投稿日:2025年10月30日

ポケットティッシュのミシン目が切れやすい打抜き圧と刃先角度

はじめに:ポケットティッシュに隠された技術力

日常生活でよく目にするポケットティッシュですが、その使い心地の良さを支えているのが「ミシン目」です。
ティッシュ1枚ずつが簡単に切り離せ、使用時のストレスがないのは、製造現場で精密に設計された「打抜き圧」と「刃先角度」の賜物です。
この一見地味なプロセスには、私たち製造現場の知恵と歴史が詰まっています。

近年、省人化や品質均一化が叫ばれる中、昭和から続く“匠の勘”だけでは生き残れない時代になりました。
しかし一方で、アナログな技術や現場目線の微調整が今なお高品質を支えています。
本記事では、ポケットティッシュの“切れやすい”ミシン目がどのように生み出されているのか、打抜き圧・刃先角度の現場ノウハウ、その裏側に潜むサプライヤー・バイヤー間の駆け引きも交えながら深掘りします。

ミシン目の重要性と打抜き技術の進化

なぜミシン目が「ちょうどいい」と満足感につながるのか

ポケットティッシュのミシン目は、「強すぎても弱すぎてもダメ」という繊細なバランスが要求されます。
ミシン目が硬すぎると、一枚ずつ綺麗に取り出せず、何枚も一度に出てきてしまいます。
逆に弱すぎると、持ち運んだ際や取り出す途中でバラバラになり、品質への信頼感が落ちます。

この最適なバランスをつくるのが「打抜き圧」と「刃先角度」です。
業界では、製紙メーカーや加工メーカーが自社の独自ノウハウを蓄積し、他社との差別化を図っている重要ポイントでもあります。

打抜き圧とは何か ― 圧力の微妙な加減が命

打抜き圧とは、ミシン目を付与する際の「打抜き機」にかかる圧力そのもの。
紙質や紙の厚み、湿度、さらにはテンション(張力)など、さまざまな要素がミシン目の切れやすさに影響します。

製造現場では、ロール状の原紙を所定のサイズにカットしながら、この打抜き工程を入れます。
最適な圧力に調整するため、
– ミシン目の深さ(切り込みの深さ)
– ピッチ(間隔)
– 紙の繊維方向(MD,CD)

そんな微妙な条件を1/100mm単位で調整・管理しています。
この調整が甘いと不良品率が高まり、歩留まりやコストに大きな影響を与えます。

切れ味を決定づける「刃先角度」の秘密

刃先角度がもたらすミシン目の切れ味と耐久性

打抜きに使用される刃物の刃先角度も、現場の要です。
刃の角度が鋭すぎると切れやすい一方で、刃持ちが悪く頻繁な交換が必要になります。
逆に鈍角にしすぎるとミシン目が甘くなり、「繋がりすぎて切れない」という問題が生じます。

一般的に、ポケットティッシュ用の打抜き刃には
– 刃先角度25~35度(鋭角)
– 刃先角度40~55度(中間)
という選定基準があります。

ここには、紙質やティッシュ一枚の厚み、ミシン目の仕様などが考慮されており、サプライヤーはバイヤーであるティッシュメーカーの要求仕様に合わせて最適条件を提案します。
また、刃先角度の調整一つで、同じ打抜き圧でもミシン目の切れやすさが大きく異なるため、両者のバランスが大変重要になります。

なぜ現場対応力が今も重宝されるのか

近年はCADによる設計やシミュレーション技術が発達していますが、紙の微妙なクセ、季節による原紙ロット差など、現実の現場にはデジタルだけでは埋められない“誤差”が存在します。

そのため、今も技能者の「調整力」が品質を大きく左右するのです。
長年の感覚値に支えられて“手加減”で狙い通りの切れ味を量産することが、国内メーカーの強みであり、差別化ポイントでもあります。

