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取説とラベルの多言語化:法定表示でクレームを回避する表現ガイド

目次
はじめに:多言語化の波と製造業の現場
グローバル市場が拡大する中、日本の製造業も海外展開や多様な人材登用が一層進んでいます。
ビジネスの裾野が広がることで、製品取扱説明書(取説)やラベルの多言語対応は避けては通れない課題になっています。
一方で、業界の現場には「昭和から続くアナログな習慣」が今もしっかり根付いており、変化への戸惑いも散見されます。
本記事では、20年以上製造現場と本社業務の双方に携わってきた立場から、現場目線で「多言語化」と「法定表示」のポイント、さらにはクレーム発生を防ぐための表現ガイドまで詳しく解説します。
なぜ今、多言語化が不可欠なのか
海外規制への対応とバイヤー視点
かつては国内向けの日本語表記さえ守れば良かった取説やラベルも、昨今は事情が異なります。
海外輸出はもちろん、工場や現場の技能実習生などに向けて、英語やベトナム語、中国語など複数言語の表記が求められるケースが増えています。
バイヤーやエンドユーザーからすると、「分かりやすく・正確な情報開示がなされているか」は品質評価の重要なチェックポイントです。
取引先サプライヤーの立場でも、多言語化対応は信頼獲得に直結すると考えてください。
法定表示違反はブランド毀損に直結する
各国で異なる製品規制や法定表示義務が存在します。
もし現地基準への対応漏れで表現ミスや内容の不足が発覚すれば、商品クレーム・回収や社会的信用失墜という深刻なリスクに直面します。
近年はSNSやレビューサイトの影響力も強まっており、一度広まったネガティブ評価は簡単に消えません。
「少し分かりづらい日本語説明」や「翻訳の誤り」も、大きな火種になることを現場では意識しておきたいところです。
現場で起こりがちな表現トラブルとその実例
1. 技術翻訳の質に要注意
よく耳にするトラブルが、「直訳・自動翻訳による誤った表現」です。
例えば、
「必ず電源を切ってから作業してください」
この一文も、直訳では
“Please finish the work after cutting the power.”
となりがちですが、英語圏の現場では「絶対的な禁止」を意味する表現や順序の厳密な指示が伝わりきりません。
意図が誤解され、事故やクレームに直結するケースも見られます。
2. 法定表示の漏れ・過不足問題
各国には「ラベルへの最低限の表示事項」が細かく定められています。
日本で義務化されていない成分や、ピクトグラム(絵表示)を求められる事例、日本語独特の安全警告マークが現地では意味不明な場合もあります。
昭和から続く「前例踏襲のコピペ系列」はとくに危険です。
古い版のラベルや説明書をそのまま流用したため、「肝心の新基準が反映されていない」、もしくは「余計な情報が混ざっている」といった問題が絶えません。
3. アナログ文化の落とし穴
「上司のハンコがあればOK」
「昔からこれで問題なかった」
そんな言葉が現場では根強く残っているのも現実です。
しかし、多言語化には「裏付けとなる論拠」が必須となります。
誰が、どの根拠をもとに、どの言語でどう翻訳したのか。
ここが不明瞭だと、トラブル時の説明責任が果たせません。
クレームを未然に防ぐ多言語表示のポイント
1. シンプルで一義的な日本語化の徹底
多言語翻訳の前提は、「日本語版原稿そのものが論理的に明確か」です。
現場でありがちなのが、曖昧な表現や冗長な説明です。
「十分に注意して作業してください」のような曖昧な指示は翻訳による解釈に幅を持ち、不適切な使われ方を誘発します。
まずは、一次原稿としての日本語版取説またはラベルの簡素化・論理的再構築を現場主導で徹底しましょう。
2. 対象国ごとの法定記載項目リスト化
これは生産管理や品質保証の作業フローとしても有効です。
対象となる各国の法定表示義務、必要な漢字・用語・ピクトグラムなどを一覧化し、「漏れ」や「誤解」の発生リスクを下げます。
監督官庁や現地代理店を通じ、最新の法改正・制度変更情報の管理も重要です。
3. プロによる技術翻訳とネイティブチェック
直訳やWEB自動翻訳では「ニュアンス」と「現場で通じる技術用語」が伝わりません。
少なくとも現地技術者やバイリンガル担当者による編集作業を必ず挟むべきです。
また、各国のクレーム事例や裁判例を収集し、リスクの高い表現パターンは避ける工夫も必須です。
4. QA対応まで視野に入れたドキュメント管理
取説やラベルは「作れば終わり」ではありません。
万一クレームが発生した場合に、対象製造ロット・バージョン・翻訳責任者などを迅速に証明できる体制が必要です。
現場と本社管理部門が連携し、改訂・配布・設置履歴まで含めてドキュメント管理を徹底しましょう。
業界動向:多言語化と自動化の交差点
アナログ文化からデジタル管理へ
近年、多言語ラベルや取説の作成・管理を、AIやクラウドのツールと連携する企業が増えています。
従来は紙の台帳やエクセルに頼りがちだったドキュメント管理も、今やクラウド型の原稿管理システムで一元化する動きが加速しています。
現場サイドからすると、「面倒な事務作業が増える」と感じがちですが、一度仕組み化すれば再利用・流用が容易になり、取引先ごと、輸出先ごとに柔軟なカスタマイズができるようになります。
AI自動翻訳の使いどころ
AI自動翻訳も精度が向上していますが、「ドラフト作成」までと割り切って使うのが現場では無難です。
最終的な校正や、実際に現場で使われる用語・表現のチェックは、やはり人の目で行うことが品質保証の重要な一歩といえるでしょう。
サプライヤー・バイヤー双方に求められる視点
サプライヤー視点:「クレームを起こさない製品情報設計」
サプライヤー側が多言語化対応に前向きであるほど、バイヤーやエンドユーザーからの評価は高まります。
「法定表示+現場で使える説明」をセットで提案すれば、クレーム発生時の責任の棲み分けもしやすくなります。
また、バイヤーの最新評価項目やクレーム傾向を自主的に収集・共有する「自社品質新聞」的な取り組みもおすすめです。
バイヤー視点:「なぜその表示が要るのか」現場確認の徹底
バイヤー側としては、サプライヤーが持ってきた「現地言語取説」やラベルの内容が本当に現地規格に合致しているか、自社現場の技能実習生や現地スタッフが十分に理解・活用できる内容か、現場の検証が不可欠です。
様式や体裁だけで判断せず、現場からの「ヒヤリハット集」やクレーム実績を積極的にフィードバックしましょう。
まとめ:現場力×知識で新しい地平線を切り開く
取説やラベルの多言語化は、たんにコストや手間が増えるだけの「義務」ではありません。
その背景には、現場の人命や品質を守り、ブランド価値を守るという企業の根本的責任が隠れています。
昭和のアナログ文化から一歩踏み出し、現場目線のシンプル化、法定要件の見える化、効果的なツール活用――。
20年以上現場に立った経験から断言できるのは、こうした「一手間」が確実にクレームゼロ・現場力向上につながるということです。
多言語化=コストではなく、多言語化=信頼獲得・ビジネス拡大のスタートと捉え、今一度自社の対応レベルを見直すきっかけにしていただければ幸いです。
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