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ODM開発で注意すべき“製造国ごとの特性差”

目次
はじめに 〜グローバル調達時代のODM開発を成功させるには〜
グローバル競争が激化し、製造業の現場ではODM(Original Design Manufacturing)開発がますます重要になっています。
ODMはコスト面やスピード面で強みがありますが、一方で“製造国ごとの特性差”への理解と対応がなければ、大きなリスクを抱える結果にも繋がります。
私自身、20年以上にわたり様々な国のODMと協業してきました。
その中で痛感したのは、単純なコスト比較や仕様書のやりとりだけでは決して事は上手く運ばない、という事実です。
本記事では、現場目線から見たODM開発時に注意すべき「製造国ごとの特性差」と、その現場実例、対策について具体的に解説します。
ODM開発における基本的なリスク構造
ODM開発とは何か
ODMとは、製品の設計から製造までを外部委託する手法です。
依頼側(バイヤー)が希望する仕様に合わせ、サプライヤー(メーカー)が設計と生産を行います。
従来のOEM(受託製造)よりも権限移譲の幅が大きく、開発リソースの不足や差別化商品を狙う際の有力選択肢になっています。
ODM開発のメリットとデメリット
メリットは、設計から量産までワンストップで依頼できること、開発投資の圧縮、技術力や設備の活用です。
一方、リスクやデメリットには以下があります。
・品質や納期面のコントロールが弱くなりやすい
・知財流出や模倣リスク
・意思疎通の難しさ
・製造国や企業文化の違いによるトラブル
中でも私は、製造国ごとの特性差が、あらゆるリスクの根底にあることを現場で何度も感じてきました。
以下で実際にどのような違いがあるのか、深掘りしていきます。
製造国ごとに異なる“現場の特性”――実例から読み解く
中国:スピードと柔軟性の裏にある「再現性リスク」
中国ODMの強みは圧倒的な生産スピードと、小回りの効く柔軟な対応です。
例えば、急ぎの仕様変更も「問題ない」と即答してくれる場合が多いでしょう。
しかし、裏を返せば細部の詰めが甘く、再現性の低い“現場判断”で走り出してしまう危険があります。
私が経験した案件では、サンプル品は約束通りの品質で上がったものの、量産に入ると別ラインのオペレーターが「独自工夫」を加えた結果、バラツキや品質低下を招いたことがありました。
中国の現場は「個人技」や「対処ベース」で回ることが多いので、何度も工程監査を繰り返し、現場責任者だけでなくオペレーター教育にも介入することが肝要です。
東南アジア:コスト競争力の裏に潜む「仕様遵守意識」不足
近年は中国からベトナム、タイ、インドネシアと拠点をシフトする流れが続いており、これらの国々はコストメリットが大きいです。
しかし実際にラインを見学すると、作業指示書を「壁の飾り」と認識している現場も散見されます。
現地スタッフは「上司の指示」や「昨日までのやり方」を重視しがちで、技術文書より属人的な運用を優先します。
例えば、原材料変更や小さな設計修正を現地責任者が現場の独断で進めてしまい、気づいた時には“不良の山”になっていた事例も多くあります。
現地への定期的な立ち合いと、現場目線に降りた分かりやすく具体的な作業指示の徹底が不可欠です。
欧州・アメリカ:規則遵守と「仕様厳格主義」の壁
欧米のODMメーカーは、文書化されたルールやプロセス、法規制の遵守に強みがあります。
品質基準や安全規格など、形式上の準拠も非常に高いです。
しかし、逆に「定められた仕様以外は、一切受け付けない」文化があるため、日本流の“現場合意”や“暗黙の合意”が一切通じません。
日本の開発者が「現場裁量」に期待して細かい部分の仕様を口頭で伝えたり、現物合わせで最適化しようとすると、全く進まない、あるいは「その部分は弊社の手配範囲外です」と断られることもしばしばです。
規格通りに事前打ち合わせと文書化を徹底してスタートラインを揃える必要があります。
日本国内:過度な丁寧さと「変化への慎重さ」がボトルネック
意外かもしれませんが、日本企業とのODM開発も必ずしもスムーズとは限りません。
日本のものづくりは世界的に高く評価されている反面、丁寧な確認プロセスや承認フローが多く、意思決定までに時間がかかります。
