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投稿日:2025年6月21日

アクチュエータ技術と制御および高機能化への応用

アクチュエータ技術の進化と製造現場への波及

アクチュエータとは、電気や油圧・空圧などのエネルギーを「動き」に変換する装置のことを指します。
製造現場では、機械の自動化・省力化・品質安定化を支える非常に重要な役割を果たしています。
昭和時代から、油圧・空圧式のシリンダーやモーターが主流として使われてきましたが、近年のデジタル化やIoT化の進展により、アクチュエータ自体も大きく進化しています。

また、工場の自動化やスマートファクトリー化が世界的なトレンドとなる中で、単なる動作装置から「高機能化」が強く求められるようになりました。
この記事では、アクチュエータ技術の現場目線での進化、最新制御技術との連携、高機能化への実践的な応用を深く掘り下げて解説します。

アクチュエータの基礎と現場ニーズの変遷

製造現場を支えてきた3つのアクチュエータ方式

まずは、アクチュエータの基本的な種類と、それぞれの特徴を理解しましょう。

  • 油圧式アクチュエータ:高トルク・大出力が必要な現場で重宝される。プレス機や射出成形、建設機械などで定番。
  • 空圧式アクチュエータ:クリーンルームや工程間搬送、組立工程で多用。反応性がよく比較的廉価。
  • 電気式アクチュエータ:サーボモーターやステッピングモーターを用い、高精度位置決めや速度制御に適合。最近は静音・省エネ面でも注目。

昭和時代から多くの現場でこれらが使い分けられてきました。
コストと安定性を優先し、実績重視でアナログな仕組みが長く根強く残るのも製造業の特徴です。
しかし近年は生産ラインのフレキシビリティや多品種少量生産への要求品質向上、IoT活用推進によって求められるニーズも急速に変化しています。

最新アクチュエータ技術の登場と現場への波及

2010年代以降、以下のキーワードが現場で語られるようになっています。

  • サーボ化(インテリジェントモーター)
  • ロボット組込型アクチュエータ
  • バルブレス・配管レス設計
  • スマートメンテナンス対応(状態監視/自己診断)

これらの技術は、従来では難しかった「微細な位置制御」「工程データの収集」「ダウンタイム削減」といった現場課題の解消に威力を発揮します。
とくに大手自動車・電子部品メーカーなどグローバル競争の激しい分野ほど、新技術の導入が加速しています。

制御技術との連携 ― 「現場」を知る人間だけが語れる観点

PLC/シーケンサとの連動が生み出す効果

工場の制御機構は長らくPLC(プログラマブルロジックコントローラ)が王道でした。
従来のアクチュエータは”動かす・止める”だけが役割であり、アナログな制御が主流でした。

ところが、インテリジェントアクチュエータ(サーボモーター内蔵型やエンコーダ搭載型)の台頭により、「PLC+アクチュエータ」の制御連携が格段に進化しています。

具体例として、

  • 多軸搬送システムでの加減速ハンドリング
  • 搬送ロボットのパス最適化
  • ウェブ(フィルム等)のテンションフィードバック制御

は、単なる「ON/OFF」ではなく、絶えずPLCからの指令値に応じてアクチュエータが柔軟に応答し、生産性・品質の両面で大きな成果をもたらします。

データ収集・予知保全を生む通信機能

最新のアクチュエータには、状態監視用のセンサーや通信モジュールが組み込まれているものが増えています。
Ethernet/IPやProfiNet等のフィールドネットワークを通じて、「動作回数」「負荷変動」「異常発生予兆」などのデータをリアルタイムで管理。
保全員による定期点検だけに頼らず、”壊れる前に”アクチュエータ自らがSOSを発信する仕組みが普及しています。

これにより、突発故障によるライン停止リスクが大幅低減し、現場の安心感や生産効率が格段に向上しています。

アクチュエータ高機能化 ― コストと安全性、環境性能の両立

多品種少量生産を可能にする「多機能化」

近年の製造現場では、同じラインでさまざまな製品を切り替えて生産する「多品種少量生産」が大前提となりつつあります。
これを実現するために、アクチュエータ自体に記憶機能・自動調整機能が求められます。

