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投稿日:2025年6月6日

LEDの照明光学設計とそのポイント実践講座

はじめに:LED照明光学設計の重要性

LED照明は製造業の現場のみならず、あらゆる産業・社会インフラに欠かせないものとなっています。

高効率で省エネルギー、長寿命というメリットを持ちながら、光の指向性や色温度など設計時に考慮すべき要素も多く、その光学設計の巧拙は、最終的な製品の品質と価値に大きな影響を与えます。

昭和世代からの蛍光灯や白熱電球を中心とした照明設計の常識に慣れ親しんだ現場でも、LED照明設計の本質を理解し、実践できる人材は現代の製造業界で極めて価値が高いです。

本記事では、実際の工場現場で数多くの照明導入プロジェクトを担ってきたアナログとデジタル両方の現場感覚をもとに、LED照明における光学設計の基本と業界の最新トレンド、さらには調達購買・生産管理の視点も交えて、実践的なポイントを解説します。

LED照明の基本と光学設計の全体像

LEDの構造とその特性

LED(発光ダイオード)は半導体を利用した発光素子です。

入力電圧により電子と正孔が再結合し、発光するのが基本原理です。

白熱電球のように全方向に光が放たれるわけではなく、指向性が強いという特徴があります。

この性質が、LED照明設計における最大のポイントの一つとなります。

LED照明の主な構成部品

1. LED素子(チップ)
2. レンズ・カバー(光学部品)
3. 放熱部材
4. 駆動回路(電源)
5. 外装・取り付け部品

光学設計に関するパートは、主に2の「レンズ・カバー(光学部品)」です。

この要素は、LEDから出る光をどの範囲・形で拡散させ、照射対象にどう届けるかという、製品そのもののパフォーマンスと直結しています。

LED照明における光学設計の目的

LED光学設計の目的は大別して以下3つです。

1. 必要な明るさ(照度・光束)を、必要な場所に効率よく照らすこと
2. 光のムラやグレア(眩しさ)を抑え、安全かつ快適な環境を実現すること
3. 利用環境・用途にマッチした演色性や色温度を提供すること

従来型照明と違い、LEDは配置や光学部品の選定によって「狙いどおりの光」をデザインできます。

この設計自由度の高さこそが、LED照明開発の醍醐味と難しさです。

現場目線でみるLED光学設計:5つの実践ポイント

1. 配光設計の基本:配光曲線を読めるか?

LED照明を選定・設計する際、必ず出てくるのが「配光曲線」です。

これは水平・垂直方向に対し、どの角度でどれだけの光が出ているかを示すグラフで、現場エンジニアやバイヤーが最低限チェックすべき指標です。

たとえば…

– 全体を均一に照らしたい → 広角・拡散系配光
– 作業エリアをピンポイントで明るくしたい → 狭角・集光系配光

現場で「ムラが出た」「明るさが足りない/まぶしすぎた」等のトラブルは、この配光設計ミスが約7割を占めます。

配光設計段階でCADによる照度シミュレーションを実施し、現状設備や設置高さ・取り付け角度などの現場条件を加味することが重要です。

2. レンズ選定の実際:アナログ世代ほど見落としやすいポイント

LEDから出る素の光は「指向性(直進性)」が強く、そのままカバーなしで使うと一部がまぶしくなりやすいです。

解決には、専用レンズや拡散カバーを適切に選ぶことが必須です。

一般的には、

– 集光レンズ → 壁面や物体表面を明確に照らす(スポット用途など)
– 拡散レンズ → 作業面をやさしく均一に(オフィス灯、工場灯など)
– プリズムカバー → グレア抑制・省エネと両立(倉庫・体育館・物流等)

従来の蛍光灯の感覚で、同じ設置間隔や高さをそのまま流用しがちですが、LEDではレンズの種類や取り付け方法の最適化が、現場の生産性や安全性に直結します。

工場現場でのトライ&エラーの経験値を活かし、レンズ交換や各種カバーの現地検証を必ず行いましょう。

3. 色温度・演色性の選定:現場の「見やすさ」は何で決まるか?

