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フレキシブルハイブリッドエレクトロニクスの基礎と最新配線技術アプリケーション展開

目次
はじめに:フレキシブルハイブリッドエレクトロニクスとは何か
フレキシブルハイブリッドエレクトロニクス(FHE)は、ここ数年で急速に注目を集めている新たな電子回路技術です。
FHEは、従来の剛性基板(リジッド回路)と柔軟性のある基板上へのデバイス実装、そして最新の印刷エレクトロニクス技術を組み合わせることで、従来の電子製品では難しかった「曲がる」「伸びる」「軽い」「薄い」など、これまでにない特徴を発揮します。
この技術革新が、製造業の生産現場やサプライチェーン、さらにはサプライヤーとバイヤーの間にも新たな価値をもたらし始めています。
本記事では、現場主義の視点からFHEの基礎、その実現を支える最先端の配線技術、実際のアプリケーション展開、そして昭和的なアナログ業界でも根強い旧来のモノづくり文化との接点、現場目線の導入課題など、徹底的に深掘りします。
フレキシブルハイブリッドエレクトロニクスの基本構造と特徴
FHEの最大の特徴は、その名のとおり「フレキシブル」で「ハイブリッド」であることです。
従来のプリント基板(PCB)やフレキシブル基板(FPC)とは、似て非なる進化がここにあります。
「フレキシブル」とは何か?
これまで多くの電子デバイスは、硬いガラスエポキシ素材やセラミックなどの上に電子部品を載せていました。
FHEでは、柔軟性の高いフィルム(ポリイミドやPEN、PETなど)だけでなく、繊維や紙のような変形可能な素材にも配線が可能になりました。
この柔軟性により、ウェアラブル端末、曲がるセンサー、三次元形状への密着などが実現しています。
「ハイブリッド」とは何か?
FHEは、印刷技術(インクジェットやスクリーン印刷など)と、従来の半導体実装技術を組み合わせる「ハイブリッド」方式です。
例えば電源ラインや単純な回路は銀ナノインクや導電性ペーストで印刷し、高性能なICチップやセンサだけは従来通り部品実装(SMT)します。
この組み合わせで、低コスト・軽量化・生産性向上と高度な機能性を両立しています。
最新のFHE配線技術:進化のキーテクノロジー
FHEを支える根幹技術は「印刷配線技術」と「高信頼実装技術」です。
現場から見るその最新トレンドを解説します。
印刷配線技術の進化
かつての配線といえば、エッチングやドリル穴、メッキ工程で多くの手間コストがかかりました。
FHEでは、導電性インク(銀、カーボンCNT、銅など)をフィルムや異種素材に直接印刷する手法が主流となっています。
特に注目すべきは以下の2点です。
- ロール・トゥ・ロール(R2R)印刷:大面積かつ高スループットで連続製造が可能になり、製造リードタイムとコストを劇的に低減します。
- 高解像度微細配線:20ミクロン以下の線幅形成も可能となり、従来の電子製品に匹敵、あるいは超える集積度が得られます。
労働集約型の現場・町工場のオペレーターも比較的短期間で扱える上、段取り替えも速く多品種少量に強いのが印刷方式の特長です。
高信頼実装技術:異種材料・高密度の壁
柔らかいフィルム基材では、はんだ付けや熱ショックによるクラックが問題になるケースがありました。
その課題解決に、最新の「フォト硬化樹脂接着」「低温はんだ技術」「導電性ペーストを用いたダイボンディング」などが取り入れられています。
これにより、曲がる・伸びる基板上でも高信頼性を保てるようになり、品質要求の高い工業分野や医療分野への展開が進んでいます。
FHEの実際のアプリケーション展開
FHEはもはや研究段階を越え、実用レベルでの様々な事例が生まれています。
現場の視点からその代表例を見ていきましょう。
ウェアラブル分野
最も恩恵を受けている分野の1つがウェアラブルデバイスです。
伸縮性のあるリストバンド型生体センサやスポーツウェアへの導電布配線、さらには介護・医療現場での生体コンディション常時モニタリング用途などが実用化済みです。
