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新たな防爆規格防爆機器設計要求事項製品開発進め方製品企画申請製品化流れ

目次
はじめに:防爆機器市場の進化と背景
製造業の現場には、爆発性ガスや粉じんが発生する危険なエリアが多く存在します。
特に、石油化学、製薬、食品、塗料、ガスなどの工場では、防爆(防爆発)規格に準拠した機器や機械、制御機器が必須となっています。
近年では、IoTやスマートファクトリー化の波が防爆エリアにも押し寄せ、従来のアナログ機器だけでなく、デジタル制御やセンサーなどの先端テクノロジーを持つ防爆機器の開発が強く求められるようになりました。
2020 年代以降、IECExやATEX、国内の技術基準だけでなく、各国の独自認証(例えば中国のCCC認証や北米のFM、CSA 認証)にも対応する必要性が増しています。
これにより、防爆機器の設計、開発、認証取得、製品化に向けてはますます高度な専門性が要求されています。
本記事では、昭和から続く頑強な現場主義と、新たなデジタル化の潮流が混在する製造業の現場目線から、「新たな防爆規格防爆機器設計要求事項」「製品開発の進め方」「製品企画から申請、製品化までの流れ」について詳しく解説します。
ベテラン現場マンにも、バイヤー志望者にも、サプライヤーの立場でバイヤーの”頭の中”を知りたい方にも役立つ実践的内容です。
防爆規格の基礎知識と最新トレンド
主要な防爆規格とは何か
防爆機器を製作・導入するメーカーや工場では、以下の防爆規格や標準を把握し、基準を満たした製品を企画・設計しなければなりません。
– IECEx(国際電気標準会議の防爆規格)
– ATEX(EUの防爆機器指令)
– 国内技術基準(日本の電気用品安全法・防爆指針)
– 北米規格(NEC 500, 505、FM, CSA)
– 国や分野ごとの追加認証(中国CCC等)
設計段階から、「どの規格をターゲットにするか」「どのエリアで販売・使用するのか」を明確にすることが極めて大切です。
現場が直面する“昭和アナログ”な課題
未だに多くの現場では、手書きの防爆区画図や、古い爆発等級クラスをベースに管理が行われています。
また、「運転現場が防爆仕様に精通していない」「設計が認証要件を十分に理解できていないまま設備導入を進めてしまう」といった問題も少なくありません。
一方、市場ニーズは「ワイヤレス防爆デバイス」「スマート防爆センサー」など新領域にも急速に拡大しています。
従来の固定観念にとらわれず、グローバル規格を念頭においた設計・開発のラテラルシンキングが今、求められています。
防爆機器設計の要求事項:本質と実務のポイント
要求事項の本質とは何か
防爆機器設計の最大の狙いは、「意図しない着火源を排除し、爆発性雰囲気下で安全に動作させる」ことです。
そのためには、単に火花や高温部を無くせば良いのではなく、製品全体を通じて“許容できる安全性”を維持することが要求されています。
例えば、
– 外部からの粉じんやガスの侵入をいかに防ぐか
– 内部の電子部品の発熱・スパークをゼロに近づけるか
– 絶縁成績やパッキン、端子カバーの耐久性に問題がないか
– 防爆等級(Ex d/ex e/ex ia等)の要求を満たせているか
といった点を設計要求事項として十分に落とし込む必要があります。
「現場ニーズ」と「規格要求」のはざまで
多くの現場責任者や工場長は、「利便性」「安全性」「初期コスト」のバランスに頭を悩ませています。
導入するバイヤーや工場側は「本当にこの防爆グレードが必要か」「日本の現場には過剰品質ではないか」と慎重になります。
このため、サプライヤー(設計・製造側)は、単なる規格準拠だけではなく、「ユーザー現場の”真の使いやすさ”」と「導入後の保守コストも踏まえた最適解」を提案することが大切です。
現場目線のポイントとしては
– ケーブル接続やI/Oの現場容易性
– プラントでのメンテナンス(分解・点検)のしやすさ
– 長期使用での認証更新やスペアパーツ交換の手順簡便化
– グローバルプラント共通仕様への柔軟対応
などがあります。
製品開発の進め方:実践的プロセス設計
防爆機器のアイデア創出と企画
新たな防爆機器開発は、「どんな未解決の現場課題を解消するか」が起点です。
ユーザー訪問や現場ヒアリング、市場動向リサーチを通じて
