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ASME IX溶接施工法認証の全体像

目次
ASME IX溶接施工法認証とは何か
ASME IX(アメリカ機械学会「ボイラーおよび圧力容器コード」 セクションIX)は、溶接施工法認証(Welding Procedure Qualification)や溶接士認証(Welder Performance Qualification)に関する国際基準のひとつです。
世界中の石油化学プラント、電力設備、重工業、タンク、圧力容器など、多くの産業で要求される認証体系で、現場の溶接品質を客観的かつ高いレベルで維持するための根幹となっています。
日本国内でも製造業のグローバル化が進む現在、ASME IXに基づく溶接施工法や溶接士資格の取得は、メーカー・サプライヤー双方にとって不可欠な要素となりつつあります。
昭和時代から続くアナログな現場対応の文化を脱し、世界標準に追いつくための第一歩としてこの認証の全体像を把握することは、バイヤーとしても、製造現場の技術者としても極めて重要です。
ASME IX認証取得の全体フロー
ASME IXの認証は、単純な資格試験ではありません。
主要な流れを理解しておくことがポイントです。
1. 溶接施工法仕様書(WPS)の作成
まず最初に取り組むべきは、溶接施工法仕様書(Welding Procedure Specification: WPS)の作成です。
これは「どのような溶接材料を使い、どんな条件で、どの工程を踏んで溶接するか」という詳細な手順書となります。
仕様内容には、母材・溶接材料、前処理・後処理、入熱管理方式、溶接姿勢、溶接電流や電圧、パス間温度など、多岐にわたる項目が盛り込まれます。
WPSの作成では、実際に製造現場で働く方の経験や現場事情も重要な判断材料となります。
長年現場で培ってきたノウハウが反映される文書であり、実践的な溶接条件が明確化するため、現場の“暗黙知”を形式知に置き換える作業にもなります。
2. 溶接施工法試験(PQR)の実施
作成したWPSが本当に有効かどうかを確認するため、溶接施工法試験(Procedure Qualification Record: PQR)を実施します。
これは、WPSに従い“試験体”を実際に溶接し、その品質を材料試験や機械的試験(曲げ試験、引張試験、衝撃試験など)で検証するものです。
特に、油圧を受ける圧力容器や重要構造物の溶接では、物理的な内部欠陥や機械的特性の劣化が安全性に直結します。
そのため、ASME IXでは客観的かつ再現性のある試験体験証拠(PQR)が求められます。
現場からすると、材料のロット差異や、技能者の“手クセ”、温度や湿度などの外的条件まで、きちんと記録管理しておくことが後々のトラブル防止につながります。
3. 溶接士資格認証(WPQ)の取得
施工法そのものの有効性に加え、実作業を担当する溶接士(オペレーター)の技能も重要です。
溶接士認証試験(Welder Performance Qualification: WPQ)は、規定された条件下で実際に溶接を行い、作業者個々の力量を評価認証します。
「どんなにいい手順書があっても、作業者の“腕”が悪ければ品質は担保されない」
これは昭和から令和まで現場で繰り返される真理です。
ここでも、JIS資格や社内認定だけに頼らず、グローバルな標準化に応じることが大切です。
現場目線で考えるASME IXの意義と効果
ASME IX認証の価値は、決して単なる“書類上の要件”ではありません。
むしろ、製造業現場がアナログからデジタルへ、個人技能から組織的品質保証へと進化するための“触媒”ともいえます。
1. 「人頼り」を脱却し、品質を仕組み化する
日本の中小・中堅製造業では、「ベテラン溶接工の勘」に頼った生産体制が暗黙のうちに根強く残っています。
ASME IXでは、作業手順そのものを詳細に形式化し、その有効性を客観検証するため、人の知恵を“仕組み”として活かすためのベースが整います。
属人的な品質保証から抜け出せない現場文化を根本から改革するうえで、本認証への取り組みは最良の第一歩となります。
2. 海外バイヤーからの信頼獲得
グローバルサプライチェーンにおいて、ASME IXの有無はバイヤーからの発注決定に直結する大きなカギです。
特に、アジア新興国や欧米市場に進出する際、国際入札案件などでは「ASME IX認証取得の有無」が参入条件となるケースが少なくありません。
バイヤー目線では、“工場の実力”を認証によって外部から見える化できるため、調整コストやリスク低減につながります。
サプライヤー側も、「認証取得済み」という武器を持つことで“お付き合い”に留まらず、積極的な新規開拓が可能になります。
3. 設備投資の意思決定基準に直結
ASME IXに準拠した溶接作業には、温度管理装置や記録用ソフト、高度な検査機器などの設備投資が必要となる場合があります。
しかし一見コスト高に思えるこれらの投資も、“世界基準”の量産・品質体制への移行を促すトリガーになります。
また、バイヤー側としても「どこまでの設備投資を現場に期待できるか」の目安となり、サプライヤー選定の透明性が増します。
昭和的なアナログ現場に残る課題と、今後への示唆
一方、日本の製造業現場には長年にわたり蓄積されてきた“暗黙知”が多くあります。
1. アナログ工程が生む「隠れたリスク」
現場でWPS(施工法)があっても「今日はこんな感じでイケるやろ」や「◯◯さんのやり方で頼むよ」といった、非公式な手順遵守が悪しき慣習として根付いている場合もあります。
こうした現場対応の即応力は一見強みに思えますが、“再現性”や“トレーサビリティ”の確保という観点では国際標準から大きく遅れをとっています。
2. 技能者不足・高齢化の加速
ベテラン職人の退職により、「知っている人がいない」といった状況が起きやすいのが今の製造現場の現実です。
ASME IXのような認証を入口として、「誰がやっても一定品質が出せる仕組み」を構築することは、今後“技術伝承”の側面でも極めて有効です。
3. デジタル技術との融合による生産性向上
WPS・PQR・WPQの作成記録や試験実績をデジタル管理するツールの導入は、品質管理だけでなく、納期コントロールやサプライチーン全体での最適化にも役立ちます。
昭和の帳面管理から脱皮し、世界のスマートファクトリーと同じ土俵に立つことが、今後の成長戦略に欠かせません。
まとめ:現場で今すぐ取り組めるASME IX活用術
ASME IX溶接施工法認証は単なる「輸出案件のための資格」ではなく、現場の品質力・組織力を世界レベルへと押し上げるための最重要インフラです。
現場力を活かしつつ仕組みを整え、グローバルバイヤーや社内ステークホルダーに「見える化」することで、激化する競争環境の中でも存在感を発揮できるはずです。
現場で今すぐできるアクション
- まずは自社で実際に用いている溶接手順が正式に文書化されているかを点検しましょう。
- WPS・PQR・WPQに関する知識を深め、現場の情報共有と教育体制を見直しましょう。
- バイヤーや品質管理担当者とのコミュニケーションを強化し、「なぜ今ASME IXが必要なのか」を現場目線で正しく伝えましょう。
昭和から続く熟練の現場力に、世界基準の標準化とデジタル技術を加味することで、日本の製造業は次の時代に大きく飛躍することができます。
ASME IXはその強力な推進力となるでしょう。
今こそ、自社・自分の“強み”を仕組みで活かす体制を整えていきましょう。
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