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投稿日:2026年1月31日

地震対策を外注任せにしたときの落とし穴

はじめに――なぜ「地震対策」を外注するのか

生産現場を持つ製造業の皆さまにとって、地震対策はもはや選択肢ではなく、必須の経営課題です。

特に日本のような地震大国において、「有事」に備えることは企業の存続、従業員の安全、そして顧客への製品安定供給のために極めて重要です。

しかし実際には「地震対策は専門業者に任せておけば安心」という“外注神話”が蔓延しています。

今回は、現場経験をもとに「地震対策を外注任せにしたときの落とし穴」について掘り下げ、今現場が直面しているリスクやあるべき姿を考察します。

製造業における地震対策の現状

地震対策=建屋や設備補強のこと、と思い込んでいませんか

多くの企業では、地震対策と言えば建屋の耐震補強や大型設備のアンカー施工、棚の転倒防止といった「ハード面」の対策が主軸となってきました。

しかし、実際に大規模地震が発生した際に本当に被害を最小限にできるかというと、それだけでは十分ではありません。

地震は業務プロセスや供給網、情報管理など、製造業全体を深く揺るがすものなのです。

なぜ現場の“生きた知恵”を活かせていないのか

昭和時代からのアナログ文化が根強く残る製造業では、「まず現場に聞く」よりも「外部の専門家に任せる」傾向があります。

外注先に丸投げした場合、その対策が実際の業務フローや現場作業の実態に合っていない例が非常に多く見受けられます。

たとえば動線を無視した配置変更や、点検・保全が困難な設計、優先順位を見誤った設備強化などがそれにあたります。

外注任せにしたときの“4つの落とし穴”

1. 想定外の“死角”が生まれる

外注業者は一般的なノウハウをもとに最善策を提案してくれますが、各工場・現場のクセや独自ルールまでを完全に把握するのは不可能です。

大小さまざまな死角が残ったままとなり、いざという時に被害が拡大する恐れがあります。

この「死角」は、図面や机上のプランでは見えません。

現場のベテラン作業員しか気づかないリスク(置き場の慣習、通路の一時的な使われ方、深夜シフトの実情など)こそが最大の弱点となります。

2. “費用対効果”の取り違え

地震対策を外注化した場合、コスト削減の圧力が強くかかりがちです。

安価な対策や付け焼き刃の対応に流れてしまい、結局は本来守るべき命や事業継続が危うくなります。

また、過剰品質となって必要以上に費用をかけてしまった例も少なくありません。

本来は、工場の規模やリスクプロファイルに応じて最適な投資バランスを設計すべきなのです。

3. “業務継続性”が置き去り

地震被害を受けた場合、最も深刻になるのは「いかに速く、業務を再開できるか」です。

ここで重要なのはBCP(事業継続計画)の視点です。

地震対策を外注だけに頼った場合、ハード的な補強や修繕だけで終わり、肝心の「生産復旧プロセス」や「代替供給ルートの確保」が置き去りになりやすい傾向にあります。

特に調達購買部門やサプライチェーン担当は、外注業者では気づきにくいリスクを知識としてまとめておく必要があります。

4. 実効性のない避難訓練・マニュアル

形式的なマニュアルや避難訓練が形骸化しがちなのも、外部任せにした時の典型的な問題点です。

現場実態に即したマニュアルでなければ、災害時には役に立ちません。

また、避難訓練も“やっておしまい”で現場スタッフの危機感が薄いままでは、本番で機能しません。

現場起点で考えたオリジナルなフローと、“想定外”への対応力を磨くことが求められます。

なぜ現場主導の地震対策が重要なのか

意識の壁が、“守り”の違いを生む

現場の従業員や管理監督者一人ひとりが“自分事”として地震対策に取り組むことで、“安全文化”が根付いていきます。

現場主導の地震対策は、リーダー層の目配りだけでなく、現場のベテラン・若手問わず意見交換できる雰囲気づくりから始まります。

榊原工場長や田辺班長の「ここには機械の転倒より、油の漏洩がヤバい」という“生のリアル”は、外注業者の想定を大きく上回るシビアなリスク情報となるのです。

工場改善の発想が活きる

日々QCサークル活動や改善提案を積み重ねてきた製造業の現場には、“現場で役立つ安全策”を発案する素地が備わっています。

たとえば「このラインは地震直後に●●を停止するのが最優先」「MG棟のコンプレッサーは逃がし弁を自動化するべき」など、机上では生まれにくい具体策が現場発から次々と生まれます。

