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シャツの襟立ちを保つための台襟設計と芯地選びのポイント

目次
はじめに:シャツの襟立ちが製品価値を左右する理由
シャツはビジネスシーンでもカジュアルでも、身だしなみや印象作りに欠かせないアイテムです。
中でも「襟立ち」は、その人の印象を大きく左右します。
くたっとした襟はだらしなく見えがちですが、しっかり立った襟は清潔感や信頼感を演出します。
このシャツの襟立ちを左右するのが、台襟(だいえり)設計と芯地選びです。
本記事では、製造現場のプロの視点から、理想の襟立ちを実現するための設計ポイントと素材選び、そして最近の業界動向や現場で起きている「昭和から抜け出せない」課題についても深堀りします。
バイヤー志望の方やサプライヤーの方にとっても有用な情報を盛り込みます。
シャツの襟立ちとは何か?
そもそも「襟立ち」とは、シャツの襟がどれだけ立体的に、しっかりと立っているかを指します。
この襟の立体感が、着用時の首回り全体の印象や、シャツの高級感・品質感を決定づけます。
襟がペタッと寝てしまうと、アイロンやクリーニングでごまかしても、着ているうちに型崩れが目立つものです。
特にビジネスシャツやフォーマルシャツは、長時間着用しても襟の形が保たれることが市場要求として高まってきました。
台襟設計の重要性と設計ポイント
台襟の役割
台襟とは、シャツの本体と襟(カラー)の間に挟まれている帯状のパーツです。
首周りに沿ってシャツの襟を立体的に見せることができるため、台襟設計がしっかりしているかどうかが「襟立ち」に直接影響します。
現場で重視すべき台襟寸法・形状
台襟の高さやカーブ、縫製角度は、製品の着心地と襟のもち具合に直結します。
例えば、台襟の高さが高すぎると首に違和感が出やすくなります。
一方で、低すぎると襟が寝てしまい立体感が損なわれます。
一般的には2.8~3.5cmを基準に、体型や目的、着用シーンに合わせて微調整します。
また、台襟のカーブ設計にも注意したいです。
人体の首は完全な円ではなく、やや楕円を描いています。
実は、多くの工場では「生地ロスを抑える」「裁断工程を単純化する」といった理由から、直線的に設計している場合もあります。
これが結果として、既製品シャツの襟立ちがイマイチ……という現場あるあるにつながります。
生産ラインで起きる「妥協」とどう向き合うか
忙しい量産ラインの現場では「多少の設計誤差は仕方がない」と流されがちです。
しかし顧客ロイヤルティが厳しい現代こそ、台襟のR(曲率)や、芯地との縫い合わせ精度を重視する文化を社内に根付かせる必要があります。
リーダー層やバイヤーは、サンプル段階だけでなく本量産時にもこの点を厳しくチェックする目線を持つことが、製品の差別化につながります。
芯地選びの基本と、知られざる最新トレンド
芯地が襟立ちに与えるインパクト
シャツの襟や台襟は、布地だけではへたってしまいます。
そのため内部に「芯地」と呼ばれる補強素材を貼り合わせて使います。
芯地の厚み・硬さ・接着力などが、シャツの襟立ちや耐久性、形状保持力を大きく左右します。
芯地の主な種類と適材適所
芯地には大きく分けて「接着芯」と「フラシ芯(縫い付け)」の2種があります。
・接着芯:アイロン圧着で簡単に固定でき、量産性に優れます。
・フラシ芯:手間は増えますが、通気性や高級感が高まります。
ビジネスシャツでは接着芯が主流ですが、実はハイエンドブランドでは今もフラシ芯が根強い人気です。
特に、高温多湿な日本の夏場用シャツでは、「芯地が厚すぎるとムレる」といった消費者の声をよく耳にします。
立体感重視か、快適性重視か――このバランスを見極めて芯地を選ぶことがバイヤーや設計担当者に求められます。