LED照明の色温度は、大きく分けて「昼白色(5,000〜6,500K)」「電球色(2,700〜3,500K)」などがあります。

現場での作業には昼白色、目視検査や品質管理ゾーンには高演色のタイプが多く選ばれます。

しかし、色温度を高くすれば良いというわけではありません。

– 作業負担低減 → 5,000K付近がベスト
– 精密な色判定・作業 → 演色性Ra80以上(できればRa90以上)

アナログ世代の現場では、色温度や演色性をあまり重視しない傾向が多かったですが、近年では人手不足・高齢化が進行し「見やすさ」は作業効率維持の最重要ポイントです。

バイヤーやサプライヤーも、現場ヒアリングに基づき的確にスペック選定(色温度・演色性)の説明ができることが求められています。

4. グレア(眩しさ)対策:作業ミス・事故防止と快適性の両立

LEDの「点光源」的な性質により、直接光(ダイレクトグレア)が強い照明設計は、現場での作業ミス、眼精疲労、ひいては人的ミスや怪我の原因となります。

■グレア対策の実践例

– 拡散カバーを追加
– ルーバーや遮光板を追加
– 天井直付けでなく、バウンス(間接照明)化
– 配光制御レンズ(=カットオフ型)を選定

現場で苦情が多いのは必ずグレア問題なので、照明設計時は設置場所の図面と実際の作業ライン・動線を現場実視し、「人の動き」×「ライトの位置」を必ずシミュレーションしましょう。

5. 現場ニーズに即したメンテナンス性・調達性の担保

LEDは長寿命といわれますが、実際には電源回路(ドライバー)が先に故障するケースや、レンズの経年劣化(黄変)が目立つこともあります。

また、調達購買の現場では、リプレイス品の継続入手性や部品単位での供給可否なども重要です。

– 保守部品の供給期間
– 互換部品の入手容易性
– サプライヤーの技術サポート体制

昭和時代の「電球はとにかく交換すりゃ良い」という単純発想から、LED照明時代は「メンテナンス設計」と「調達性」という視点を持つことが、現場・バイヤー・サプライヤー協働の新常識です。

昭和的アナログ業界ならではの課題と最新トレンド

なぜ現場で失敗するのか?「使ってみないと分からない」文化の功罪

日本の製造業現場は、長年の経験と「先輩の背中を見て覚えろ」的なOJT主導で、設備導入や照明更新が進められてきました。

このアナログ志向は良い面もあれど、LED照明のような高効率かつ設計自由度が高いソリューションでは、従来の勘や慣習だけでは最適化しにくい問題も生じます。

特に、新設工場や既存ライン置換時に「使ってみないと分からない」まま選定してしまい、実際の点灯後に「やっぱり眩しい」「明るさが足りない」などの手戻りが発生しやすいです。

これを防ぐには、国内外メーカーの照度シミュレーションやトライアル導入の活用が不可欠です。

最新トレンド:デジタル設計・シミュレーション活用のススメ

近年は、DIALuxやAGi32といった照明シミュレーションソフトが安価・高精度化し、現場図面と照合した上で事前に「どの程度照らせるか」「グレアが発生しないか」を可視化出来るようになりました。

また、IoT化によるスマート照明(センサ連動・無線制御)、省エネ法規の強化、EBPM(エビデンスに基づく設計)の流れも強まっています。

バイヤー・サプライヤー双方が現場図面・作業動線・設備レイアウトから最適な照明設計を共同検討し、予測に基づく選定根拠を示すプロセスが、昭和からの大転回点となっています。

バイヤー・サプライヤーが押さえるべき調達・品質管理の視点

バイヤー視点:コストだけでなく「生産性ROI」を重視

LED照明は導入コストだけを見ると高く映ります。

しかし、導入によって作業環境の快適性・明瞭性が高まり、作業ミス減や熱中症対策、現場のモチベーションアップなど副次的価値が期待できます。

**照明投資のROI(費用対効果)設計**を積極的に訴求し、現場巻き込み型のベンダー選定を行うことが成功のカギです。

サプライヤー視点:現場課題を言語化し提案力へ昇華

単なるスペックカタログやメーカー推奨値ではなく、実際の現場ヒアリング内容やユーザー事例を活用し、「御社の現場では、このレンズ、この配光、このメンテナンス性がベストです」といった具体提案が求められます。

また、世界的なサプライチェーン混乱やコスト高騰の昨今、部材調達リスクへの代替案・継続供給の体制もあわせて提案できるサプライヤーが強く選ばれる時代です。

まとめ:LED照明光学設計の「現場価値」こそ、製造業DXの核心

LED照明の光学設計は、単なる「明るくする」だけの話にとどまりません。

製造現場の生産性、品質、そしてそこで働く人の安全・健康・快適性までも左右する経営戦略上の重要テーマです。

アナログ世代から培った現場感覚と、最新のデジタル設計・調達ノウハウとのハイブリッドが、これからの日本のものづくり現場には必須となっています。

LED照明光学設計の本質と実践ポイントを押さえ、現場と経営、バイヤーとサプライヤーの共創による新たな地平線をぜひ切り拓いてください。

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