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投稿日:2025年7月5日

リチウムイオン電池性能を引き出すBMS最適設計と安全評価ポイント

はじめに:進化するリチウムイオン電池とBMSの重要性

リチウムイオン電池は、今や多くの産業機器、車両、家庭用エネルギー貯蔵システムに広く活用され、その進化は目覚ましいものがあります。

高エネルギー密度、小型化、長寿命という特長が支持されてきた一方で、安全性と信頼性の担保は常に業界にとって大きなテーマでした。

このリチウムイオン電池の性能を最大限に引き出し、安全かつ長期間活用するためにはバッテリーマネジメントシステム(BMS:Battery Management System)の最適な設計と運用、そして精緻な安全評価が不可欠です。

この記事では、現場目線でBMSの設計思想や実践的なポイント、さらに品質管理・調達・バイヤー視点から押さえておくべき安全評価について解説します。

BMSとは何か?基本機能と期待される役割

BMSの主要機能

BMSの役割は多岐に渡りますが、主に以下の機能に集約されます。

– 各セルの電圧・温度監視による過充電・過放電の防止
– バランス回路によるセル間電圧の均等化(セルバランシング)
– 充放電電流の監視と制御
– バッテリー残容量(SOC:State of Charge)、劣化状態(SOH:State of Health)推定
– データロギング・履歴管理
– 異常検知時のシステム保護動作(絶縁制御、遮断等)

製造現場で求められるBMS性能

現場でよく見落とされがちなのは、BMSの長期間にわたる安定動作や、過酷な環境下(高温、多湿、振動等)での信頼性です。

また、バイヤーや品質管理担当者の観点では、BMSの量産安定性・トレーサビリティ・自己診断機能も非常に重要です。

なぜBMSの最適設計が「昭和から抜け出せない製造業」に求められるのか?

日本の製造業現場には、いまなお「勘と経験」(いわゆるKKD)に大きく頼るアナログ文化が色濃く残っているケースが少なくありません。

リソースの限られた生産現場では、新しいテクノロジー導入に及び腰になりがちです。

しかしグローバル競争、市場要求の高度化、「ゼロトラスト」の時代を迎え、BMSの最適設計は避けて通れない現実になっています。

なぜなら、バッテリー製品はBMSの出来によって「安全性」「寿命」「コスト競争力」「メーカーとしての信頼」を大きく左右されるからです。

BMS最適設計の現場ノウハウ

システム要件の明確化とコストバランス

もっとも初歩的かつ重要なのは、最終用途(車載、産業機器、蓄電池システム…)に応じたシステム要件定義です。

バッテリーの特性や評価基準は、用途ごと、顧客ごとに大きく異なります。

それぞれの顧客がどういったリスクを想定し、どこに重点を置いているかを、設計時点で理解することこそ最適なBMSづくりの出発点です。

たとえば車載用途なら冗長性や安全基準の国際規格(ISO 26262など)対応が必須ですが、産業用途や定置型ではエネルギー密度最適化やコスト優先での設計を重視する場合もあります。

ここを見誤ると、オーバースペックまたは逆に致命的な設計漏れに繋がります。

セルバランシングの最前線

リチウムイオン電池の最大活用には「セルバランシング」が欠かせません。

アナログ現場では「手動測定による管理」で済ませていた時代もありましたが、現代BMSでは自動バランス機構と高精度計測データの解析が必須になっています。

分散型(各セルに小さな回路を置く)と集中型(マスターユニットが全セルを管理する)があり、それぞれの採用方針やメンテナンス性も見極めが必要です。

製造現場でよくあるトラブルとして、「バランス制御回路の設計不良によるセル電圧の過大差発生」や「抵抗発熱による寿命短縮」などが挙げられます。

バイヤーや開発担当者は、バランス回路の詳細設計や仕様書に必ず目を通し、不具合時対応や実際の制御アルゴリズムまで掘り下げた理解を持つことが、真の最適設計に繋がります。

