投稿日:2025年12月13日

輸送遅延の大半が“情報共有不足”に起因する実態

はじめに ― 製造業を蝕む「輸送遅延」の真因

近年、グローバル競争やサプライチェーンの複雑化が進む中で、製造業界における「輸送遅延」は、依然として根深い課題の一つです。

多くの現場担当者や経営層が「交通渋滞」や「自然災害」「荷役要員不足」などの外的要因を理由に挙げがちですが、私のように長らく現場に携わってきた人間から見ると、輸送遅延の大半は“情報共有不足”に起因しているというのが実態です。

ここでは、なぜ情報共有不足がそんなに大きな影響を及ぼすのか、どう改善できるのか、そして昭和的なアナログ文化が背後に潜む理由まで、実務経験をもとに深く掘り下げていきます。

製造業の現場でなぜ情報共有が遅れるのか

伝言ゲームから抜け出せない現実

製造業の現場では、「この部材は何時に届くのか」「納品先への出荷タイミングは」「顧客からの急な仕様変更」など、さまざまな情報が必要です。

しかし現実には、営業、購買、生産管理、物流、倉庫、品質管理、それぞれの部署が“伝言ゲーム”のように情報を受け渡しし、しかも「正確な内容が最後まで伝わらない」「主語や数字が抜けて誤解」などのトラブルが頻発しています。

特に、調達部門と生産部門、物流部門の連携が甘い現場ほど、「聞いていない」「知らされていない」という声が後を絶ちません。

メール・電話・紙―アナログ業界の情報伝達壁

実態として、多くの製造業ではいまだにメール、電話、FAX、紙ベースの帳票を用いた情報伝達が主流です。

発注情報が「紙+エクセル」のみ、
輸送依頼が「電話+議事録」、
遅延連絡が「メール+口頭」…
バラバラの手段でやり取りされることで、「伝わったつもり・伝えたつもり」のデッドロックが発生しているのです。

一つの端的な例を挙げれば――
購買担当が発注変更をメールで流したつもりが、サプライヤーには迷惑メール判定で届いていなかった。
サプライヤーは旧指示通り出荷して大混乱、という現象が2024年の今も珍しくありません。

情報共有不足が及ぼす輸送遅延の連鎖

データがつながらないとモノが流れない

例えば、生産計画が週単位で変更されているにもかかわらず、その情報が倉庫や物流担当までリアルタイムで共有されない。

結果、送り先や納期の認識にズレが生じ、「積み込みミス」「未着トラブル」「一時保管スペース不足」につながります。

また、輸送会社へ早めに連絡できれば車両配車やルート調整も可能ですが、ギリギリになってから「出荷が増えた/減った」と言われても対応できず、無駄な積み替えや待機時間、果ては製品ロスまで生じます。

見える化できないサプライヤー側の苦悩

バイヤーを目指す方や、サプライヤーの方々にはぜひ知っていただきたいのがこれです。

下請けサプライヤーは、上流からの「最新情報」が遅れると自社の手配も進められません。
「図面差し替えの連絡が遅い」「追加発注が来たけど納期指定が曖昧」など、
情報のラグに振り回されることで、本来守れるはずの納期が守れなくなり、悪い意味で“遅延常連”の烙印を押されることもあります。

これは単なるサプライヤーの能力不足ではなく、情報共有体制そのものが抱える構造的問題なのです。

なぜ昭和的アナログ文化が残り続けるのか

成功体験という「過去」の呪縛

多くの現場では、「これまでも何とかやってきた」「紙でやるのが一番確実」という昭和的な思考が根強く残っています。

実際、現場では小さなミスも“阿吽の呼吸”や職人技で吸収できていた時代がありました。
しかし、デジタル化・多品種小ロット化が進む現代では、その場しのぎの対処が通用しなくなっています。

