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トラブルを起こさないための海外調達の進め方とサプライヤ管理および実践のポイント

目次
はじめに:グローバル時代における海外調達の重要性
グローバル化が進む現代の製造業において、海外調達はもはや避けて通れない戦略の一つになっています。
コスト削減、商材の多様化、供給リスク分散など、国内調達では得られないさまざまなメリットがある一方で、言語・文化・商習慣の違いや品質トラブル、納期遅延など、特有のリスクや障害が立ちはだかります。
特に「昭和」的なアナログな体質が色濃く残る業界では、FAXや電話が未だ主流、紙ベースでのやりとりと属人的な管理に頼る場面が多くあります。
本記事では、20年以上にわたる製造業経験と現場マネジメントの視点、そして現場でいかにしてトラブルを防ぎ、成功する海外調達とサプライヤ管理を実践できるかを、具体的なポイントを交えて解説します。
海外調達の主なリスクと現場視点での課題
文化・言語の障壁が生む情報伝達ミス
基本的なカタログ品ならともかく、カスタマイズ品や技術的な仕様が細かい部品では、翻訳によるニュアンスのズレや、現地スタッフとの理解のずれが重大な問題となります。
日本の「察する文化」が通じず、何も言わずに進めると、思いがけない品質トラブルが発生します。
品質基準・生産管理レベルの格差
日本の製造現場では「不良ゼロ」が強く求められますが、海外サプライヤでは「2~3%は許容範囲」と考えるケースも珍しくありません。
このギャップが、検品や納入後のトラブルの元となります。
納期遅延と物流リスク
海外サプライヤでは、原材料不足、ストライキ、コンテナ不足、港湾トラブル、税関申告の遅延など、予期せぬ要因で納期遅延が頻発します。
さらに時差や長距離輸送が絡む分、初期トラブルの火消しにも日本国内より数倍の時間とコストがかかります。
アナログな書類・属人的管理による情報ロス
いまだに紙の注文書、FAX、Excel管理が幅を利かせる現場では、担当者ごとの経験やカンに頼った調達になりがちです。
人的入れ替えや属人化が進むと、過去トラブルの再発防止策も継承されず、同じミスを繰り返す危険が高まります。
トラブルを防ぐ海外調達の進め方
徹底した事前調査と現地訪問の重要性
現場目線で最も重要なのは、「カタログやWeb情報だけを鵜呑みにしない」姿勢です。
サプライヤ候補が決まったら、実際に現地工場を訪問し、生産ライン、品質管理体制、従業員のスキル、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の徹底度などを自分の目で確認しましょう。
チェックポイントとしては、以下の点が挙げられます。
・工場の清潔さ、標準書やSOP(標準作業手順書)の有無
・現場リーダーや品質管理担当者との対話で意思疎通力を計る
・過去の不良・クレーム対応の具体的な履歴を見せてもらう
・出荷検査工程や管理状態を具体的にヒアリング
これらを怠ると、後々の大トラブルに直結します。
仕様・要求事項は「見える化」と「多言語化」で統一
製造図面、標準仕様書、品質基準など、要求事項は全て「翻訳」だけでなく「現地スタッフが理解しやすい表現とフォーマット」で共有しましょう。
例えば、「NG例」「良品の写真付き基準」など、視覚的に伝わる資料を用意し、現場で理解度をチェックします。
メールやチャットのやりとりも、できれば英語と現地語の両方で説明し、トラブルの芽を事前に摘み取る工夫が必要です。
段階的な品質チェック体制の構築
初回ロットや試作段階では、日本側が現地に立ち会い、出荷検査の手順・基準を指導するのが理想的です。
量産フェーズに入っても、定期的なサンプル検査、第3者検品会社の活用、SKUごとの全数検査や抜き取り検査など、リスクに応じたレイヤー型のチェック体制を敷きましょう。
また、不良発生時には「なぜ?」を掘り下げる現場ヒアリングと、再発防止の具体策を文書化して管理することが肝要です。
サプライヤとの信頼づくりと関係強化
海外調達は価格面の交渉だけで決めてしまうバイヤーが多いですが、実際のトラブル対応で最もモノを言うのは「現場での信頼関係」です。
感情的な対立や「できない理由」を問詰めるだけでなく、「なぜできなかったのか」「どうすれば回避できたのか」をともに考えるスタンスが、結果的に柔軟な協力体制につながります。
