OEMによる防災関連ペット用品の開発と需要拡大の背景

はじめに：急増する防災への意識とペット市場の融合

近年、日本を含むアジア地域では地震や台風などの自然災害が頻発し、防災への意識が一段と高まっています。
一方で、ペットの家族化が進み、犬猫をはじめとした愛玩動物の数は年々増加傾向にあります。
この二つの潮流が交わる場所、それが「防災関連ペット用品」市場の成長です。

本記事では、20年以上製造業の現場を見てきた筆者の実体験も交えつつ、OEM（他社ブランドによる受託製造）を活用した防災関連ペット用品の開発背景と市場需要、そして今後の業界展望に至るまでを、現場目線から実践的かつラテラルシンキングで解説します。

なぜ今、防災関連ペット用品なのか？需要拡大の3つの要因

1. 家族としてのペット意識の高まり

ペットは「家族の一員」として認識され、災害時にも人間同様に守るべき存在となりました。
各自治体によるペット同行避難の啓蒙活動や、環境省のガイドライン整備もこの潮流を後押ししています。
また、SNS等で災害時のペット救済事例が瞬時に共有されるため、事前防災のための用品需要が急激に高まっています。

2. 首都直下地震など“大規模災害”想定の強化

過去の東日本大震災や熊本地震以降、「想定外」に備えた対策が官民で加速しています。
企業や自治体はBCP（事業継続計画）を整備し、一般家庭レベルでも具体的な防災グッズの備蓄が進行中です。
その中で、ペット用の防災バッグ・簡易トイレ・給水ボトル・専用キャリー等、多様なカテゴリーでの需要が生まれています。

3. アナログからデジタルへの変革とOEM活用

従来は専業メーカーによる小規模生産かつ、アナログな販路が中心だったペット用品ですが、近年は大手がOEM製造を活用し、斬新な素材やIoT技術を取り入れる動きが活発化しています。
特に、防災用品の機能性と“かわいさ”を両立させた商品はユーザーから高価格でも選ばれやすく、市場拡大の原動力となっています。

OEMによる防災関連ペット用品の開発フロー

現場の声を生かした企画立案

OEM開発のスタートは、現場での「リアルな困りごと」の吸い上げから始まります。
実際の製造現場や販売店から、
「停電時でも使える給水ボトルがほしい」
「避難所でも音を気にせず使えるトイレ用品が欲しい」
といった声が多く寄せられます。
バイヤーや製造現場担当は、それらを詳細にヒアリングし、製品機能やスペックに落とし込みます。

仕様設計とパートナー工場選定のポイント

OEM開発では、サプライヤー側が提案する“既存技術”と、発注元（バイヤー）の“市場ニーズ”とがぶつかり合います。
ここで重要なのは、「技術ありき」ではなく「現場ニーズに徹底的に寄り添う」設計思想です。
例えば、防水機能、耐久性、軽量化、収納性、衛生面のメンテナンス性など、多岐に渡る要素を押さえる必要があります。
また、国内外の協力工場においてISO認証、獣医師監修体制、マスプロダクション時の品質維持など、アナログ業界ならではのきめ細かい管理体制を整えることが欠かせません。

スピード開発と差別化を実現するサプライチェーン改革

防災用品は突発的な需要増が見込まれることから、開発から量産までのリードタイム短縮が命題となります。
OEMならではの“多拠点・多ライン”生産体制を整えることで、柔軟かつ安定的なサプライチェーンを作ります。
また、ただの他社追従ではなく、独自素材（例えば抗菌性素材、軽量高強度素材）や日本発のコンパクト設計など、グローバル市場でも通用する強みを打ち出すことが重要です。

バイヤー視点から見る：OEM防災ペット用品の差別化戦略

消費者インサイトの徹底分析

現代の生活者は「自分とペットを守るためなら、コストは惜しまない」傾向にあります。
それは単なる防災グッズではなく、“安心・快適・おしゃれ”という情緒価値を求めているからです。
バイヤーは、消費者の心に刺さるコンセプト設計や、パッケージ/販促にも現場視点を活かす必要があります。