現場実践!打抜き圧と刃先角度の調整プロセス

新製品・新ロット立上げ時の調整手順

実際の現場でよくあるのが「新しい原紙の投入」や「新規ティッシュサイズへの切り替え」時の調整です。
以下のような段取りで試行錯誤します。

1. 紙の性状測定(厚み・繊維方向・湿度など)
2. 試し打抜き(標準圧力・標準刃角で一度実施)
3. ミシン目の観察・実用試験(破断テスト 回数・必要力確認)
4. 必要なら圧と角度を微調整
5. 小ロットで流しテスト&歩留まり・品質記録

このサイクルをスピーディに回すことが、現場力です。
不適切な打抜きは、そのままクレームやロス品発生原因にも直結するため、現場スタッフ・工程管理者・開発チームが協調しながら進めます。

昭和のアナログ技術VS現代のデジタル制御

昭和の時代は、現場作業員の勘と経験が重宝されてきました。
一方で、今はデジタル圧力制御や画像検査装置を組み合わせ、ミシン目精度を数値化・可視化する体制も普及しています。

しかし、完全自動化に踏み切れない現場が多いのも事実です。
これは、原紙の違いや設備老朽化、現場での“融通力”と“属人技術”への依存度の高さが理由です。
バイヤー側も「いつも通り、あの品質でお願い」と注文するケースが多く、“昭和のアナログ”と“現代のデジタル”が共存している様相です。

なぜポケットティッシュのミシン目品質にこだわるべきか

消費者満足とブランド価値の向上

近年、消費者は無意識にミシン目の“切れやすさ”や“使い勝手”を評価材料としています。
コンビニのレジ横でもらうティッシュ、街頭配布ティッシュ、販促用など、比較される機会は豊富です。
「このティッシュ、取り出しやすくて使いやすい」と感じてもらえれば、その企業の販促活動もグッと効果的になります。

地味に見えるミシン目精度へのこだわりが、最終的にブランドイメージや対外的な信頼感の向上に繋がります。

コスト競争とのバランスをどう取るか

ポケットティッシュ業界は単価が低い消耗品ビジネスです。
バイヤーはコスト削減にシビアで、「安価な原紙」「ライン速度アップ」をサプライヤーに強く求めてきます。

ただし、その圧力に押され、打抜き圧や刃先角度の調整を怠ると、途端にクレームや返品リスクが爆発。
「高品質・均一性」と「コスト競争」が常にせめぎ合っているのが実態です。

現場に求められるのは「業界水準を守りつつ、ベストバランスの品質を確保する」能力。
試作時のデータ蓄積、PDCAによる改善、ノウハウの可視化が製造現場で重要になっています。

サプライヤーとバイヤーの視点で見る業界動向

バイヤー(発注側)の考え方

バイヤーは「品質」「納期」「コスト」「安定供給」のバランスに敏感です。
特にミシン目精度に関しては、商品のブランドイメージを左右するため、発注仕様書で“歩留まり率99.9%”など極めて高い数値目標を設定してきます。

サプライヤーにとっては大変ですが、こうした厳しい要求が現場のレベルアップを後押ししている側面もあります。

サプライヤー(加工業者)のリアル

サプライヤーの現場は、「どこまでコストを下げても品質を保つか」というジレンマとの戦いです。
新規原紙や新設備導入時のトライ&エラー、技能者の高齢化と技術継承、デジタル化への投資判断など、現実的な課題も山積みです。
また、納品トラブルや急な仕様変更要求にも臨機応変に対応するスピードも求められます。

その意味では、バイヤー目線の「なぜこの品質要求なのか?」という理由や意図を現場が理解しておくと、不毛な調整やすれ違いも減少します。

まとめ:小さな工夫が業界全体の信頼を支える

ポケットティッシュのミシン目一つにしても、「打抜き圧」と「刃先角度」という地味ながら熟練が必要なノウハウが詰まっています。
現場の技能をIT・デジタルと組み合わせて磨き上げていくことが、これからの製造業の発展につながります。

バイヤー・サプライヤー双方が“なぜこの工夫が必要なのか”を理解し、現場視点での対話を深めていきましょう。
ひとつのミシン目にかける情熱こそ、日本のモノづくりが世界に誇れるDNAです。
現場の皆さん、これからも現実と新技術の「良いとこ取り」を目指して、さらなる高みを一緒に目指しましょう。

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