– 現場ワーカーが困っていること
– 認証取得やメンテで生じている “モヤモヤ”
– DX化・自動化の波に乗り遅れているアナログ分野
を徹底的に掘り下げます。
企画段階では、
– 強みとなる“独自技術”を加味した付加価値提案
– 現場検証(プロトタイプテストの実施計画)
– 競合製品との差別化ポイント明確化
が重要です。
この段階で、想定される販売国・エリアの防爆規格要件(ATEX, IECEx, 国内 Ex など)を明らかにし、初期設計要件として反映させましょう。
試作・設計決定と認証申請の流れ
企画案が固まると、詳細設計→試作の段階に進みます。
ここでは規格ごとの厳格な要求事項に加え、実機評価もきわめて重要です。
– 部品ごとの発熱量・絶縁距離・耐久性能テスト
– 実際の防爆試験所(TÜV, UL, 日本化学機器試験協会など)での型式認定
– 装置全体の耐圧・浸透・着火源評価
がなされ、
並行して
– 認証用書類(技術ファイル、図面、仕様書)の正確な作成
– 各種言語での安全マニュアル整備
– 当局(経産省や欧州認証機関など)への正式申請
が求められます。
ここで多くの企業がつまずくのは、「設計変更による認証申請のやり直し」「規格要求の誤解」「海外規格との微妙な齟齬(たとえばEx dとNEMAの違い)」「通訳・現地文書の不備」などです。
こうした障害を乗り切るために、現場経験のある技術者のノウハウが活きてきます。
製品化の実際の流れと注意すべき落とし穴
量産化・品質管理・データ維持
正式な認証が得られた後は、量産工程への移行・生産ラインの防爆対応品質管理に移ります。
ここで注意すべきポイントは以下の通りです。
– 認証時と同じな部品・材料を完全維持(小型変更でも再認証リスク)
– 組立工程での静電対策、トルク管理、異物混入防止など
– 検査工程での全数点検/抜き取り検査のバランス設計
– 出荷後のトレーサビリティ管理、定期点検推奨体制
「量産化したら規格対応(Exマーク)が剥がれる」ようなことが最も避けたい事態です。
品質管理部門、製造、生産現場が一体となった体制と、現場教育・ルールの徹底が必要です。
申請後のアフターサービスとサプライヤーの役割
設計・製造側サプライヤーは、「防爆機器のプロ」として「現場に寄り添うサービス提供」を意識することが最も大事です。
– 導入時の立会いや現場指導・教育
– トラブル発生時の迅速な一次分析、現場対応
– 認証維持のための定期案内やリマインダー
– 法改正・規格変更時の情報提供とコンサルティング
こうしたアフターケアや現場密着型サービスこそが、単なる“モノ売り”とは一線を画す信頼獲得の鍵となります。
バイヤーとしても「最大のリスクは現場停止」「規格違反による事故」「無用な過剰投資」といった現実的な懸念を持っています。
サプライヤーなら、現場の“言葉にならない要求”もくみ取り、“目線合わせ”が肝心です。
今後の展望と業界トレンドの変化
防爆機器の世界は今後も、IoT、無線防爆、AI診断、ロボティクス活用、安全遠隔監視などへの進化が続きます。
防爆規格の世界も、伝統的な火花・外殻保護から、
– 電子部品の高密度化対応
– サイバーセキュリティ要求
– グローバル横断認証の合理化
– EXゾーンで稼働する新種ロボットや自律搬送車両の台頭
へとダイナミックに発展しています。
これからの防爆製品開発には、単に「規格通り」にとどまらない、
現場ニーズの本質的理解と、ラテラルシンキングでの柔軟な発想転換が必要です。
サプライヤーであれば、現場管理職やバイヤーの「これで安心」「これには価値がある」という”うなずき”を引き出せる提案力とノウハウに磨きをかけていきましょう。
まとめ:現場目線で新たな地平を切り拓くために
昭和から続く現場力と、最先端のデジタル技術の融合。
そして、グローバル化・多様化する防爆規格・市場要求の両立。
防爆機器製品開発の現場は今、これまでにない大きな転換期を迎えています。
“アナログ業界”の良いところも、新しい発想もどちらも大切にし、
「現場主義」と「変革志向」の両輪で、製造業の未来を築いていきましょう。
この記事が現場に立つあなたの新しいヒントとなり、
サプライヤー、バイヤー双方の新たな価値創出の一助となれば幸いです。
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