- お役立ち記事
- マルチレイヤーボールOEMがスピン分離性能を最適化するソフトウレタンカバー
マルチレイヤーボールOEMがスピン分離性能を最適化するソフトウレタンカバー

目次
はじめに:マルチレイヤーボールOEMと製造業の現状
長く製造業に携わってきた中で、「マルチレイヤーボールOEM」という言葉に、まだピンとこない方も少なくないかもしれません。
特に昭和時代から受け継がれてきた“アナログ”な価値観が根強く残るこの業界では、既存の手法や実績が重視される傾向があります。
しかし、時代は確実に動いており、お客様の要求やマーケットの潮流も、着実に変化しています。
その一つのトピックが、ゴルフボール分野での「マルチレイヤー化」と「OEM(受託製造)」です。
そして、いまスピン分離性能を左右する“ソフトウレタンカバー”の最適化が、バイヤーやサプライヤー双方にとって大きなテーマとなっています。
この記事では、マルチレイヤーボールOEMの技術的進化や現場のノウハウ、そしてサプライヤー・バイヤーそれぞれの立場から意識しておきたいポイントについて、実践的な内容で深く掘り下げていきます。
マルチレイヤーボールの構造 ― なぜ多層構造が選ばれるのか
シングルレイヤーとマルチレイヤーの違い
ゴルフボールは、かつては単層構造(シングルレイヤー)が主流でした。
しかし、現代ゴルフでは「飛距離」「スピンコントロール」「打感」といった多様な要求に応えるため、2層、3層、あるいは4層以上の「マルチレイヤー構造」が主流となっています。
コア部分ではエネルギー効率を最大化する一方、アウターでは打感やスピン性能を追求する設計です。
これにより、ドライバーショットでの低スピン+高初速、アイアンやウェッジでの高スピンという“スピン分離”を実現します。
OEMメーカーが担う役割
こうした複雑な構造体を安定して量産するには、最先端の技術と品質管理ノウハウが求められます。
ここでOEMメーカーの存在が非常に重要となります。
大手ブランドは商品設計にはじっくり時間とリソースを割きますが、自社工場を持たないケースも多く、最終製造工程は信頼できるOEMサプライヤーに委託されています。
OEMメーカーは、「設計図通り」に製造するだけでなく、実際の現場で蓄積された知見を活かし、設計の最適化や新素材の選定、品質管理の高度化にも貢献しています。
ソフトウレタンカバーの特性と現場での技術課題
ソフトウレタンカバーがもたらす“スピン分離”とは
現代のマルチレイヤーボールでキーテクノロジーといえるのが、「ソフトウレタンカバー」です。
ウレタンカバーは従来のアイオノマーやサーリンカバーよりも柔軟性・反発力・摩擦係数が高く、これがドライバーでの飛距離アップと、グリーン周りでの高スピンを両立させています。
まさに「飛ばしたいけど止めたい」というゴルファー共通の願いを、一つのボールに両立させる要素です。
この“分離”を実現するのは、コアとカバーの細かいマッチング設計であり、その精度は現場力で大きく左右されます。
ソフトウレタンカバー製造時の難しさ
ソフトウレタンの加硫や成形には、従来素材よりも厳格な温度管理・湿度管理が求められます。
ウレタン素材は物性変化が激しく、ちょっとした加熱ムラや冷却条件の不均一も、打感やスピン性能に直結します。
また、現場作業員のちょっとした手順誤りや異物の混入も、即クレームの温床になります。
私自身、工場長や生産管理の立場で、生産ラインの細かな改善を繰り返してきましたが、ソフトウレタンカバー工程の標準化・自動化は容易ではありません。
「人の勘」に頼らず、センサーやAIを活用した工程管理の導入が進む今、それでも“現場五感”とのハイブリッドが不可欠です。
バイヤー(購買担当者)は何を見ているのか
現場力と工程データの両立が購買評価のカギ
多層ゴルフボールのような高付加価値品をOEM調達する際、バイヤーは“品質の一貫性”に最も注目しています。
これは単なる「試作品時の品質」ではなく、「量産時にどれだけブレなく生産可能か」という視点です。