この発想力を地震対策のPDCAにも生かすことで、実効性・現実味を伴った対策が粘り強く推進されていくのです。

バイヤー・サプライヤー双方にとっての「地震対策」とは

バイヤー視点――“本気度”が伝わるか

調達購買担当としては、単なる“社外委託”ではなく、自社マネジメントの取り組みとして地震対策にどう向き合っているかが、サプライヤー選定や取引先からの信頼にも大きく影響してきます。

昨今はESG、CSRの潮流も相まって、取引先のリスクマネジメント姿勢がより厳しく問われる時代です。

“丸投げ”企業と“現場主義”企業では、評価・信用力の差が明確になります。

サプライヤー視点――「バイヤーの本音」を読む力

地震対策というテーマは、サプライヤーにも直接影響を及ぼします。

「納入先が被害を受けて受け入れ不能となる」「物流が途絶しパーツ供給がストップする」などのリスクが現実化するのが大地震の特徴です。

サプライヤーの立場でも、単なる“発注通りの耐震工事”以上に、バイヤーとの対話・現場視察・共同リスク分析の機会を増やすことで連携強化、トラブル発生時の復旧迅速化が期待できます。

また、製品や部品の在庫分散提案、代替部材の立案、輸送ルートの事前協議など、能動的に提案するサプライヤーはバイヤーから高く評価される傾向にあります。

現場力を活用した“本当の地震対策”へ

現場対話から始める

地震対策で最も大切なのは、現場の声を拾い上げて対策案に落とし込む“現場対話”です。

たとえば「どこに危険が潜んでいるか」「夜勤・交代制の時どう動くか」「生産ストップ時の連絡ルートは」など、細部までメンバーと一緒に話し合うことで、机上の対策ではカバーできない“現実と戦う防衛力”が生まれます。

PDCAを“止めない”仕組み作り

地震対策は一度実施して終わりではありません。

設備や現場作業の変化、新設備の導入、シフトの見直しなどが起きるたびに現在の対策を定期的に見直し、アップデートする必要があります。

また、定期的な自主点検や「震度5相当の地震が起きたら?」という訓練も有効です。

現場スタッフ同士でアイデアを持ち寄るサークル活動や、外部業者との合同勉強会なども推奨されます。

“想定外”を常に意識する

阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震――どの大地震も“想定外”の連続でした。

あらゆる可能性に備え、普段から「何が起きても慌てない」組織文化を醸成していくことこそ、現場主導の真の地震対策です。

そのためには、情報の共有、リアルタイムなリスクコミュニケーション、マルチタスク対応力、そして現場の自主的なリーダーシップの育成が不可欠です。

まとめ――“外注と現場力の融合”が最適解

製造業の地震対策において、外部専門家の知恵やノウハウは確かに有効です。

しかし、現場の生きた知恵・経験、日々の危機意識、内発的な改善力と掛け合わせてはじめて、現実に役立つ地震対策が構築されます。

バイヤーや購買担当、現場リーダー、サプライヤーそれぞれの視点で危機と向き合い、“丸投げ文化”から脱却して“共創型の地震防衛力”を育むことが、これからの日本の製造業の競争力と社会的責任につながります。

今、問われているのは「地震が来たら他人任せにするか、自分事として危機を乗り越えるか」という現場主義の覚悟です。

安全と事業の継続は、現場の“一歩踏み込む知恵”から生まれます。

外注任せになりがちな業務の在り方を大局的に見つめ直し、自社独自の地震対策を現場起点で創りあげていきましょう。

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