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日用品の量産コストダウンで工程外注が増える判断の是非

目次
はじめに:日用品業界における量産コストダウンの現状
現代の製造業界、特に日用品の製造現場では、量産によるコストダウンは企業競争力の根幹をなすテーマです。
しかし、そのコスト圧縮の手段として「工程外注」が積極的に検討、あるいは実施されるケースが増えています。
果たしてこの外注化の判断は、製造現場ならびにバイヤーにとって最適解と言えるのでしょうか。
本記事では、現場目線での実践的な課題や、アナログな業界にも色濃く残る課題を踏まえ、これからの時代に求められる“新たな地平線”を提案します。
工程外注が増加する背景とは
コスト圧縮競争の激化
日用品市場の多くは成熟が進み、価格競争がより激化しています。
ライバル企業との差別化が難しくなるなか、各社とも利益を確保するには生産コストの見直しが避けられません。
その手段として単純な部材調達の値下げだけでなく、一部工程の外部委託、つまり「工程外注」を選ぶケースが増加しています。
人手不足と技術伝承の停滞
少子高齢化と人手不足が業界全体で進行する中、現場では技術伝承や人材育成にかけるリソースの確保さえ難しい状況です。
自社で持っていた工程に必要な職人技術や経験値を維持するコストすら、安全・安定供給や品質管理と取引先対応に追われ後回しになることもしばしばです。
その結果、「外部に任せた方が確実で安価」との判断が出てくるのも必然といえるでしょう。
QCコスト・リスク分散の観点
品質管理コストの高騰や、万が一のトラブル発生時のリスクヘッジという観点から、工場内で全てを賄う「オールインワン体制」より、特定工程を得意とする外部パートナーに任せることで分散・最適化を図る動きもあります。
工程外注におけるメリットとデメリット
メリット
1. コスト削減効果
自社でフルライン維持のための設備投資や人件費を抑えつつ、外注活用によりコア工程に集中投資できるため、トータルコストの低減が期待できます。
2. 生産キャパシティの拡張
繁忙期や受注増にもフレキシブルに対応しやすく、ラインボトルネックの平準化を外部パートナーと分担することで生産量の底上げが図れます。
3. 専門技術の利用
自社では持てなかった特殊技術や熟練作業を持つサプライヤーの知見を活かし、高付加価値商品や品質安定化に寄与する場合もあります。
デメリット
1. 品質管理が複雑化
工程分断が生じるため、一貫工程内に比べて管理範囲が拡大し、抜けや漏れ・伝達ミスも起きやすくなります。とくに日本のサプライチェーンでは「ムリ・ムダ・ムラ」を最小化する仕組みが強固なので、その確立が外注先では甘くなるリスクがあります。
2. ノウハウ流出の可能性
委託した工程情報が外部流出した場合、自社の製造ノウハウや知的財産が競合他社へ伝わる懸念も考慮しなければなりません。
3. サプライヤー依存リスク
外注先の経営状況やリードタイム、または物流混乱などで調達・生産ストップの危機にさらされる可能性もあります。
昭和型製造現場の“アナログな誤解”と進化への壁
依然残る属人主義・神話化された現場力
長期間にわたり職人芸や現場オペレータの経験知に依存した昭和型の“職人気質”は、工程外注のプロジェクトでも無言の壁となっています。
「うちのやり方でなきゃダメ」「外部に任せても品質が落ちるだけ」というアナログな“神話”が判断を鈍らせ、デジタル化や標準化の導入を遅れさせている事例は枚挙にいとまがありません。
外注化の議論には「現場力は維持できるか?」という漠然とした不安が根強く付きまとうのです。
現代バイヤーと昭和世代のギャップ
バイヤーは常にコストと納期・品質のバランスを追い求めますが、アナログ現場では“見えないコスト”=余剰在庫や手待ち工数が潜在しています。
目に見えるコスト(外注費)は叩きやすい一方で、ノンバリューな業務の削減やデジタル化推進は「現場が混乱する」と敬遠されるものです。
バイヤーを目指す若手や、サプライヤーの立場でバイヤーの苦悩を知りたい方にとって、昭和的現場と現代バイヤーの“常識のズレ”を把握することが自社提案成功の大きな鍵になるでしょう。
外注化の成否を分ける3つのポイント
1. 標準化とデジタル化の「先取り」
工程外注の前提は、工程そのものが標準化されていることです。
製品設計・試作段階から「どこまでを内製/外注化するか」「どのレベルの図面・仕様で再現可能か」を、現場とバイヤー、エンジニアが一体化して設計する文化が肝要です。
この標準化推進にはIoTやAI活用による可視化、DX推進が避けて通れません。
2. 綿密なパートナー選定と関係構築
単なる“単価安競争”の発想では、長期での品質安定や共創的な成果は期待できません。
パートナー候補先のQC体制や情報リテラシー、技術力、業績安定度など多層的な視点で選定・育成し、ともに改善を目指す「共創型アライアンス」を築くことが、持続的なメリットおよびリスク低減に直結します。
3. トータルサプライチェーン視点のKPI設定
外注個々の原価低減にとらわれず、サプライチェーン全体でのトータルコストや品質、およびリードタイム、在庫圧縮など複数KPIをバランスさせて判断する必要があります。
現場・バイヤー・経営層の合意があってこそ外注化の真の効果が最大化されます。
コストダウン“だけ”を追いかける危険
日用品製造における工程外注は、短期的な原価削減欲求から安易に進むべきではありません。
しばしば「委託費の単価は下がったが、自社のQC負荷やお客様対応コストが爆発的に増えた」「ノウハウが流出し、安値競争に巻き込まれた」という事例が現場では絶えません。
日本の製造業が持つ“職人技”を死守するだけでなく、DXや標準化推進で新たな製造業モデルの再創造が求められています。
バイヤー・サプライヤー、それぞれの現場からの提言
バイヤー目線:価値ある外注化とは
部分的なコストダウンに惑わされず、「外注先で実現できないバリュー」を自社で再定義し直し、内製と外部活用のベストミックスを追求しましょう。
工程の可視化・標準化推進とともに、サプライヤーと真摯に情報共有し合い、消費者・エンドユーザーまで“安心”を届ける体制を最前線からつくっていく意識改革が不可欠です。
サプライヤー目線:期待と備え
単なる低価格提示だけではなく、工程改善や品質安定への独自提案を増やすことで、単発発注ではなく“パートナー”として選ばれるサプライヤーへと進化しましょう。
また、外注体制への安易な移行希望には、リスクポイントや本来改善すべき現場課題の「見える化」も含めて逆提案することで、信頼関係の深化を目指すべきです。
まとめ:アナログ業界の“常識”からの脱却と、未来志向の外注判断
量産コストダウンの大波は今後も日用品業界全体を覆い続けます。
しかし、安易な外注化が長期にわたるリスクと表裏一体であること、「現場の標準化・DX推進という地道な進化こそ将来を守る道」だという本質論を見誤ってはなりません。
バイヤー・サプライヤー双方にとって「工程外注の是非」は問い続けるべきテーマであり、属人的なしがらみや過去の常識に縛られることなく、“正しい外注化”をデータと現場感覚双方から見極めていく必要があります。
今、昭和型から脱却し、「共創する新しい製造業」の新時代を共につくるために、現場目線で思考し行動する、その一歩を踏み出しましょう。