これらは身体への密着性や薄型・軽量が求められ、FHEならではの “装着されていることを感じさせない” ソリューションとなっています。
ヘルスケア・医療機器
ディスポーザブルな生体センサとしてFHEは拡大しています。
例として、体表貼付け型の心電図パッチやスマートバンデージ(創傷状況の計測と自動アラート機能)などがあります。
一回きりの使用で長時間モニタでき、異形状の身体にもフィットするのは印刷配線、柔軟実装技術の進歩の賜物です。
IoT・インダストリー領域への拡大
近年は工場や物流現場でもFHEセンサが使われ始めました。
例えば、物流梱包の中に“貼るだけ”で温度・湿度・衝撃を記録するIoTタグ、配線しにくい機械の曲面・回転軸表面にべたっと張り付けて設備状態監視を行う振動センサなどが普及し始めています。
また、FHEによる軽量化・省スペース化はドローンやロボティクス、スマートシューズなど「まさに昭和的アナログモノづくりが新たな出口を見つけた」ような現場変革を促しています。
昭和から抜け出せないアナログ業界での課題と新しい地平線
現場目線で語ると、FHEにもいくつかのハードルと挑戦が残っています。
熟練工の“勘と経験”との調和がカギ
FHEは省力化・自動化と相性の良い技術ですが、依然として最終的な品質安定や細かなトラブルシュートでは、現場の“勘所”やアナログ的な観察力が決定的に重要です。
たとえばインクの安定供給、美観やコンタクト部の最終仕上げ、生産途中の微細な欠陥検知には「人の目」「手の感覚」もデジタル化・AI化と並行して重視されています。
設計思想の根本転換が求められる
FHE導入を断念する現場も多い要因に、「既存の設計や調達フローとのズレ」が挙げられます。
配線が自由度高くなることは、部品配置やシステム設計自体まで一から最適化が必要になるのです。
故に、既存量産品の単なる“置き換え”ではなく「ゼロベースで製品価値を定義し直す」戦略が必要です。
調達・サプライチェーンの変革
バイヤーや調達担当にとっても、「部品」「基板」「筐体」の垣根を跨ぐ新たな材料やサプライヤー選定、評価ノウハウが必要になっています。
これまでの“担当分掌型購買”から、「クロスファンクショナル(設計・生産と一体運用)」な購買・サプライヤーディベロップメントへ、マインドセットの大転換が迫られます。
今後の展望:FHEだから拓ける新たな製造業の地平線
ラテラルシンキングで考えるなら、FHEのインパクトは単なる「置き換え技術」に留まりません。
<下記の新しい製造業の未来の提言を示して締めくくります>
「脱フラット設計」で競争力を得る
日本のモノづくりは「フラット」「四角」「直線」に最適化されすぎてきました。
FHEは曲面・異形状・オンデマンドな配線設計という“第三の道”を開きます。
顧客の隠れたニーズ(異分野コラボやパーソナライズ)を掘り起こすための武器となるでしょう。
サプライヤーも“モノ”から“ソリューション”提供者へ
FHEの導入現場では、単なる材料や部品の納品だけでなく、設計・プロセス・品質づくりまでサプライヤーが深く関与する『包括的な価値創出』が求められます。
これまで以上に現場とバイヤーの密なコミュニケーション、リアルな共創が重要になります。
アナログ人材の底力を「デジ化」に融合する
熟練技術者の“現場力”とデジタルファブリケーション、AI・センシング技術との融合ができれば、世界で稀有な「現場起点の新規事業」が生まれるはずです。
現場と最先端のハイブリッドこそが、日本がもう一度世界最前線に立ち戻る鍵です。
まとめ
フレキシブルハイブリッドエレクトロニクスは、製造業の現場、調達担当、サプライヤーすべてに大きな革新と挑戦をもたらしています。
単なる技術進化ではなく、設計・現場オペレーション・調達・サプライヤー関係性にまで及ぶ“地殻変動”と言えるでしょう。
“変わる勇気”を持つ現場が、日本のモノづくりの再成長を強く後押しする未来が、FHEによって着実に近づいています。
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