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絶縁破壊・劣化のメカニズムと測定法および防止技術

目次
はじめに: 絶縁破壊・劣化が製造業現場にもたらすリスク
製造業の最前線に身を置く中で、「絶縁破壊」や「絶縁劣化」は決して他人事ではなく、現場に深刻なトラブルと損失をもたらす“隠れた大敵”であることを痛感してきました。
現代の製品は高集積化・高機能化が進み、工場の自動化やデジタル化の波に乗って複雑な電子回路や装置に絶縁材料が多用されています。
しかし、昭和の時代から続くアナログな現場でも、絶縁トラブルが生産ライン全体をストップさせたり、高額な修理費用や納期遅延、さらには製品リコールという事態を引き起こすケースも珍しくありません。
そこで本記事では、業界で根強く響く「絶縁破壊・劣化」というテーマについて、現場目線で分かりやすく解説します。
また、調達・購買や生産管理、品質保証といった部門で役立つ測定法や防止技術、さらに最新の業界動向まで網羅し、「今、知るべきこと」をお伝えします。
絶縁破壊・劣化とは?基本から抑える現場の“基礎知識”
絶縁材料の役割と重要性
絶縁材料は、電気回路において本来流れてはいけない場所への電流の流出を防ぎます。
つまり、漏電を防止し、機器や構成部品の安全性・信頼性を確保する「最終防衛ライン」とも言える重要な役割を果たしています。
近年は省スペース化・高電圧化に伴い、より高性能な絶縁材料へのニーズも高まってきました。
絶縁破壊と劣化の違い
絶縁「破壊」とは、絶縁体に高電圧が加わった際に本来の「電気を通さない」性質が失われて、瞬間的に大きな電流が流れてしまう現象です。
これに対し、絶縁「劣化」は長期間の使用や外部ストレス(湿気、熱、紫外線、薬品など)によって徐々に絶縁性能が低下していく現象を指します。
破壊が「一撃必殺」的な進行であるのに対し、劣化は目に見えにくい“静かな侵食”です。
予防保全や品質保証の観点からは、いかに早く劣化を検知・管理できるかがカギとなります。
絶縁破壊・劣化のメカニズム ─ どんな現象が起こっているのか?
絶縁材料はなぜ壊れるのか: メカニズム解析
絶縁破壊および劣化の主な進行メカニズムは、大きく分けて以下の4パターンが現場でよく見られます。
- 電気的ストレスによる破壊: 過電圧やサージ電圧、定常的な高電圧印加によって絶縁体内部に樹枝状放電(ツリーイング放電)が発生。微細な損傷が積み重なり、最終的に絶縁貫通、破壊に至ります。
- 熱劣化: 長期にわたり高温状態が続くと分子結合が破壊され、絶縁耐力が徐々に低下します。エナメル線の被覆やコイル樹脂封止の場合は特に要注意です。
- 湿度・水分の混入: 吸湿性の高い絶縁体は微細なクラック部から水分侵入。これが部分放電の引き金となり、局部的な絶縁破壊を起こす場合があります。
- 化学的影響: 酸化や腐食性ガスとの反応、オゾン暴露などが劣化の“加速剤”となることも。現場ではコロナ放電によるオゾン生成、薬液洗浄工程、屋外設置機器で特に注意が必要です。
昭和から続くアナログ現場での典型的な失敗例
アナログ生産現場では、未だに「感覚頼り」の現場運用が色濃く残るケースもあります。
「一見、外観も問題なく使えるからまだ大丈夫」と絶縁体の再利用を続けているうちに、突如、突発的な絶縁破壊が発生。
現象の原因究明に時間がかかり、生産計画や納期管理に大きな影響が出てしまった、という事例は枚挙にいとまがありません。
これが「絶縁破壊は不可逆で発生後は手遅れになる」所以です。
絶縁破壊・劣化を検知する: 現場で使える測定法の最前線
絶縁劣化の代表的な測定法
絶縁劣化や破壊の初期兆候を現場で効率よく検知するには、いくつかの定番測定方法があります。
- 絶縁抵抗計測(メガー): もっともシンプルな測定法。数百V~1000Vの印加電圧により、絶縁体抵抗値を計測します。劣化やコンタミがあれば数値が低下します。
- 耐電圧試験: 製品や部品に規定以上の高電圧を加え、絶縁体が破壊しないか確認します。合否判定が一発で明確なため、品質保証工程では頻用されます。
- 部分放電(PD)測定: 特に高電圧機器や巻線系部品で多用。絶縁材内部の微細なクラックや欠陥で発生する部分放電の有無を定性的・定量的に測定します。
