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投稿日:2025年7月5日

プラスチックトライボロジーで摩擦摩耗を低減する材料選定法

はじめに:プラスチックトライボロジーの重要性

近年、製造業の現場では、設備の高効率化と長寿命化がますます求められています。
その中心的テーマの一つが「摩擦摩耗の低減」です。
摩耗や摩擦の問題は、部品の早期劣化、メンテナンスコストの増大、突発的なトラブルによるダウンタイムなど、現場に多大な影響を及ぼします。

こうした課題解決のカギとなるのが「プラスチックトライボロジー」です。
トライボロジーとは、摩擦・摩耗・潤滑を科学する学問領域であり、その知見を活かしたプラスチック材料選定が、現代のものづくり現場で大きな価値を発揮しつつあります。

本記事では、工場長などの現場経験をもとに、プラスチックトライボロジーの基礎から、実践的な材料選定方法、そして今なお色濃く残るアナログ志向と向き合いながら進化を遂げる現場の現状まで、詳しく解説します。

プラスチックトライボロジーとは何か?

トライボロジーの基礎知識

トライボロジーは表面現象を制御するサイエンスです。
その柱は「摩擦」「摩耗」「潤滑」の3つです。
部品と部品が接触して動くことで、摩擦が生じます。
この摩擦により発熱や消耗、エネルギーロスが発生し、利益を圧迫します。
また、恒常的な摩擦は部品表面の摩耗、破損につながります。

プラスチックを活用する理由

これまでの多くの現場では、金属が材料の主力でした。
しかし近年では、軽量化・コストダウン・加工性向上といった目的から、工業用プラスチックの活用が進んでいます。
さらに、自己潤滑性など“摩擦に強い”特性を持つプラスチックが次世代の機械部品に選ばれ始めています。

プラスチックトライボロジーのメリットとその本質

プラスチックトライボロジーが着目される理由、それは「摩擦係数を下げ、摩耗をコントロールできる」点にあります。
例えば、軸受やスライド部品などの摩擦部では、金属同士よりもプラスチックを用いた方がノンオイル・メンテナンスフリーを実現しやすくなります。

また、静音性や腐食耐性といった特性も期待できます。
現場では省人化、自動化が進み、脱油・無潤滑運転のニーズが高まる中で、トライボロジープラスチックは大きなアドバンテージを持ちます。

摩擦摩耗をコントロールする材料選定の実践ノウハウ

まずは用途と使用条件を正確に把握する

材料選定で最も大事なのが“現場条件の把握”です。
残念ながら“いつもの材料”で安易に済ませてしまい、摩耗や不具合で悩む現場はいまだに多いです。

まず下記のような項目を整理しましょう。

・動作パターン(回転か、直線か、複合か)
・荷重(常時荷重、衝撃荷重、面圧など)
・速度(低速・高速・断続運転など)
・温度環境(-20℃、80℃、あるいは外気や雰囲気ガスの影響)
・潤滑環境(オイル、グリスの有無。無潤滑の必要性)
・相手材(軸やレールは金属?樹脂?コーティング?)
・寿命要求やトータルコスト

これらを押さえ、“ただのカタログスペック比較”に留まらず、現場の本質的な課題-コストダウン、信頼性、保守容易性-に対応する材料を絞り込むことが重要です。

主要な樹脂素材のトライボロジー特性

製造業の現場でよく使われるトライボロジー用樹脂は以下のようなものです。

  • ポリアセタール(POM,ジュラコン)
    摩擦係数が低く優れた自己潤滑性を持ち、ギアやスライド部品に多用されます。
  • ポリアミド(PA,ナイロン)
    耐摩耗性が高く、ベアリングやローラーなどに活躍。吸湿に注意が必要です。
  • ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
    高温環境・高荷重にも耐えるハイエンド樹脂。潤滑添加剤との組合せでさらに性能向上します。
  • 超高分子量ポリエチレン(U-PE)
    圧倒的な耐摩耗性と自己潤滑性。搬送用ライナーや摺動パッドに多用。

