ホテルがオリジナルアメニティグッズを全国展開するためのOEM戦略

はじめに：ホテル業界におけるアメニティグッズの価値

宿泊を彩るアメニティグッズは、利用者の満足度を左右する重要なファクターです。

最近ではホテル独自の体験価値やブランドイメージを高めるために、オリジナルのアメニティグッズ導入を積極的に進める傾向が強まっています。

この動きは大手チェーンだけでなく、地方の中小ホテルや旅館にも広がっています。

一方で、単なる差別化やコストダウンではなく「集客につなげるオリジナル商品」を生み出すためには、製造業としての目線、つまりOEM（受託生産）の戦略構築が欠かせません。

この記事では、昭和から続く伝統的なアナログ体質が息づく製造業の風土と、求められる革新性のバランスを紐解きながら、ホテル業界がオリジナルアメニティグッズを全国展開し、成果を最大化するためのOEM戦略について詳しく解説します。

OEMとは何か？ホテルアメニティにおけるOEMの役割

OEMの基本的な考え方と仕組み

OEM（Original Equipment Manufacturer）は、ホテルやブランド側が企画や仕様決定を行い、その製造を専門のメーカーに委託するビジネスモデルです。

既製品の大量仕入れではなく、ホテル独自のロゴ・デザイン、オリジナル仕様のパッケージや成分を採用することで、ブランディング・差別化を図ります。

この仕組みでは「企画・商品設計」→「試作・承認」→「量産」→「物流・納品」まで、ホテル側とOEMメーカーの密な協力が不可欠となります。

なぜOEMか？ビジネスチャンスとホテルの差別化

アメニティは使い捨てが前提ですが、「使い捨てされない思い出」としてホテルの顔になる可能性があります。

実際、「あのホテルのシャンプーが忘れられなくてECでリピート買いする」「タオルを土産に持ち帰る」こうしたファンづくりが、企業価値の向上をもたらします。

さらに、全国展開することで仕入れ数量をスケールメリット化し、コスト競争力も向上します。

このような戦略を支えるのが、現場力と提案力を持つOEMパートナーの選定なのです。

オリジナルアメニティ開発のためのOEM戦略ステップ

1. ブランド戦略の明確化とパートナー選定

まず重要なのはホテル自身の「目指すべき体験価値」を明確化し、それを実現できるOEMメーカーを選定することです。

昭和的なアナログ発想では、単に「安く早く作れる」工場を選びがちですが、今や「企画段階から商品開発をリードできるパートナー」の存在が成否を分けます。

製造現場で20年以上経験を積んだ立場から見ても、コミュニケーション力が高く、意見を汲み取りながらも業界動向・法規制や最新素材などを積極提案できる企業が結果を出しています。

例えば、アメニティで今後ますます重要になる「環境配慮設計」（バイオマスプラスチック、再生素材、パッケージレス等）は、現場の技術力・生産設備と柔軟な開発力の両立が欠かせません。

2. サプライチェーンの最適化によるコストコントロール

アメニティの全国展開では「安定供給」と「コスト管理」の両立が重要です。

昔ながらの「単なる仕入先管理」ではなく、多拠点生産（国内と海外拠点の最適配置）、物流拠点の分散によるBCP（事業継続計画）対応など、全体最適を図る視点が必要です。

この点も従来のアナログ業界では「一社集中」や「経験値頼み」になりがちですが、近年ではシステムによる需要予測、データを活用した最適発注など、デジタルと現場力の組み合わせが差を生んでいます。

調達バイヤーの立場から言えば「どのサプライヤーが、いつどれだけ生産・納品できるか」を可視化し、リスク分散しながら品質と納期を安定化させるマネジメントが必須です。

3. クオリティとコンプライアンスの徹底

アメニティグッズは直接肌に触れるものが多く、化粧品や石鹸に関わる場合は薬機法などの規制にも対応が必要です。

OEMメーカー選定の際は「ISO認証」「PL保険加入」「製造プロセス・記録体制」といった品質マネジメントの有無に加え、商品クレームや不正の際のリスクマネジメントまでチェックする必要があります。

