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設計不具合の分析と改善および未然防止の実践事例

目次
はじめに:設計不具合は避けられない現実
製造業の現場では「図面どおり作ったのに、なぜかトラブルが発生する」という声を何度も耳にします。
経験豊富な技術者であっても、設計不具合が全く発生しないということはありません。
なぜなら、設計そのものが複雑化しているうえ、市場や顧客の要求も日々変化しているからです。
しかし、設計不具合は未然に防ぐ、もしくは発生後に迅速に分析・再発防止策を講じることで、企業の競争力向上に大きく貢献します。
本記事では、現場目線で設計不具合の分析・改善、そして未然防止の実践事例を掘り下げて紹介します。
バイヤーやサプライヤー、製造業に携わる方にも役立つ内容を、業界のアナログな風潮にも触れながらお伝えします。
設計不具合が発生する主な要因
1. コミュニケーション・情報伝達の齟齬
依然として多くの製造現場では、口頭やメール、さらには紙ベースの仕様書がベースとなっているケースを見かけます。
設計部と現場、生産技術部門、品質管理部門などの間で情報伝達がスムーズにいかず、要件が正確に伝わらないまま開発が進むことが、しばしば不具合の温床となります。
2. 設計審査の形骸化
「設計審査=儀式化」している企業は、いまだに多いです。
本来なら設計審査(DR:Design Review)は、複数の目で設計の妥当性やリスクを確認・指摘する重要なプロセスですが、単なるチェックリストの消化になってしまいがちです。
3. 経験・暗黙知への過度な依存
熟練者の経験値は重要ですが、設計の勘や過去の成功事例のみを頼っていると、新材料や新工法のリスクを見落としがちです。
とくに、昭和から続くアナログ文化の強い企業ほど「昔ながらのやり方」を重視し、「なぜ?」を深掘りしない傾向が根強く残っています。
4. 市場・顧客要求とのズレ
市場要求や顧客要望は常に変化しています。
設計初期段階での要求仕様の落とし込みが不十分だと、最終段階で「こんなはずじゃなかった」という齟齬が生じ、手戻りや再設計による不具合発生へとつながります。
設計不具合の現場分析 ~実践的な進め方~
1. フィールドでの状況把握
現地・現物・現実を徹底する「三現主義」は、設計不具合解決の基本です。
現場で不具合が発生した際、設計者自らが現場に足を運び、製品や部品を手に取って観察します。
実際の使われ方、寸法誤差、組み立て状況、工程での取り回しに至るまで、現場の声を吸い上げて初めて真因が見えてきます。
2. QCストーリー・FMEAの活用
問題発生時にはQC7つ道具やFMEA(故障モード影響分析)などを駆使し、不具合の発生メカニズムを「見える化」します。
例えば、工程フロー図や特性要因図を用いて、設計段階で想定されていなかった変動因子・リスクを抽出します。
3. クロスファンクショナルチームでの解析
設計・生産・品質・調達といった部門横断で「なぜ?」を5回以上繰り返すことがポイントです。
単なる設計ミスの指摘以上に、「なぜこの情報が伝わらなかったのか」「なぜ実際の工程では違う挙動を示すのか」など、多角的・ラテラルな視点で原因を深堀りします。
4. サプライヤーや外部パートナーとの連携
一部の部品や工程を外注している場合は、サプライヤーともリアルタイムで情報を共有します。
図面の仕様書だけではなく、製作意図や「使われ方」まで共有することが、不具合の迅速な原因特定と再発防止につながります。
未然防止のための設計改善アプローチ
1. 初期流動段階での設計DRの徹底
製品設計の初期段階に「設計狙い」「設計ルールの逸脱」「過去の不具合再発防止策の反映」という3点セットを徹底チェックします。
このとき、「形骸化」の罠に陥らないよう、現場・調達・品質の各部門の現役担当者が参加し、「机上の空論」で終わらせず、失敗例・部品点数削減の観点などリアルな指摘が飛び交う場とします。
2. シミュレーション・デジタルツインの積極導入
近年の設計現場では、CAE(構造解析)や3Dシミュレーションを用いて、試作前に仮想空間上で不具合の予兆を捉える動きが拡大しています。
これまでアナログ主流だった工程でも、手戻り削減や設計リードタイム短縮に繋がっており、とくに人手不足や納期短縮要求が強まる現在、大きな武器となります。
3. 標準化とナレッジ共有の仕組み化
過去の不具合事例やヒヤリハット情報を「ナレッジ」として積極的に蓄積し、検索・参照できる環境を整えます。
例えば、設計部門内専用のデータベースを立ち上げ、「同じ轍を踏まない」ためのヒントや類似案件のトラブル例を設計DR時にフィードバックする仕組みです。
アナログ業界でも、エクセルや社内イントラを上手く活用すれば十分に現場に活かせます。
4. サプライヤーへの設計意図共有と早期巻き込み
調達バイヤーやサプライヤー担当者は、コスト・納期だけでなく、製品・部品の設計意図や使用条件もきちんと理解することが重要です。
発注前から図面や仕様だけでなく「顧客がどのように使うか」「過去のトラブル事例」も共有し、設計段階から品質の作りこみを実現することが、未然防止の要となります。
現場目線の実践事例:設計不具合防止への取り組み
事例1:小型モーターの軸ずれ対策
某精密機器メーカーで、組立工程後に小型モーターのシャフトが意図せずずれるという不具合が頻発しました。
現場分析を進めると、図面指示の寸法公差は満たしていましたが、部品同士の噛み合わせで応力が集中し、熱膨張時に精度が維持できないことが判明。
このケースでは、設計部が現場ヒアリングを重ね、部品同士の接触面処理や素材変更、さらにはシミュレーションによる「使われ方」再現を実施。
調達先にも対策意図を明確に伝えることで、全社的な再発防止、さらには歩留まり向上・コスト低減にもつながりました。
事例2:海外拠点との設計情報ズレ解消プロジェクト
グローバルに展開する企業で、海外工場と日本本社間の設計情報伝達ミスから、不良品ロットが出荷されました。
原因は、設計変更情報が紙ベースのFAXでしか伝達されていなかったこと。
各工程ごとに変更点・改訂履歴を「見える化」したデジタル連携を推進し、リアルタイムで共通図面が参照できる仕組みを導入。
現地の品質保証と週1回のWebミーティングを定例化して、設計意図や顧客要望が適切に現場へ伝わる基盤ができました。
バイヤー・サプライヤー視点で求められるポイント
バイヤーを目指す方やサプライヤーの立場では、「不具合原因の本質追及」や「再発防止への関与」がますます重要です。
単なる価格交渉や納期管理を超え、技術的なディスカッションに積極的に加わり、設計・調達・現場をつなぐ“ハブ”としての役割が高まっています。
サプライヤーは、設計意図や顧客期待値を的確に把握し、「やらされ感」ではなく「提案型トラブル未然防止」を目指すべきです。
まとめ:設計不具合ゼロは夢ではなく現場の工夫しだい
設計不具合をゼロに近づけるには、設計部門だけでの努力では限界があります。
品質・現場・調達・サプライヤーが一体となり、“共創”のスタンスで問題解決・未然防止を目指すことが欠かせません。
昭和的なアナログ文化も否定せず、現場の知恵やナレッジを新しいデジタル手法と融合させてこそ、日本の製造業のさらなる飛躍につながるのです。
製造業で働く皆さん、バイヤー・サプライヤーの皆さんも、自分の現場で今日から実践できる小さな改善に、ぜひチャレンジしてみてください。
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