データドリブンな商品開発

アナログ業界のままでいると、勘と経験だけの商品化になりがちです。
しかし今や、SNSやECでの評判分析、直販サイトからのアクセスデータ、災害発生地域の備蓄動向など、多角的データ活用でユーザー本意の商品開発が可能になっています。
OEMパートナーともデータを共有し、作りっぱなしではなくPDCAサイクルで改善し続ける体制が必要です。

“見えない品質”を伝えるブランディング

OEM商品では「製造元が見えない」という不安を消費者が抱きがちです。
そこで、「日本製」「獣医師監修」「第三者機関での耐久性検証」など、エビデンスを全面に押し出すブランディングが有効です。
また、災害時の使い勝手を疑似体験できる店舗プロモーションや、啓蒙セミナーとのタイアップなど、体験価値を組み込むアプローチも評価されています。

サプライヤー目線：OEMで勝ち残るための提案力とは

バイヤーの本音と課題を先回りで提案

調達部門の現場を長年経験して感じるのは、バイヤーが求めているのは「価格の安さ」だけではなく、
「継続供給の安定性」、「納期の柔軟対応」、「緊急時のBCP体制」など、現場運営にリアルに直結する課題の解決力です。
サプライヤーは、単なる見積り合戦ではなく、「この工程の一部を自働化すれば納期短縮ができる」「代替原材料の在庫を確保している」など、一歩踏み込んだ提案が信頼獲得に繋がります。

“昭和的な現場力”と“最新技術”の両立をアピール

ペット用品分野はまだまだアナログ的な手作業が多い分野です。
品質へのこだわりや生産現場の柔軟対応力は、今も強く求められています。
しかし、昨今はAI・IoTを使った生産管理や、遠隔地でリアルタイムに進捗共有できるDXソリューションも進んでいます。
サプライヤーは、昭和流の“職人芸”に甘えるだけでなく、最新テクノロジーを融合させた現場力を強みに据えることが生存戦略となります。

納品後の「現場フィードバック」を起点にした共創

納品したら終わり、ではありません。
OEMで差がつくのは、エンドユーザーや小売現場から寄せられる実際の“困りごと”をいち早くキャッチし、次の提案に活かせるかどうかです。
例えば、「避難所で実際に使ってみたら音が大きいと嫌がられた」「収納袋の持ち運びに苦労した」等…。
こうした細かな声に、即時で応えられる組織体制と提案力が“繰り返し選ばれる”OEMサプライヤーの条件といえるでしょう。

OEM防災関連ペット用品の今後の展望と業界動向

脱アナログ化によるグローバル展開

日本国内の特殊事情（避難所生活・自治体主導の防災）で磨かれた防災ペット用品は、海外でのニッチ市場開拓にも活かせます。
たとえば、地震に備えたネコ用キャリーや、一時避難時の犬用自動給水システムなどは、アジア全域や欧米でも評価され始めています。
OEMを活用することで、現地特有の認証や流通制度にも柔軟に適応できる点が、日本の中小メーカーにとって大きな強みといえます。

業界横断の共創エコシステムが成長ドライバーに

防災用品×ペット用品メーカーだけでなく、災害情報アプリ、住宅メーカー、物流会社、ITベンチャーなど、異業種との連携による“新機軸”も生まれています。
例えば、「災害発生のプッシュ通知と連動する自動フードディスペンサー」や「ペット識別タグ付き避難所入場システム」など、IoT・AIを駆使した統合型ソリューションも登場しつつあります。

まとめ：OEM活用で市場と現場の“今”に応える

OEMによる防災関連ペット用品の開発は、「現場視点の課題発見」と「現場を超えた新しい応え方」の絶えざる繰り返しにあります。
バイヤーにとっては、市場ニーズに敏感に対応できる柔軟性と、品質・安定供給体制を併せ持つパートナー選定が命題です。
サプライヤーにとっては、現場で泥臭く培った体験値と、データを活用したデジタル提案力の融合こそが生存競争での強みとなるでしょう。
OEMという枠にとらわれず、ラテラルシンキングで“ペットも人も安心できる社会”を、現場から発信していきましょう。