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ポケット傘の布地が防水を維持する撥水剤濃度と乾燥工程の最適化

目次
はじめに:ポケット傘に求められる防水性能とその裏側
ポケット傘は、現代人のライフスタイルに合わせて求められ続けている生活必需品の一つです。
小型/軽量で持ち歩きやすく、突然の雨にも対応できる便利さが魅力ですが、その性能の要となるのが「防水性」です。
しかし、どんなに素材が良くても、繰り返しの使用や収納・持ち運びによる摩耗で防水性能は低下していきます。
この優れた防水性の裏には「撥水剤」と「乾燥工程」という、縁の下の力持ちのような製造プロセスが存在します。
現場目線で撥水剤の濃度設定や乾燥工程の最適化にどのような悩みや工夫があるか、実践的な視点から深掘りします。
また、昭和から続くアナログ文化の中での変化や、デジタルとアナログのせめぎ合いが今どう現場に影響しているのかについても言及します。
撥水剤の役割と濃度設定の基本
撥水剤とはなにか?
傘に用いられる布地には、元々水を弾く性質がありません。
そのため多くの場合、ポリエステルなどの布地表面に「撥水剤」と呼ばれる特殊な薬剤をコーティングすることで、水を玉状にはじく効果(撥水性能)を付与します。
この撥水剤は単なる薬品処理ではなく、傘の耐久性・使い心地・見た目に直結する製造上の重要ポイントです。
最適な撥水剤濃度とは?
ポケット傘の布地に施す撥水剤の濃度は、厚ければ厚いほど良いというものではありません。
濃度が高すぎると、布の風合いが損なわれたり、重くなったり、畳みにくくなるなどの問題が発生します。
逆に薄すぎると、短期間で撥水効果がなくなり、製品寿命が著しく低下します。
現場では、1平方メートルあたりに塗布される撥水剤のグラム数や、布地を液体に浸漬する濃度(パーセンテージ)、塗布方法(スプレー法、浸漬法など)まで綿密に検証されます。
また、撥水剤の種類によっても最適な濃度は異なります。
例えば、フッ素系撥水剤であれば薄塗りでも高い効果が得られる一方、シリコーン系やパラフィン系撥水剤の場合はやや高めの濃度が必要なこともあります。
昭和の感覚・職人技と理論値のギャップ
今も根強く残る「勘と経験」の領域、例えば「布地を手で触った時のしっとり感で濃度を見極める」や「水玉の流れ方で見極める」といったアナログなノウハウです。
現代では、これら経験則をデジタル計測(表面張力テスターや撥水度試験機など)で裏付けるハイブリッド運用が主流になりつつあります。
この過渡期に現場で見られるのは、「昭和の職人技」と「定量的品質管理」のせめぎ合いです。
乾燥工程の最適化~品質とコストのせめぎ合い
乾燥の重要性
撥水加工を施した後、布地を「きちんと乾燥させる」ことは単なる工程の一つではなく、撥水剤の効果を決定づける重要なプロセスです。
乾燥が不十分だと、撥水剤が布にムラ付着したり、十分な結着強度が得られません。
逆に乾燥しすぎれば、布地が硬くなったり、薬剤が分解・揮発して撥水性能が低下する恐れもあります。
乾燥条件の最適設計
ポケット傘の生産現場では、乾燥温度(50℃〜100℃)、乾燥時間(数分〜数十分)、温度・湿度制御の組み合わせ、風量調節など、複数要素を調整しながら最適な条件を決定しています。
乾燥設備としては、トンネル式乾燥機、回転ドラム式乾燥機、ラックに吊るして静置乾燥させる昭和昔ながらのやり方など、製造ラインの規模や設備によって方法はさまざまです。
一見地味な作業工程ですが、防水性能・品質ロス・生産コストに直結する“肝”となっているのがこの乾燥工程です。
現場での課題と対策
現場で頻繁に発生する問題の典型は「乾燥ムラ」「布地の変色」「過乾燥による硬化」「ライン内外気温差による品質ばらつき」などです。
これに対して、近年はIoTセンサーの導入により、リアルタイムで乾燥状態をモニタリングし、自動で風量・温度を調整するスマート工場化の取り組みも普及しつつあります。
しかし、中小規模の傘メーカーや下請け工場では、「今年も扇風機だけ」「職人の目視・手触り」など、相変わらず昭和の作業スタイルが残ります。