たとえば、可変ストロークシリンダーや、アクチュエータに複数レシピを登録し、自動で切替運転を行う機能です。
これによって、ライン再構築や治具変更が最小化され、ダウンタイムやセットアップ時間の抜本的な短縮につながります。

コスト低減とエネルギー最適化 ― 未来志向型の投資視点

日本の製造業はコスト競争力の維持が絶対課題です。
最新アクチュエータは、省エネルギー設計により消費電力量の削減や、効率化によるユーティリティ費用低減を実現しています。
また、バルブレス化・配管削減により初期投資も縮小でき、部品点数の削減は在庫管理や調達コストにも直結します。

やみくもな新規投資ではなく、設備投資の”回収見込み”や”スケールメリット”を多角的に評価することが必要です。
現場担当者・調達バイヤーともに、ROI(投資対効果)やTCO(総保有コスト)を踏まえた意思決定が重要となります。

安全・環境性能を高める欧州規制対応

グローバル化の進展により、CEマーキングやRoHS、REACHといった欧州由来の各種規制対応も必須事項です。
安全リレーとの連携や、バルブ・アクチュエータ単体の機能安全認証、省エネ設計・油漏れゼロ設計なども要求レベルが年々高まっています。

これらの厳しい条件は、バイヤー・現場それぞれのノウハウや、サプライヤーとの情報連携によってクリアする必要があり、相互理解と協調が強く問われます。

バイヤー・サプライヤー間で起こる「思惑」と「現場現実」のギャップ

購買担当(バイヤー)視点:コスト・納期重視の現実

調達購買部門からは、「価格競争力」「安定納期」「在庫リスク低減」「複数調達先の確保」が最優先テーマです。
新しいアクチュエータ技術への投資を提案しても、短期でROIが見込めなければGOサインが出ません。

また、工場長クラスになると、「いかに導入・置換時の”現場負荷”を最小化するか」もシビアな要点です。

サプライヤー視点:技術提案と差別化戦略

サプライヤーは、より高品質・高機能で付加価値のあるアクチュエータを提案し、「他社との差別化」と「長期的なパートナーシップ」構築を目指します。
IoT対応、カスタマイズ案件、グローバル利用サポート、保守対応力などを強調し、現場目線で”困り事”を積極的にヒアリングして差異化につなげます。

しかし多くの現場では、「コスト優先」「現状維持バイアス」「新システム導入への不安」が強く、サプライヤー提案が採用されないケースも少なくありません。

ギャップ克服のために必要な現場リーダーの役割

このギャップを埋めるためには、現場リーダーや工場長が「現場での実証データ」「段階的な試験導入」「具体的な省人化・チョコ停削減実績」を提示し、管理層・購買部門を納得させる工夫が必須です。
また、バイヤーもリスクテイクのバランス感覚と、現場の挑戦意欲に寄り添う姿勢が、長い目で見て良い結果につながります。

アクチュエータ技術の今後と、製造業現場の新たな地平線

アクチュエータ技術は、単なる「動作部品」から、データと知見を集積し工程全体を見守る”頭脳的コンポーネント”へと進化し続けています。

これからの製造業では、IoT・AI・ロボティクスとのシームレスな連携、省エネルギーと高付加価値化の両立がますます問われます。
新技術は現場ノウハウと融合したとき、はじめて真の競争力を生み出します。

日本の製造現場が持つ「現場力」、細やかな改善(カイゼン)の精神に、最新アクチュエータ技術を掛け合わせれば、昭和の遺産をアップデートしつつ新たな地平線を切り開けるでしょう。

バイヤー、サプライヤー、現場リーダー、一人ひとりが情報を共有し学び合い、これからの変革に柔軟に挑戦することが、製造業のイノベーションを支える最大の鍵となるのです。

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