- 誘電損測定・C-tanδ法: 劣化した絶縁材は誘電損失が大きくなります。高精度な設備を要するものの、長期予防保全やリスク評価に有用なデータが得られます。
デジタル化がもたらす最新のモニタリング・診断技術
最近ではセンシング技術が進化し、IoTセンサやクラウド連携による「リアルタイム監視」も増えてきました。
絶縁劣化の進行度をモニタリングすることで、最適な交換時期を見極めたり、突発的な機器停止リスクを最小化できる“スマート保全”が現実的になりつつあります。
さらに、AIによる傾向解析を活用する先進工場も登場し始めています。
絶縁破壊・劣化を防ぐ最新技術 テクノロジーとアナログ現場の融合
絶縁材料の進化と選定のポイント
「絶縁材を何にするか」——その選定ミスが不具合や事故の原因になることは現場経験者なら熟知しているはずです。
ここにも実は、昭和型現場の“思い込み”から抜けきれない盲点が潜んでいます。
例えば、最近の高機能樹脂やセラミック材料、多層絶縁構造の導入によって、許容電圧や熱耐久性、難燃性などが向上しています。
また、自己修復型材料や超撥水コーティング、ナノ複合絶縁体といった次世代素材も現実味を増しています。
大事なのは「価格重視」でなく、設計仕様・使用環境・定期的なトラブル傾向を総合評価した上での材料選定です。
防止技術のトレンド:アナログ現場で即実践できるポイント
- 防湿・防塵設計: IP規格にもとづくエンクロージャや密封化により、水分や粉塵の浸入を徹底ガードします。
- ストレス集中の回避: 電極構造や配線取り回し、コーナー部のR処理などで局所的な電界集中・部分放電の発生を抑制。
- 予防保全サイクルの構築: 点検記録や定期的な測定値を蓄積・見える化。異常値検知時は即時に点検・部品交換を徹底する現場体制づくり。
- 教育と啓発活動: 絶縁材料の特徴や構造、交換時期や保管方法について現場従業員への啓発を制度化。最新トラブル事例を共有し、危機意識を高める。
調達・購買担当やサプライヤーが知っておきたい視点
調達購買として注意するポイント
絶縁材の調達・選定では、価格や納期だけでなく「技術仕様(カタログ値)と実動環境との差異」への目配りが不可欠です。
生産現場では、屋外・高温・多湿・油・薬品曝露など、極めて過酷な条件が日常的に発生します。
「ラボ試験では合格、でも現場では劣化が早い」といったギャップ対策には、現場合わせのデータ(フィールドテスト、第三者評価など)の活用が有効です。
また、主要サプライヤーを複数線で確保しリスク分散を図る、供給先の品質管理体制や監査実施状況にまで目を向けることも重要です。
サプライヤーとの実務的な擦り合わせや図面・成績書管理においては、「絶縁特性」を仕様書レベルで明記し、工程変更・材料変更時の影響評価をルール化することが肝要です。
サプライヤーから見たバイヤーの“本音”
売り手側(サプライヤー)にとっても、バイヤーの関心事や評価ポイントを理解することは大きな武器になります。
特に近年では「信頼性データ」「長期安定供給」「技術進化への追従力」が重視されます。
・安全規格(UL、IEC、JIS等)への適合証明
・トレーサビリティ体制
・グリーン調達、健康・環境配慮素材への対応
・短納期・小ロット対応の柔軟性
こうした項目で優良な提案・差別化ができれば、安定的な受注拡大につながります。
まとめ:絶縁破壊・劣化対策は現場改善と業界変革の第一歩
絶縁破壊・劣化が起こしてしまうリスクは、目に見えにくいからこそ現場での意識改革が不可欠です。
日本のものづくり現場はアナログ感覚が色濃く残る一方で、着実に技術革新が進行しています。
絶縁破壊・劣化の測定・監視技術、防止対策、材料の進化は現代製造業における「守りの要」、かつ「攻めの武器」にもなります。
調達購買、生産管理、品質保証、技術・設計、そして現場オペレーター……すべての役割が日々の小さな対策を積み重ね、品質・安全・コスト・納期を支える大きな力になります。
本記事の知見を今後の現場業務やバイヤー・サプライヤー間の協力に活かし、「絶縁破壊なき現場づくり」の一助となれば幸いです。
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