近年注目される新素材とその効果
昭和から続く製造業では「とりあえずいつもの芯地で…」と保守的な選定がいまも多いのが現実です。
しかし、近年では以下のような新素材も流通し始めています。
・吸湿速乾性を高めた高機能芯地
・再生ポリエステルやバイオ系原料を用いたサステナブル芯地
・極薄・極軽ながら高い形状保持力を持つ先進技術系芯地
これらの選択肢を、従来の「作りやすさ」「安さ」だけでなく、最終顧客視点で一歩踏み込んで研究・採用することが求められます。
製造現場で培った「現場目線」からくる注意点
芯地と生地の「相性」を侮るなかれ
工場の量産現場では、「毎回同じ芯地を入れていればOK」となりがちです。
しかし、素材そのものの厚みや織りの密度が変化すると、「過去と同じ工程」でもまったく異なる襟立ちになります。
特に近年の流行である薄手・軽量素材では、旧来の芯地だと「芯地だけが勝ちすぎる」というミスマッチが多発します。
新しくラインナップに加えた生地には、まず数パターンの芯地で試作を行う。
実際に洗濯や着用テストを重ねる。
こうした地道な開発姿勢こそ、昭和からの“思い込み生産”時代と決別する第一歩です。
接着工程での温度・圧力管理が襟立ちの生命線
量産ラインで芯地を貼り合わせるとき、プレス機温度や圧着時間、圧力管理が徹底されていないケースがあります。
「温度が低いと接着不足、逆に高すぎると芯地自体がへたる」などの問題が、最終的に襟立ちの“もち”へ悪影響を及ぼします。
工場長や生産管理職は、この工程を単なる「通過ポイント」と捉えず、リアルタイムで品質チェックを行いましょう。
最終顧客にサンプルを送付する前に「現場目線で首元を実際に着用して確認する」ことが、満足度向上の最短ルートです。
バイヤー・サプライヤーが知っておきたい 昭和流の“思考停止”に陥らないために
「いつも通り」が危険なワケ
日本の製造業は「過去のやり方」に強く依存する傾向があります。
確かに、過去に完成度の高い商品を生んだ現場ノウハウは貴重です。
しかし、消費者価値観や働き方が劇的に変化している今、過去の延長線だけで芯地や台襟設計を選ぶのはリスキーです。
グローバル市場や異業種コラボの事例にも目配りすることで、「長寿命」「快適」「サステナブル」など多様な価値を持つ商品企画ができるようになります。
業界動向:サステナブル素材やパーソナライズ設計の普及
2010年代以降、SDGsやエコロジー志向の広がりによって、シャツ業界にも大きな変革波がきています。
再生ポリエステルを芯地にも活用したり、接着剤の化学成分を低減したりといった動きも活発化しています。
また、AIを活用した3D人体計測データをもとに、体型に最適化した台襟・襟設計をパーソナライズ提供するサービスも登場です。
このような最新動向を自分ごと化し、日頃の芯地や台襟選定に生かすことが、これからの製造業バイヤー・サプライヤーの価値となります。
まとめ:ラテラルシンキングで「襟立ち」を再定義する
シャツの襟立ちは、機能性・快適性・見た目の美しさ――すべてに通じる重要な品質要素です。
台襟の設計や芯地の選択を、単なる「手順」とせず、最終消費者の満足度や時代のニーズから俯瞰して考えるラテラルシンキングが求められます。
昭和流の“思考停止”を脱し、最新素材や設計方法を意識的に取り入れる。
現場目線での細やかなテスト・検証を重ねる。
そして、顧客や取引先と「なぜこの設計にしたのか」「どういう価値が生まれるのか」を共有していく――。
こうした姿勢こそが、製造業の未来を明るく照らすカギとなります。
みなさんの現場や開発・企画・調達の現場で、台襟・芯地の選定にぜひ新しい地平線を見出していただければ幸いです。
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