まさに、「昭和生まれの技術屋的な勘と経験」＋「グローバル目線のガバナンス体制」の両立が求められる場面です。

ホテル側はプロジェクト開始前から仕様書や設計図・品質基準を明確化し、定期的な現場監査やマスサンプルの確認などでリスクを低減しましょう。

全国展開を成功させるポイント

1. ローカライズより「統一感」あるデザイン戦略

ホテルチェーンの全国展開アメニティでは、単なる名入れやご当地デザインの寄せ集めにとどまらず、「ブランドの世界観がどこでも統一して伝わる」ことが重要です。

例えば、色彩・素材感・ロゴの扱い方などを厳格にガイドライン化し、全拠点で徹底することでSNS映えやお土産需要も向上します。

それにより、リピーター獲得や全国的な販路拡大につながる効果が期待できます。

2. 小ロットからスタートする段階的導入も視野に

いきなり全拠点導入ではなく、旗艦店舗や限定プランでテスト導入し、顧客反応や運用課題を現場スタッフと共有しましょう。

製造業サイドから見ると、小ロット多品種生産にも柔軟に対応できる生産ライン設計（SMED、セル生産導入等）がOEM選定段階で重要になります。

現場のフィードバックを活かしつつ、全国展開時には量産体制へのスムーズな移行ができる設計を目指しましょう。

3. デジタルと現場力の掛け合わせ

ホテル業界もまたデジタル化の波にさらされています。

グッズの在庫管理や発注自動化、使用状況データの可視化、顧客アンケートの即時反映など、ITシステムと現場スタッフの”体感値”を融合させることで、時代の変化に素早く対応できます。

特に、アメニティの発注や補充業務を省力化することで、スタッフの負担軽減やコスト最適化にも大きく寄与します。

バイヤー・サプライヤー双方の視点からみるOEM成功のコツ

バイヤー（ホテル側）が押さえるべきポイント

– 最初から安さだけで業者選びをしない
– 開発段階での柔軟性、各種サポート体制を重視
– サンプル確認・現場監査を定期実施する
– ロット交渉や物流体制の要件を詰めておく

伝統的な業界特有の「なあなあで進む」文化も根強いですが、明文化された契約・仕様を元にパートナー選定することで、後々のトラブルや品質問題、納期遅延などのリスクを低減できます。

サプライヤー（OEMメーカー）が押さえるべきポイント

– 酒席や“付き合い”だけに頼らず最新事例や合理的な提案で信頼を得る
– 不測のトラブル発生時に素早い連絡と代替案を提示する
– 定期的な技術トレンドや規制情報を提供し、ホテル側の課題解決に貢献する

特にサプライヤーは、「〇〇ホテルの実績を元にした提案」や「他ホテルでのヒット事例・売れ筋ランキング」のデータ化によって、バイヤーのニーズを先読みする力が求められます。

昭和アナログの伝統と、未来志向のラテラルシンキング

製造業は、現場力・人間力といった昭和文化を大事にする一方で、今後はAI、生産自動化、デジタルモニタリング等のイノベーションにどう対応するかがテーマです。

アメニティ開発でも、AIによるデザイン生成や、在庫管理の自動化、カーボンニュートラルな工場運営など、多様な視点を掛け合わせることが求められます。

特にラテラルシンキング（水平思考）は「どうせ昔からあるもの」と考えず、「このアメニティでホテル体験が激変する未来」を数字や成功事例、顧客の声など多角的に検証し、既成概念を超えて価値創造する原動力になります。

また日本のものづくり現場の底力は、人と人との密な対話、コミュニケーションから生まれます。

現場の声、職人の技術、バイヤーの困りごとを一つずつ組み合わせ、新しい地平線を開拓してください。

まとめ：OEM活用でホテルブランドを全国に広げる

ホテルがオリジナルアメニティグッズを全国展開するためには、企画段階からOEMメーカーと現場を巻き込むこと、サプライチェーン全体に目配りしたコスト・品質管理、そして何より”自社ブランド体験”を細部まで形作る覚悟が不可欠です。

昭和から続く製造業文化の良い部分を守りつつ、デジタルとラテラルシンキングを活かした新しいアプローチで、価値あるアメニティグッズを生み出しましょう。

それこそが、バイヤー・サプライヤー双方の成長、ホテルブランドの差別化、そして日本の製造業の未来につながるはずです。