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輸入国の検査命令による滞船費を最小化する再検査準備と調整

目次
はじめに:輸入国の検査命令と滞船費の現実
製造業に従事していると、海外との取引が日常的になりました。
グローバルサプライチェーンの中で、「想定外」として発生することが多いのが、輸入国による通関時の検査命令です。
この検査命令は、輸出側では予見が難しく、現地で貨物が足止めされることで発生する「滞船費(ディマーリッジ)」や「滞留費(デマレージ)」は、コスト面でも大きなインパクトがあります。
本稿では、こうした検査命令が発生した際に、どのようにして滞船費などの負担を最小化し、現場をスムーズに再稼働させるための再検査準備・調整のリアルなノウハウを、製造現場の目線から解説します。
バイヤーやサプライヤー双方に役立つ、時代遅れになりがちな業界慣習への対応策も含めてご紹介します。
なぜ検査命令が下されるのか?その背景を知る
検査命令の主なトリガー
まず、「なぜ検査命令が頻発するのか?」を理解する必要があります。
主な理由は以下の通りです。
・輸入国による品質規制強化
・通関書類と実際の貨物との不一致
・過去に不正やリスクが発覚した輸入業者に対する重点監査
・輸出元国の政治・経済情勢の変化
・国際的な法規制やセキュリティ強化(植物防疫や化学物質管理含む)
大手でも、たった一度のミスや書類不備が「通関ストップ→コンテナ開被検査→追加検査」とエスカレーションすることが現実に起きます。
よくある誤解と実際の現場負担
「どうせ一時的なもの」「サプライヤー側だけの責任」と思われがちですが、実際には、関係部門(物流、品証、法務など)や納入業者、さらには製品納入を待つ現場担当にも大きな負担がかかります。
滞船費は貨物到着日から発生し、1日あたり数万円~十数万円、長期化すればその負担は膨大です。
滞船費を最小化するために:再検査までの準備フロー
1. 通関や現地代理店とのリアルタイム連携
昭和スタイルのFAXや紙指示では時間のロスが生じます。
必ず「オンラインでのリアルタイム報告体制」を構築しましょう。
・貨物到着・検査命令発生の速報共有
・必要書類(INVOICE, PACKING LIST, MSDS, 製品仕様書など)の電子化・クラウド管理
・チャットや電話による即時対応ルートの明確化
この対応ひとつで、24時間対応や現地イレギュラー判断が格段に速くなります。
2. 検査内容のヒアリングと必要追加書類の先回り準備
現場で慌てるのは「何がどう問題視されたのか分からない」ことです。
・検査官への質問:なぜ検査に至ったか?どの書類・項目がターゲットか?
・類似ケース(社内や過去の同業他社事例)をすぐに参照できるナレッジベースの作成
上記2点をバイヤーとサプライヤーで共通認識化することで、必要な追加提出物を最短で準備できます。
3. サプライヤー現場の再検査体制強化
現地で貨物検査するとなれば、製品返送や現地再検査の段取りが最優先です。
・緊急対応スタッフのリスト化
・現地パートナーや検品会社との事前契約
・再検査手順マニュアル(動画や写真で直感的に分かるもの)の整備
たとえば、自動車部品や電子部品では、不適合ラベルの貼り直しや追加検品が必要になる場合もあります。
現場担当者が即応できる体制づくりが、コスト削減の鍵となります。
事前防止の視点:アナログ慣習からの脱却
書類不備・書式ミスを撲滅する
いまだに手書きや古いExcel様式を使っている現場も多いですが、これが命取りになりかねません。
最新のクラウド型通関サポートシステムやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入を進めましょう。
・多重チェック体制の自動化
・品番や数量など目視検証では見落としがちな項目のAIベース検証
・各国ごとの最新規制情報を逐次アップデート
バイヤー・サプライヤー間の「経験に頼る口約束」に頼らず、属人的な運用から脱却することが、トラブル予防のファーストステップです。
現地法対応チームの設置・教育
特に中国、東南アジア、中東などは規制や通関事情が頻繁に変わります。
各主要エリアごとに「現地法と輸入規制担当」を置き、現地語のできるスタッフやコンサルと連携させておくことで、不意の規制変更にも強くなります。
人気の高い改善事例:リアルな業界ノウハウ
事例1:化学品メーカーの輸入検査対応
ある大手化学品メーカーでは、中国向け出荷で度重なるMSDS不備を指摘され、毎回数十万円の滞船費が問題になっていました。
そこで、検査内容ごとの「FAQ&過去事例集」と「英語・中国語同時書類提出用のクラウドテンプレート」を整備。
書類作成工程にAIのダブルチェックを入れたところ、不備率が激減し、最大で年間1500万円の滞船コスト削減に成功しました。
事例2:自動車部品サプライヤーの現場再検査マニュアル改革
従来は現場作業員の手動チェックが中心でしたが、スマートフォンで撮影した検査動画をクラウド保存し、リアルタイムで日本本社品質管理部門と確認できる体制に刷新。
これにより、現地検査での意図の伝達不良や判断ミスが大幅に減少しました。
再検査指示から最終合格までのリードタイムも平均2日短縮でき、最終顧客への納期遅延も防止しています。
現場で使える:検査命令後の「最短対応チェックリスト」
1. 検査命令通知の受領・内容確認
2. 現地通関業者・代理店との優先連絡
3. 追加提出すべき書類、検査対象項目の洗い出し
4. バイヤー・サプライヤー・現地対応者(3者間)での即時WEB会議
5. 再検査に必要な物品・作業員の手配(現地調達可能な場合は優先)
6. 作業記録・証憑の写真・動画保存
7. 合格後、速やかに現地検査・通関記録をバイヤー、最終顧客に共有
こうしたリストの標準化だけでも、現場の混乱や責任のなすりつけ合いから解放され、建設的な対応に集中することができます。
バイヤー目線・サプライヤー目線双方が意識すべきこと
バイヤー(調達側)は「問題が起きたときの傾向・パターン」を予め整理し、リスクの発生源を明確にしておくことが重要です。
一方、サプライヤー(納入側)は「要求品質=顧客が重視する視点」を理解し、それに合わせた現場改善や事前書類準備を習慣化することが信用構築につながります。
現場からの細やかなフィードバックこそが、業界の本当の付加価値を高めるのです。
まとめ:昭和式から令和のグローバル現場対応へ
輸入国の検査命令は、時代・国を問わず避けられない課題ですが、「現場が納得し、即動けるマニュアル」「デジタル化された共有体制」「トラブル対応の備え」があれば、コストも労力も最小限に抑えられます。
特に昭和から続くアナログ慣習にしがみつくのではなく、ラテラルシンキングで一歩先の“新しい現場”を作りあげてください。
今後バイヤーやサプライヤーを目指す方は、このリアルな現場視点・実績重視こそが次時代の製造業キャリアの武器になるはずです。
製造業の皆さまの知恵と行動力こそが、グローバル競争の中でも真に通用する現場力となります。
本記事が、輸入検査対応と滞船費最小化という実務課題への一助になれば幸いです。
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