ここにデジタル技術による効率化・標準化の余地があるのは明白です。
撥水剤処理と乾燥のインタラクション~現場トラブル事例
濃度と乾燥のバランスに失敗した場合の現象
例えば、濃度をケチって節約しようとすると…
→乾燥すると撥水層が生地にしっかり定着せず、最初の数回は水を弾いても、すぐに効果がなくなる。
逆に、濃度を無駄に高めてしまって乾燥不十分だと…
→布の表面にベタつきやムラが発生し、畳む時にくっついたり、使っているうちに撥水剤が剥がれ落ちてしまう。
また、過乾燥しすぎると…
→布が固くなって畳みにくくなり、加工時のアイロン掛けで変色や縮みのトラブルが生じます。
再現性確保と歩留まり向上の視点
傘の品質保証で気を付けるべきは「ロット毎の再現性」です。
撥水剤の調合比率や、乾燥機の設定パターンがぶれると、同じ型番でも性能にバラツキが出ます。
安定生産のためには「設備キャリブレーション」「工程データ記録」「サンプル試験による出荷前検査」が欠かせません。
特にサプライヤー/下請け側の立場では「バイヤーやOEM先が何を重視しているか」を把握して、「安くて品質がばらつく」ではなく、「安定して一定品質を出せる」ことが選ばれるポイントとなります。
“次世代型”傘製造の現場~アナログとデジタルの融合
省力化と自動化の潮流
大手工場では、撥水剤の自動調合ユニットや、AI制御乾燥ラインの導入が進んでいます。
これにより、ヒューマンエラーや職人の勘に頼る比率が確実に低減され、品質の安定やトレーサビリティも高まります。
各工程のデータを一元管理して解析し、「最適条件の自動再現」や「異常値検知アラート」など、IoT技術を使った“スマート工場”化も急速に拡大しています。
一方、全てが完全自動化できるわけでもなく、ポイントではまだ職人の目や手による微調整が生きています。
昭和型現場の良さを残す理由
特にパラソルや、ノベルティ用の特殊傘など小ロット多品種生産では、まだまだ人の感覚が重要です。
「布地の風合い」「色の乗り方」「手触り」など、機械だけでは測定できない“微妙な違い”を読み取る力は、長年の経験と現場感覚の賜物です。
完全な自動化=万能ではないことを、業界内でも認識し始めています。
このアナログの強みとデジタルの効率化をどう統合していくかが、今後の大きな課題です。
バイヤー目線・サプライヤー目線で見る「求められる品質」とは
バイヤーの本音:何を重視しているか?
バイヤーが傘のサプライヤーに求める最大ポイントは「安定した品質」「仕様通りの性能」「コスト適正」「納期厳守」の4つです。
撥水性能はもちろん、耐久性(雨風・摩擦に対する強さ)、色むら、畳やすさ・軽さなど、使用感にも厳しい目が向けられます。
特に量産モデルでは、1ロット内でもバラつきが少なく、クレームや返品リスクを限りなくゼロに近付けることが最低条件です。
サプライヤーが考えるべきこと
「撥水剤の濃度管理」と「乾燥工程制御」は、ライン管理者・品質管理担当にとって“基本中の基本”ですが、ここの手間暇や精度こそが競争力につながります。
また、バイヤーが「品質保証データ」や「現場改善レポート」を求めてくる機会は確実に増えています。
つまり、ベテラン職人の勘に支えられた技術を、いかに“見える化”し、客観的なエビデンスで訴求できるかが選ばれるサプライヤーの条件となるのです。
まとめ:撥水剤濃度×乾燥工程=製品価値向上のカギ
ポケット傘布地の防水性は、製造現場の地味な努力とノウハウの集大成です。
撥水剤濃度と乾燥工程の最適化は一朝一夕には実現できません。
長年培われた職人の経験と最新技術を組み合わせて「品質が安定し、コスト競争力もある」傘を生み出すことこそが、日本の製造業の現場力の真価です。
今後もアナログの良さとデジタルの利点を融合し、バイヤーやエンドユーザーの信頼を勝ち得る製品づくりに邁進していく必要があります。
現場にいる皆さんの知恵と工夫が、日常に溶け込んだ“あたりまえの快適さ”を支えているのです。
そして、その積み重ねが、これからの日本製造業の強みと新たな成長戦略の礎となっていくことでしょう。
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