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属人性が原因で原価低減が進まない経営課題

目次
属人性が原因で原価低減が進まない経営課題
はじめに:昭和から続く属人管理の壁
製造業の現場では、「あの担当者じゃないと回らない」「図面やノウハウは◯◯さんの頭の中」という属人化した業務体制が根強く残っています。
AIやデジタル化が叫ばれる今でも、「現場の勘」と「経験則」に依存している工場も多いです。
この体制がもたらすリスクの一つが「原価低減の停滞」です。
この記事では、属人性が原価低減のボトルネックとなる理由と、その解消のヒントについて、現場目線で深掘りします。
また、バイヤーを目指す方や、サプライヤーの方にも、有益な視点を提供します。
属人性がもたらす原価低減への悪影響
1. コスト構造の「見える化」不足
属人管理の最大の欠点は、コストの全体像が共有されず、各担当者が自分の感覚や過去の経験に基づいて仕入先を選定したり工程管理を行っている点です。
現場で「毎年5%コストダウン」という目標を掲げても、具体的な打ち手や根拠に乏しく、「前年踏襲」や「値切り交渉」頼りになりがちです。
これでは本質的なコスト構造の見直しが進まず、抜本的な改善策に踏みこめません。
2. ノウハウのブラックボックス化
優秀なベテラン担当者が独自に工夫し、品質や歩留まりを守っている現場。
一方で、彼らがいなくなったときには工程異常やコスト増加が多発する…というのは多くのメーカーが抱える「あるある」です。
属人性に頼るほど、暗黙的なノウハウがブラックボックス化し、標準化やスケールメリットを失ってしまうのです。
3. 改善サイクルの遅延と実効性喪失
原価低減活動の多くは、「現場の気付き」から始まります。
しかし、気付きが属人化していると、「担当者が忙しい」「情報共有の文化がない」などで活動が止まりがちです。
また、改善アイデアも個人プレーになりがちで、全体最適の視点に欠けるため、効果が限定的あるいは一時的になります。
なぜ属人化から抜け出せないのか?
1. 強い現場主義と職人文化
日本の製造業は、高度成長期から「現場重視」「職人技能」を武器に世界をリードしてきました。
その成功体験が、「効率化=手抜き」「暗黙知=競争力」といった価値観につながり、今なお現場の変革を阻みます。
特に中堅社員、ベテラン層ほど「自分がやった方が早い」「人には教えたくない」という意識が根強いです。
2. システム化への苦手意識・コスト意識
昭和時代の製造業は、「IT=業務効率化の敵」と見なす風潮もありました。
既存の手順を守りつつ、Excelや紙帳票で業務を回す「なんとなくの安心感」が拭えません。
また、IT投資や工程のデジタル化には初期費用や学習コストがかかるため、「そこまでしなくても…」という判断になりがちです。
3. 人事評価やキャリアの硬直性
業績評価や昇進が「年功」や「担当領域内実績」で決まりがち。
部門横断の改善活動や、教える側のインセンティブが弱いため、「自分の縄張りは自分で守る」「業務見える化はマイナス評価」と考えやすい現実もあります。
サプライヤー・バイヤー双方が属人化の課題を意識すべき理由
顧客要求の多様化・短納期化が進む時代
製造業の現場では、顧客の要求仕様の多様化、納期短縮、コストダウン圧力が一層強まっています。
これらに柔軟に応じるためには、「特定個人に頼った目利き」だけでなく、「組織で学び、情報を集め、再現性のある仕組み」で対応する必要があります。
属人化体質が強い工場は、受注変動や新しい取引への追従力が弱まり、サプライチェーンの一員として選ばれにくくなります。
バイヤー(調達担当者)目線で見る属人化のリスク
バイヤー側から見ると、サプライヤーの担当者が変わるたびに「連絡ミス」「納期遅れ」「不具合の対応遅延」などが頻発する取引先は、高リスクと判断されます。
また、「数値やデータに基づいた見積回答」「工程改善提案」「原価構造の説明」といったやり取りが属人依存だと、バイヤーとしてはコスト根拠や将来性に疑問を持ちます。
これでは長期的な信頼構築や、共同でのコスト低減活動、提案型取引へと発展しづらいです。
サプライヤー目線で考える属人化のデメリット
サプライヤー側にもリスクがあります。
担当バイヤーが変わるたびに「やり取りのノウハウ」や「取引慣習」がリセットされ、その都度説明したり、仕事のやり方をゼロから構築する必要があります。
これでは効率的な商談や、原価低減のための共同活動を推進しづらく、同業他社との競争でも不利になるケースがあります。
属人性脱却による原価低減のアプローチ
1. プロセスの「標準化」と「見える化」
まず着手すべきは、業務プロセスの「標準化」と「見える化」です。
調達プロセスや生産管理、歩留まり管理などについて、現状の意思決定や流れを洗い出し、「ガイドライン」や「標準作業手順書(SOP)」として明文化します。
これにより、「誰でも分かる」「担当者が変わっても情報伝達ロスがない」体制が整い始めます。
また、「どこにコストがかかっているか」「どの工程がボトルネックか」といった情報を定量的にデータ化し、関係者で共有することが大切です。
見える化によって属人的な経験則から、客観的な分析・改善へとシフトできます。
2. ITツール・システムの活用
中小〜大手メーカー問わず、簡単な工程管理システムや購買管理ツール、クラウド共有ツールなどを活用することで、データの一元管理や情報共有が促進されます。
例えば、原価見積の内訳やリードタイム、工程ごとの稼働実績をデータとして残し、必要な時に誰でもアクセス可能な仕組みを作りましょう。
初期コストはかかりますが、後継者教育や業務引き継ぎ、バイヤー・サプライヤー間での交渉においても、大きな武器となります。
3. 現場人材の役割再設計とスキル多能化
属人化の弊害が最も大きいのは、「現場リーダー/ベテラン作業者にしかできない仕事が多い」状況です。
これに対し、複数担当者による「相互カバー体制」、OJTやeラーニングを使った業務標準教育、ローテーションによる多能工化を推進しましょう。
人の入れ替えや新規人材の増減があっても、コスト低減活動や品質維持が継続できる強い現場へシフトできます。
4. 原価低減活動のKPI・成果物を明示
原価低減活動を現場個人の努力頼みから、組織横断的な取り組みへとシフトします。
・活動テーマや数値目標(KPI)を明確化
・進捗と成果を定期的に全員でレビュー
・成功事例や失敗事例をナレッジ化して蓄積
こうした「みんなで進め、みんなで成果を確認する」カルチャーが属人性の壁を打ち破ります。
まとめ:属人性から脱却し現場力×組織力で原価低減を
昭和から続く日本の製造業は、属人依存で生き延びてきた側面がある一方で、今まさにその限界に直面しています。
個人技能や経験則に頼った経営では、市場変化や顧客ニーズの多様化、サプライチェーンリスクに耐えられません。
一方で、現場の創意工夫、積み重ねたノウハウは企業の大切な財産です。
属人性を「見える化」「標準化」「組織学習」に昇華させることで、皆で支え合い変化に強い工場へと生まれ変わります。
その先に、持続的な原価低減や、新しい価値創造が待っています。
バイヤーを目指す人、サプライヤーの立場でバイヤーの考えを知りたい人も、ぜひこのテーマを自社に照らし合わせて、より良い現場作りに挑戦してみてください。