時には、現地の法令・就業習慣、宗教上の慣習も理解し、素直なコミュニケーションを心掛けるのが長い目で見たサプライヤ管理には不可欠です。
サプライヤ管理の実践ポイント:現場で役立つ具体策
評価制度とフィードバックの「定量化」
品質・納期・コスト・対応力・改善提案数など、サプライヤごとに年次・半期ごとの評価指標を設けます。
評価内容はなるべく定量的な数値(不良率、納期遅延件数、標準対応時間、コストダウン実績など)で示し、点数やランク付けでわかりやすくフィードバックします。
評価結果は、工場の現場リーダークラスまで落とし込み、「我が社にとって何が高評価ポイントか」を伝達すると効果が高まります。
属人化を防ぐドキュメント管理とナレッジ共有
発注から納品、品質トラブル、改善活動まで、全てのやりとり・経緯は必ず電子データで保存しましょう。
「前年にどんなトラブルがあったか」「その時どう解決したか」に関する記録を、現場・購買部門・品質部門・営業部門で共有することで、異動や担当者変更時もノウハウの継承が可能になります。
可能ならサプライヤごとのデータベースを作り、関係者間でリアルタイムに情報共有できる仕組みづくりを目指しましょう。
「3現主義」と「現物で確かめる」姿勢の徹底
日本の製造業で伝統的に言われる「三現主義」—現場・現物・現実—は海外調達でも重要です。
書類・報告書だけで判断せず、少しでも懸念があれば必ず「現地現物」を自分の目で確認する、「必要なら現地スタッフにスマホで生産現場をリアルタイム中継してもらう」なども有効です。
この一手間が、取り返しのつかないトラブルを防ぐ「最後の砦」になります。
持続的な改善(カイゼン)活動の仕組み化
サプライヤ管理は「改善して終わり」ではありません。
納期や品質で小さな不満が出た場合も、「なぜそれが起きたのか」「どうすればよりベターな形になるか」を現場巻き込み型で話し合うことが大切です。
「月ごとの改善テーマ」や「現地改善提案制度」を設置し、改善効果を数値化して高評価につなげるPDCAサイクルに取り組めば、サプライヤの自発的成長も期待できます。
アナログ現場でもできる海外調達管理のデジタル化
ExcelベースのVBA管理/クラウド表計算の活用
現場での作業管理や不良履歴も、ExcelのVLOOKUPやピボットテーブル、VBAマクロなどを活用して「見える化」しやすくなっています。
予算が許せばGoogleスプレッドシートやOutlook連携によるクラウド化、メール自動転送、アラート設定などで、複数担当者のコミュニケーションを円滑にできます。
簡易的なコミュニケーションツールの導入
英語や現地語チャットが難しい現場では、LINEやWechatといった無料のチャットアプリで写真や動画送信も活用しましょう。
案件単位のグループチャットを設け、納期や進捗トラブルの「速報共有」ができる体制も整えられます。
サプライヤの立場から考える「信頼される海外調達」
バイヤーの意図を正しく理解し、能動的な提案を
サプライヤ側からは、バイヤーが何を求めているか(コスト重視、納期重視、品質重視、カイゼン提案など)の優先順位を正しく掴むことが肝要です。
単に「言われたことをやる」だけでなく、「こう改善したらもっと貴社に貢献できます」と能動的に提案することで、頼れるパートナーとしての信頼度が飛躍的にアップします。
トラブル発生時の迅速・透明な報連相
ミスや不良が発生した際、「隠し通す」「日本に着いてから報告」では大きな信頼損失につながります。
一方で、早期報告・根本原因究明・対策および進捗報告までをワンセットとして対応できるサプライヤは、長期的な関係構築で大きく差がつきます。
まとめ:海外調達とサプライヤ管理は「現場力と仕組み化」が要
海外調達の現場では、思いがけないリスクや文化の違いに何度も直面します。
しかし、「現場での確認」「明確な基準と情報共有」「信頼関係の構築」「データと改善の仕組み化」に注力することで、トラブルを事前に防ぎ、持続的な成長に繋がります。
昭和的なアナログ現場であっても、地道な改善とデジタルの取り入れで、海外調達はより強力な武器になります。
本記事の実践的ポイントが、これから海外調達に挑む方、バイヤーを目指す方、サプライヤの視点でイノベーションを起こしたい方の一助になれば幸いです。
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