昭和的マニュアル頼みの現場では、熟練者の退職や急な増産対応に弱みが出ます。
バイヤーは、標準作業書や工程FMEA、製造実績データ、QC7つ道具による異常傾向の監視履歴などを見極めます。
“一発勝負”ではなく、常に再現性を維持できる現場かどうか。
この信頼の根拠を、現場の生声・現物、そしてデータの両面で評価しています。
コストだけでなく「最適化提案」を求めている
昔の購買担当者は「価格交渉」や「納期交渉」がメインタスクでした。
しかし今のバイヤーは、サプライヤーに「最終製品の性能最適化」や「市場動向に合わせた差別化案」の提案力も求めています。
たとえば、ウレタンカバーの摩擦係数や厚み変更によるスピン性能のチューニング、設備メーカーとの協働によるライン自動化案など。
単なる「モノを作る」だけではなく、「商品価値を一緒に創り込むパートナー」が理想なのです。
サプライヤーから見たOEMビジネスのチャンスと課題
現場ノウハウの差別化が競争力を生む
他社に先駆けて新素材のウレタン配合を実現した、あるいは加硫温度・工程制御のデジタル化に成功したなど、現場由来のノウハウは大きな武器です。
マルチレイヤー化が進むほど、工程間の“ちりつも”なバラツキ解消ノウハウや、カバー・中間層・コアの相溶性問題への解決事例など、いかに他社と違う視点で付加価値を出せるかが問われます。
バイヤーが直接現場を見に来る時代ですので、「自社は現場視点でどう最適化に取り組んでいるか」をしっかり説明する必要があります。
アナログからデジタルへの現場進化
昭和型工場では、職人技と現場感覚で“なんとかなる”という空気が残っています。
ですが、業界リーディングカンパニーやグローバルメーカーほど、自動化・データ化・工程モニタリングへのシフトを進めています。
人的パワーによる調整や「ベテランならではのコツ」も大切ですが、それだけではバイヤーの信頼を勝ち取れない時代です。
ものづくりの後継育成も含め、アナログとデジタルを融合させた“新しい現場力”構築が、今後の重要な競争力となります。
OEMパートナーシップで価値共創を目指す
サプライヤー・バイヤー双方の“共通言語”が進化のカギ
OEMビジネスを成功に導くためには、優れた材料・技術だけでなく、「現場同士が本音で議論できる関係構築」が不可欠です。
バイヤーが現場の声に耳を傾け、サプライヤーが現場目線の提案をして初めて、本当の最適化と市場価値向上が実現します。
日々の現場改善やトライ&エラーを、単なる内輪のPDCAにせず、OEMパートナーと共有し合うこと。
これにより、設計-購買-生産部門が一体となったイノベーションが生まれます。
アナログ現場の知見がDX時代のベースになる
焼きこまれた現場スキルや、ベテランの“勘とコツ”をデジタル時代にどう活かすか。
自動化やデータ活用が進むほど、現場の深い知見や“なぜこの工程が必要か”の原理原則を説明できるかがOEMの信頼に繋がります。
自社の強みを発信する際には、単なるスペックや数値だけでなく、「現場をどう守り、どう進化させてきたか」というストーリーも織り込みましょう。
まとめ:マルチレイヤーボールOEMの未来と製造現場の挑戦
ソフトウレタンカバーを最適化し、スピン分離性能を追求するマルチレイヤーボールは、まさに現代OEMの結晶です。
その裏には、長年の現場力・知見、そしてアナログからデジタルへの果敢な挑戦が詰まっています。
サプライヤーは、現場をベースにしつつデジタル時代の進化を恐れず、自社の強みを形にして提案していくこと。
バイヤーは、現場力の根拠を見極め、ともに価値共創できるパートナーを探し続けること。
現場目線の地道な努力こそが、ブランド価値や差別化へと繋がります。
昭和的なやり方だけにとらわれず、新しい技術やパートナーシップに挑戦する――それが、製造業で働く私たち全員の未来を切り拓くと、私は信じています。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)