過去の成功体験が、現状維持バイアスとなって現場改善の足枷となっているのが実情です。

情報共有基盤の投資は「コスト」か「利益」か

多くの企業でIT投資はコストと見なされ、目に見える売上や生産設備投資の優先度が高くなりがちです。

しかし、情報共有の遅れによって発生する
– 追加輸送費
– 待機料
– 製品ロス
– 異常対応の人手確保
– 顧客信頼低下

などの“隠れコスト”を見積もれば、デジタル化への投資は本来、利益確保そのものと考えるべきです。

現場で生きる、情報共有強化の実践テクニック

リアルタイムな「情報一元管理」への第一歩

理想はSCM(サプライチェーンマネジメント)システムや、専門の生産・在庫管理ソフトを導入することですが、中小企業や現場第一線ではコストや運用負荷から慎重になりがちです。

そこで、まずは「情報の一元管理ルール」を決めること。
たとえば、
– 発注・出荷・搬入の全連絡は、社内外とも共通フォーマットのクラウドツール(GoogleスプレッドシートやTeams、Slackなど)で統一
– 変更履歴を必ずタイムスタンプ付きで記録
– 各担当の誰が・いつ・どこに・何を送ったか、見てすぐ分かるリストを作る

など、段階的に情報の一元化を進めるだけでも、伝達ミスや遅延発生率は大きく下がります。

サプライヤーパートナーとの「情報手形」導入

特に、複数サプライヤーを束ねるバイヤーの立場では、パートナー企業との「情報共有協定」を事前に交わすことが重要です。

たとえば、
– 仕様変更・納期変更時は○時間以内に双方確認
– 書面/データのやり取りだけでなく、緊急時の電話フォロー体制
– 毎週or毎月の情報共有ミーティング実施

こうした約束事をサプライヤーと握るだけでも、意識と行動は大きく変わります。

現場リーダーは「情報伝達の旗振り役」に

どれだけシステムやルールを導入しても、最終的には“現場の意識”がカギです。

私が工場長を務めていた現場では、毎日の朝礼・夕礼で「昨日のイレギュラー」「変更連絡の伝達状況」について必ずチェックし、各ライン長が部下へ落とし込む習慣を徹底しました。

地道なようですが、「自分の仕事が次工程のお客様の仕事につながっている」という意識が醸成されることで、個別最適な隠蔽や独自判断も減り、チーム全体の生産性が劇的に改善しました。

デジタル化の先にある「新しいものづくり」へ

異業種に学ぶ「すぐ共有・すぐ意思決定」の文化

自動車や半導体、IT企業では、SlackやTeamsを使って「現場レベルで即・情報感度」を上げています。

一方で、最新クラウドツールだけでなく、現場ホワイトボードやバーコードシステムの併用など、
– 各拠点の情報を“見える化”する
– 現場の気づきを集約しやすくする

といったアナログとデジタルの融合が進んでいます。

製造業もこれらの文化を素直に吸収し、「情報を溜めこまない、すぐ動く」スタイルを追求することが急務だと感じます。

データドリブンの時代、「物流を止めない経営」へ

今後の日本のものづくりは、“人がモノを生み出す”だけでなく、“データでモノの流れを最適化する”時代です。

CO2排出削減などサステナブルな課題にも、情報のリアルタイム化は必須。

特に調達担当者・バイヤーの皆様には、「情報共有の迅速さ=会社全体の収益」という認識を強く持ち、
“現場目線”と“全体最適”の橋渡し役を担っていただきたいところです。

まとめ ―「情報の壁」を越えた先に広がる地平線

輸送遅延の大半が“情報共有不足”で起きているのは、現場を知る人間ほど痛感している真実です。

その根底には、昭和的アナログ文化、成功体験という過去、投資判断の壁、現場の意識差などが複雑に絡み合っています。

けれども、「情報」と「ひと手間」を整備するだけで、生産も輸送も、ものづくりの現場は大きく変わります。

自社の枠を越えたサプライチェーン全体で、もっと“当たり前”に情報が流れるようになれば、輸送遅延という宿命的なトラブルも確実に減り、新しい日本のものづくり文化が生まれると私は信じています。

すべての製造業従事者・これからのバイヤー・サプライヤーの皆様が、「情報共有力」で業界の発展をリードしていくヒントになれば幸いです。

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