありません。
一方で、昭和的な現場では「いつもの材料を、いつものやり方で」が通例で、本来のスペック検証がないまま不良が常態化することもありました。
現代では品質保証活動とデジタルデータの活用で、材料ロットごとの硬さ/延性の差異を可視化し、工程適合性(プロセスケーパビリティ)を評価する企業が増えています。
衝撃値(靭性):不意の破壊や外乱から守る要
材料の靭性(じんせい)は「粘り強さ」ともいわれ、衝撃や急激な負荷に耐える能力を表します。
寒冷地や振動環境下で使われる部品では、金属材料の靭性が低下しやすく、欠陥や破壊に直結します。
近年ではデータ解析技術を用いて、材料の微細組織や熱処理条件が靭性にもたらす影響を定量的に把握し、不良低減やトレーサビリティの高度化を進める企業事例も増えています。
主要な試験法と現場導入のポイント
引張試験:設計値保証のベース
JIS(日本工業規格)やASTM規格に沿った「引張試験機」で、試験片の両端を引っ張り破断までの応力―ひずみ曲線を測定することが主流です。
設備を持たない小規模工場でも、外部の認定試験機関を活用すれば、コストはかかるものの信頼性の高いデータが得られます。
バイヤーやサプライヤーにとっては、納入前サンプルの引張試験成績表をチェックすることが、重大不良の“出口対策”として有効になります。
現場責任者経験上、「使ってみてから気付く」では遅すぎるので、調達前の段階から試験データ提出を習慣化しましょう。
硬さ試験(ビッカース、ロックウェルなど):加工性・耐摩耗性の指標
部品の用途や要求仕様に応じて、ビッカース硬さ(微小硬さ)、ロックウェル硬さ(中程度~大きな押込み)、ブリネル硬さ(鋼球型押込み)などの試験法が用いられます。
現場では熟練作業者が「感覚的に分かる」場合もしばしばですが、定量データによるロット管理・履歴管理をしなければ、安定品質の量産化は難しくなります。
また、自動化やIoT技術を導入する現場では、オンラインで硬さデータを記録・解析し、設備異常や材料不良の予兆検知に応用する動きも加速しています。
衝撃試験(シャルピー、アイゾッド):外乱耐性の見極めに
意外と見落としがちなのが、シャルピー衝撃試験やアイゾッド衝撃試験などの靭性検査です。
特に組立後・製品化後に大きな衝撃がかかりやすい製品や、高リスク用途の部品調達にとっては重要な要素です。
近年の品質管理現場では、「なぜ壊れたのか?」の根本要因解析で衝撃試験データが決め手となるケースも多く、初期ロット段階で十分なデータ収集が要求されます。
サプライヤーとしては、バイヤーから「衝撃値データを供出してください」という要望に備えて、自社内もしくは外部協力先での試験体制を早期に築いておくことが競争力強化の鍵です。
疲労試験・クリープ試験:ライフサイクルの長期信頼性保証
繰返し荷重や長期荷重による変形・破壊を防ぐためには、材料の疲労限度やクリープ(高温・長時間変形特性)も無視できません。
自動車や航空部品、産業機械のギアやバネ部材など、長期使用が前提となる部品設計では必須の試験法です。
現場目線で見ると、納期やコストの理由から疲労試験が「形だけ」になりがちですが、一度でも重大事故・リコールを経験した現場では「最初にしっかり投資すべき工程」として位置づけ直しています。
昭和的な「知恵」とデジタル時代の最前線:どう折り合いをつける?
多くの現場経験者が感じているように、日本の製造業は「ベテランの勘と経験」×「デジタルとエビデンス」のバランスが難しい時代に入っています。
材料選定や機械的性質の評価も、「昔ながらの材料で失敗したことがない」という安心感が捨てきれず、新材料や海外材への切り替えが進まない企業も少なくありません。
しかし、サプライチェーンがグローバル化し、サステナブル調達や多拠点生産が避けられなくなっている今、材料の機械的性質を「数値とデータ」で正確に捉えることはますます重要です。
だからこそ、現場ベースの「知恵」とデジタルベースの「見える化」を融合させ、誰もが納得できる材料管理へと進化することが企業の成長、現場力向上につながるのです。
まとめ:材料把握は競争力と安心のベース、現場と調達が一枚岩になろう
材料の機械的性質とその試験法の正しい理解は、製造現場の不良/事故削減のみならず、バイヤー・サプライヤー間の信頼構築やコスト適正化にも直結します。
調達購買担当者や、新たな業界にチャレンジする志望者の皆さんは、「材料=単なるコスト」と見なさず、現場のプロフェッショナルたちと十分な意見交換を行い、最適な材料選びのスペシャリストを目指してください。
一方で現場の皆さんも、「俺のカン」だけに頼ることなく、デジタルや試験データをうまく活用して、社内外バイヤーへ積極的に情報提供できる姿勢を養っていただきたいと思います。
昭和的な「良い現場」にデジタルを活かすことで、日本のものづくりがさらに競争力と信頼性を高め、世界で戦えるベースが整うはずです。
次に知っておきたいトピック
・調達購買と技術現場のコミュニケーションを良くするコツ
・サプライチェーンDXで変わる“材料マネジメント”の最前線
・素材業界の最新動向と今後押さえるべき新素材リスト
読者の皆様が日々の業務やキャリアアップ、ものづくりの革新に、この知識が少しでも役立つことを心から願っています。
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