線間短絡・過電流対策に効く回路設計

現場で発生する事故・トラブルの多くは、わずかな絶縁不良やリレーの不具合がきっかけで起こります。

特に昭和的な設計文化では「多少の短絡や過負荷には基板強度で耐える」という発想が根強く残っていることをよく目にします。

しかし、近年の高密度高出力バッテリーでは、一度の短絡事故で全体が致命的な被害を受けることもあります。

したがって、FETスイッチやヒューズの冗長設計、絶縁材料・パターン設計の見直し、ソフト面での異常検知アルゴリズムの充実といった「守り」の設計文化への転換が求められます。

この点はどんなに自動化・デジタル化が進んでも、本質的なリスクアセスメント能力が問われる現場力の見せどころです。

安全評価はなぜ最重要か?現場で役立つ試験手法とポイント

代表的な安全評価項目

リチウムイオン電池BMSで必須の安全評価試験には、主に以下のものがあります。

– 過充電保護試験
– 過放電保護試験
– 短絡・過電流試験
– 温度監視・熱暴走防止試験
– 耐振動・耐衝撃試験
– EMI/EMS(電磁ノイズ)耐性試験
– シールド・絶縁耐圧試験

これらの試験を通じ、実際の運用環境を模擬しつつ「想定外」にどう対応できるか、設計レベル・実装レベルで確認します。

購買・バイヤーが押さえるべき評価視点

バイヤーや調達担当が自社仕様のBMSを外部サプライヤーに発注する際、見落としがちなのが「形式認証を取得している=安全とは限らない」という点です。

実際の現場事情を知らずに「カタログスペック」「QC工程表」だけで判断すると、いざ導入時に設備不適合や予期せぬダウンタイムに直面するケースも増えています。

バイヤー自身が基本的な安全試験やリスク評価プロセス(FMEAやFTAといった品質手法)の内容を理解し、サプライヤーとの間に温度感のズレがないか逐一チェックすることが、成熟したものづくり産業への第一歩です。

昭和的な「現場合わせ」はもう通用しない

ひと昔前は「現場で微調整すれば何とかなる」といった柔軟さが日本製造業の強みとされてきました。

しかし、グローバルな責任追及・コンプライアンス時代では、証跡管理や検証可能なプロセス構築が不可欠です。

BMSも同様に、事前に標準化・文書化された評価項目と判断基準、検証データの取りまとめと長期保存といった業務スタイルの転換が急務です。

今後を見据えたBMS戦略:デジタルツインと予兆保全

今後のBMS技術のトレンドは、IoTデータとAI解析の活用による「デジタルツイン」運用や「予兆保全」(予知保全)にシフトしていきます。

これまでアナログな計測や人海戦術で行ってきたメンテナンスや危険予知が、リアルタイムデータにもとづく自動記録・フィードバックに進化します。

サプライヤー/メーカーとしては、バイヤーから要求された「IoT連携」「障害予知」「リモート診断対応」といった付加価値にいかに応えるかが今後の競争軸になるでしょう。

さらに、設計・実装段階でエンドユーザーを巻き込み、現場目線の課題をバイヤー~サプライヤー間で双方向に共有するオープンな風土の醸成こそが、日本のアナログ製造業が新時代に飛躍する鍵です。

まとめ:BMS最適設計と安全評価で、製造業の競争力を高める

リチウムイオン電池の高度化が進むなか、BMSの最適設計と精度の高い安全評価は「顧客満足」「長寿命」「コスト削減」「持続可能性」のすべてに直結します。

製造現場の知見や現場感覚を活かし、最新のデジタル技術・グローバル規格・予兆保全も取り入れることで、昭和的な硬直文化から一歩踏み出し、真の「次世代ものづくり」へと進化していきましょう。

どの立場の方も、「BMSと安全評価が自社の未来を左右する」という意識を持ち、自ら一歩踏み込んで業界標準策定や品質競争の中心に立つことが、これからの製造業の発展にとって不可欠です。

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