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めっきトラブルとその対策およびポイント

目次
はじめに:めっきの重要性と現場のリアル
めっきは部品や製品の表面に金属層を形成し、耐食性や美観、機能性を高める技術です。
製造業、特に自動車、電子部品、精密機器といった分野ではなくてはならない工法となっています。
しかし、現場目線で見ると「めっき」にはトラブルがつきものです。
しかも、多くの工場やサプライヤー現場では未だに昭和的な“アナログ”感覚や場当たり的な対応が主流となり、新しい時代の課題が根深く残っています。
この記事では、20年以上の現場経験と管理者の立場から、めっきトラブルの具体例とその対策、そしてこれからの時代に求められるポイントを徹底的に解説します。
よくあるめっきトラブルの種類
めっきトラブルは大きく分けて「見た目に関するもの」と「機能・性能に関するもの」に分類されます。
従来型のQC活動でカバーできる“見た目の不良”だけでなく、最近はグローバルバイヤー視点やサスティナビリティ要件など、新たな品質基準も浮上しています。
1. 外観異常(ざらつき・ピンホール・変色など)
最も多いのが、見た目の不備です。
ざらつき、ピンホール、変色、光沢不良、斑点、色ムラなど多岐に渡ります。
こうした外観異常は初期流動管理や歩留まりシミュレーションで事務的に語られがちですが、実際の現場では「原因不明」とされやすく、対策が場当たり的になっているのが実情です。
2. 密着不良・剥離
めっき層が母材(基材)にはがれてしまう密着不良も致命的なトラブルとなります。
自動車分野では、モジュールの一体化が進み「剥離=再組立て不可」という深刻な事態も珍しくありません。
原因は前処理の不完全、異物の付着、浴の管理不良など多種多様ですが、実は“生産管理・購買段階”での条件設定ミスが裏に潜んでいるケースも増えています。
3. 焼け・変色・皮膜の欠損
部品が高温や異常な電流・浴濃度にさらされることで焼けや変色、部分的なめっき剥がれといった現象が起きます。
とくに短納期プレッシャーの強い現場では「急ぎすぎによる不良発生」のリスクも見逃せません。
4. 寸法不良・性能不足
機械部品の精度や電子部品の通電性能など、めっきの厚さや均一性が不足していると致命的な寸法不良や機能不良につながります。
IoTの普及や半導体技術の進化に伴い、精度要求が年々高度化しているため、従来の“目視検査中心”から脱却する必要性が高まっています。
トラブルを防ぐ基本アプローチ
めっきトラブルを「事後」の対応でなく「予防」に転換するには、各工程ごとに発生リスクを把握し、ロジックベースの管理手法を導入することが大切です。
1. 前処理の徹底管理
ほこり、油分、酸化皮膜の除去が不十分なままめっき工程へ進むと、密着不良や表面欠陥を引き起こします。
昭和世代には「付着物は職人勘で見抜く」という文化も根強く残っていますが、今後は洗浄工程の自動化や定量的なモニタリングを導入し、誰でも品質基準を満たせる仕組みをつくることが不可欠です。
2. めっき浴・パラメータの管理
めっき液の温度やpH、イオン濃度、添加剤の状態は、製品の品質を大きく左右します。
現場の暗黙知で運用されているパラメータは“リスクの温床”です。
定期的な浴分析、IoTによる自動監視、トレーサビリティの強化で、安定した生産環境を実現しましょう。
3. 製品設計段階での要件定義
実はめっきトラブルの1割以上は設計段階の「仕様ミス」に起因しています。
バイヤーや生産技術部門は「後工程はお客様」の精神で、設計段階からめっき性・表面粗さ・許容寸法などを明文化し、サプライヤーとも十分に連携しておくことが肝心です。
最近はグリーン調達対応やリサイクル性確保の観点から“完全指定”が主流ですが、逆に過度な指定は生産現場を疲弊させる要因にもなります。
「品質=設計×工程×マネジメント」の三位一体で考えることが重要です。
アナログからの脱却と現場力の再構築
1. 見える化・デジタル化の推進
DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる中、多くの工場は「紙・エクセル主義」を続けています。
発生したトラブルの記録も“誰それノート”や口頭伝達によるアナログ方法が一般的なままです。
これでは、何が起きて何を直せばよいか再現性のある知見が蓄積されません。
社内外の連携を強化するには、不良履歴・設備パラメータをクラウド化し、関係者全員で問題を抽出・改善・予防できる仕組みを整備しましょう。
2. バイヤーとサプライヤーの相互理解
バイヤーは「コスト削減・納期厳守・品質要求」を掲げた発注をしがちですが、現場目線で言えば“無理難題”の要求も多々あります。
一方、サプライヤー側の事情や技術的な限界をバイヤーが知らずにトラブルが慢性化するケースもあります。
解決のためには相互に現場見学会を行い、「現場の生の声を聞く」「サプライヤー視点での最適解提案を尊重する」といった、共創的なパートナーシップが必要です。
自動車業界などで進んでいる“共同設計レビュー”の全業界への水平展開が効果的です。
3. 問題解決型の人材育成と技術伝承
現場で起きた「なぜ?なぜ?分析」を本当に成果に結びつけるには、納得解を引き出すための地道な議論と、ロジカルかつ仮説検証型の思考訓練が欠かせません。
また、ベテランから若手への暗黙知・失敗談の伝承こそ、トラブル未然防止の最短ルートです。
現場教育においては、座学だけにとどまらず、デジタルツールを活用したシミュレーションやOJT重視で“現場力”を再構築しましょう。
これからの時代に必要な視座と実践ポイント
1. サステナビリティ対応の徹底
今やグリーン調達やRoHS、REACH規制といった「環境規格コンプライアンス」が、サプライチェーン全体の絶対条件となっています。
めっき工程だけでなく、前後の化学物質管理・廃棄物処理・エネルギー効率など、バイヤー・サプライヤーが共にPDCAを回す体制が不可欠です。
2. 次世代テクノロジー活用によるイノベーション
AIによる不良品画像の自動判定、IoTセンサーによる浴管理は“夢物語”ではありません。
現場で小さな一歩を積み重ねながら、テクノロジーでヒューマンエラーを補完していく視点が強く求められます。
とはいえ、全自動化する前に「なぜ工程が乱れるのか、その根本を理解する力」も磨きましょう。
3. 顧客価値志向で現場の変化を仕掛ける
国内だけでなくグローバル競争が激化し、単なる“コストダウン”や“生産性アップ”だけに目を向けていては生き残れません。
「顧客が本当に求めている品質・機能・サスティナビリティ」を可視化し、現場の目線で価値提供を続けていく姿勢こそが強い工場・強いバイヤーを育てます。
まとめ:現場主導のトラブル対策で、めっき業界の未来を切り拓く
めっきトラブルは「現場あるある」の一言では片付かない、全工程参加型の複雑な課題です。
昭和的な属人技から脱却し、デジタル化、連携、主体的な人材育成を融合しながら、“現場が自ら改善を生み出す”仕組みづくりがこれからの競争力につながります。
バイヤー、サプライヤー、現場スタッフが一体となって、めっきトラブルゼロを目指しましょう。
そして、成熟した現場ノウハウと次世代のテクノロジーや価値観を掛け算することで、“日本発の新しいものづくり”を創り出す一員になりましょう。
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