また、摩耗・摩擦特性を強化するため、フッ素樹脂(PTFE)やグラファイト、カーボン、モリブデンなどの微粒子を複合化した“トライボロジーグレード”の材料も増えています。

応用事例と現場トラブルから学ぶ材料選定の真実

例えば、従来は金属で作っていた搬送ローラーのベアリング部をPOM系樹脂に置換した現場では、無給油でメンテナンス回数が1/3に減る、異音トラブルなく24時間稼働できるなどの成果が得られました。

一方で、材料選定を間違えた場合「摩耗粉によるライン汚染」「吸湿伸び変形」「初期なじみ摩耗で想定外のクリアランス拡大」など、逆に品質トラブルを引き起こす事例も後を絶ちません。

推論に頼らず、実作業や短期評価・長期耐久試験を繰り返して性能とコストを見極めることがプロのバイヤーにもサプライヤーにも求められています。

昭和的アナログ志向とこれからの業界動向

現場に残る“慣習材料”の壁

日本の製造業は“品質最優先”の文化から脱却しきれず、“いつもの材料”“実績があるから”と旧来型の材料選びに固執する現場も多いです。
そこには、保証やリスクオフの発想や情報の囲い込み体質も根強く残っています。

しかし、DX(デジタルトランスフォーメーション)やIoTによる自動化、生産効率化推進、グローバル調達競争の激化などで、もはや“昭和のやり方”だけでは対応できません。
バイヤーもサプライヤーも、材料サイエンスへの理解や、トライボロジーの最新トレンド情報を武器に、新たなバリュー提案を続けるべき時代になっています。

サプライヤーが知るべきバイヤー視点の新たな材料提案

サプライヤー側は、もはや「お安く納期守ります」では差別化できません。
バイヤーが本当に求めているのは、摩擦摩耗を含む“ライフサイクルコストでの最適化”です。
「現場作業負荷」「ユーザーのメンテ人員不足」「後工程の歩留まりロス」まで含めた視野で、新素材やトライボロジー技術をどう現場に組み込むか—まさに「提案型活動」のフェーズに突入しています。

バイヤーや現場エンジニアが知っておきたい今後の技術トレンド

自己修復ポリマーや動的表面処理

摩耗で傷ついた表面が“自己治癒”するような素材、摩擦が増えると自動で潤滑剤を分泌する表面処理など、実用化間近の先端技術も登場しつつあります。
こうした最新の材料技術を知っていれば、バイヤーもサプライヤーも、既存材料の見直し提案やコスト競争へのブレイクスルーにつながります。

シミュレーション主導の材料選定とデジタルツイン活用

従来は“現物試作”に頼っていた材料選定ですが、今後はデジタルシミュレーションで摩擦や摩耗挙動を仮想評価する「デジタルツイン手法」が標準になってゆきます。
この流れを押さえることで、従来の「やってみなければ分からない」「試作費が嵩む」現場からの脱却が加速するでしょう。

まとめ:トライボロジー材料選定で生まれる現場競争力

昭和の発想のまま「いつもの材料」「実績重視」の選定に縛られていては、企業の競争力は高まりません。
今まさに、材料選定は“スペック比較”から“現場問題の本質解決”への進化が必要とされています。
トライボロジー視点で材料を見直し、現場起点の情報整理、用途最適化、そして新技術の積極導入にこそ競争力の源泉があります。

製造現場・生産管理・調達バイヤー・サプライヤー、それぞれが異なる立場であっても、共通して“現場と未来を理解するラテラルシンキング”を携え、現場のイノベーションに貢献してゆきましょう。

プラスチックトライボロジーの知恵と技術を最大限に活かすことで、よりスマートで、持続可能なものづくりの現場作りに一歩踏み出すことができます。

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