昭和時代から続く「前例主義」やアナログ的な帳票文化が根強く残り、「DX」や「ペーパーレス」が叫ばれる現代においても、製造現場だけは「紙文化」から抜け出せない場面も多いのが現実です。
特にバイヤーから急ぎの開発案件を依頼された際、社内の承認と品質検証を重ねるうちに、他国のODMが先に市場投入してしまう…というケースも散見されました。
日本国内でも「意思決定の速さ」や「攻めの品質管理」など、時代に合わせた運用の見直しが求められています。
現場目線で導く“国別特性”の活かし方と注意点
共通する注意ポイント
どの国・地域であっても「最初に何を、どこまで任せるのか」という線引きを事前に明文化することが最重要です。
プロセス管理、品質基準、変更ルールなどの「境界」を明確にし、依頼側・受託側の合意を何度も擦り合わせていくプロジェクトマネジメントが肝となります。
また、文化や現場メンバーによる「伝言ゲーム」も思いの他問題になります。
仕様書・工程表・図面といったグローバル共通の“正”を用意しつつ、必要に応じて各国の言語や現地スタッフ向けの「一工夫(例:動画マニュアル)」も効果的です。
ODMバイヤーの視点:「本当に任せて良い範囲」を見極める
バイヤーとしては、「議論のスタート地点をどこに据えるか」が戦略上のポイントです。
全仕様を丸投げするのではなく、「どうしても守って欲しいコア要件」は何か、「多少違っても許容できる部分」はどこかを仕分けしましょう。
現地ODMの開発力や実績を事前評価(工場監査・過去トラブル実績など)することで、無理のない範囲で責任分界点を設定できます。
また、出張やオンライン定例会議で「ライン現場担当者」と直接交流することも重要です。
現場こそ最終責任者であり、机上だけの会議では想定しきれないリスクを事前に察知できます。
これが将来的な品質不良やトラブルの芽を摘み取る観察眼となります。
サプライヤーの立場:「日本バイヤーの本音」をくみ取る姿勢
サプライヤー側としては、顧客(バイヤー)が「何を恐れているのか」「どこに安心感を求めているか」を深く理解する必要があります。
例えば、日本のバイヤーは“型通りのモノ”が納期通りに仕上がり、かつ品質再現性が高いことを最重視します。
トラブル報告や改善活動も、単なる「起きた事実」ではなく、「未然防止の仕組み」まで含めて説明できることが信頼につながります。
更に、現場から見れば“言われたことだけやる”のではなく、予兆を感じて早めに警鐘を鳴らす「提案型ODM」になることが生き残り戦略です。
日本側がDXなどの新技術導入に苦慮している場合は、自社の自動化ノウハウやトレーサビリティシステム導入支援を逆提案する姿勢も差別化のポイントです。
昭和からの脱却と現場力の融合で「新時代のODM開発」へ
現代の製造業においても、一部では古き良き昭和的手法=「現物主義」「阿吽の呼吸」「紙帳票」といった文化が依然残っています。
しかしグローバルODM開発が主流となりつつある今、こうした“手間ひま”と“見える化・デジタル化”をどう融合させるかが新時代の製造力を決めます。
製造国ごとの強み(例:中国→生産性、東南アジア→コスト、欧米→規格準拠、日本→緻密さ)を適材適所で活かす一方、それぞれの“特性差”がもたらすリスクも冷静に管理する時代です。
最新の生産管理や自動化技術を積極活用しつつも、最後は「現場での小さな気づき・先取り」が最も重要という本質は変わりません。
ODM開発のパートナーを選定する際は“安かろう悪かろう”の短絡的なコスト観点だけではなく、製造現場の“行動原理”や“意思決定プロセス”の違いに寄り添うこと、現場視点で一緒に汗を流せるパートナーかをしっかりと見極めることが、今後益々問われます。
まとめ 〜グローバル現場で差がつくODM開発術〜
ODM開発時における「製造国ごとの特性差」を軽視すると、小さな綻びが大きなリスクへと発展します。
これを防ぐには、現場目線から「リアルな運用実態」を把握し、国ごとの特性や文化、習慣を深く理解したうえでマネジメントすることが要です。
調達購買や生産管理の枠を超え、工場長や現場管理者としての視点を取り入れることで、あなたのODM開発はより盤石なものとなるはずです。
この知見が、製造業で働く皆様、バイヤーを志す方、サプライヤーとして成長したい方にとって、世界で戦える「現場力」養成の一助になれば幸いです。
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