- お役立ち記事
- 水処理膜製品の新規市場開拓における国際事業連携の実践手法
水処理膜製品の新規市場開拓における国際事業連携の実践手法

目次
はじめに:水処理膜市場の新展開と国際連携の重要性
水処理膜製品は、世界的な水資源不足や環境規制の強化、持続可能な社会実現に向けた動きとともに、需要が急速に高まっている分野です。
日本を含む多くの先進国では、従来型のグローバル戦略からさらに一歩踏み込み、現地市場特化型の製品開発や、生産体制の最適化、異業種や現地企業との連携など、実践的な国際事業連携が不可欠となっています。
本記事では、20年以上の製造業経験者の視点から、水処理膜の新規市場開拓に求められる最新の国際連携実践手法と、業界固有の課題にどう対応すべきかを詳細に解説します。
水処理膜市場の概要と変化するビジネス環境
世界の水処理事情と成長市場
世界の水問題は深刻化し続けており、特にアジアや中東、アフリカを中心に急速な都市化と人口増加により、大規模な水処理インフラ投資が進んでいます。
その中でも水処理膜技術は、高効率で省スペース、ランニングコストも比較的低いことから、新規導入・置き換え共に需要が伸びています。
例えば、東南アジアは下水道普及率が低く、これから数十年にわたり莫大な膜需要が見込まれる市場です。
一方で、欧米では持続可能性や再生水利用を強く意識した市場動向が見られます。
技術と市場ニーズの多様化
従来はRO(逆浸透)膜やMF(精密ろ過)膜、UF(限外ろ過)膜が主力でしたが、近年は新素材膜、モジュール構造の最適化、省エネ型システムなど、顧客側の最適化要求が高まっています。
また、用途も工業用水、下水リサイクル、農業分野、医薬・食品まで多岐にわたり、各市場で必要とされる性能やコスト意識が大きく異なります。
日本企業の強みと課題:昭和型ものづくりからの脱却
モノの強みを活かしつつ顧客起点で考える
日本企業は材料技術や膜製造プロセスにおいて依然優位性を持っています。
しかし、現地市場では機能だけでなく「すぐ調達できる」「現地でメンテナンスが受けられる」「現場作業者が使いこなせる」といったソフトの要素が強く要求されます。
昔ながらの「良いものを作れば売れる」という発想では新興国では通じません。
時間軸・現地志向を徹底し、パートナー企業や代理店とリアルタイムに情報共有しながら製品を改善していくことが求められます。
業界に根強いアナログ文化とDXの壁
水処理業界は他の製造業以上に保守的であり、図面や品質・検査記録などアナログ対応が依然多いのが実情です。
特に海外プロジェクトでは、紙とExcel、FAXでサプライチェーンがつながる「昭和型オペレーション」が温存されがちでした。
この壁を乗り越えるには、現場の経験値を活かしつつ、DX(デジタル・トランスフォーメーション)推進を根気強く現地パートナーにも展開していく必要があります。
国際事業連携の実践手法:調達・生産・品質管理の現場から
サプライチェーンの現地最適化
グローバル市場で成功している企業は、膜材料からモジュール組立て、ユニット据付・保守に至るまで「現地サプライヤー」とのパートナーシップを強固に築いています。
製品設計の段階から現地バイヤーや施工会社とディスカッションし、要件のすり合わせを徹底することで、調達コストの最小化と現地準拠品質を両立させます。
また、サプライヤー選定では短期的な価格のみでなく、中長期の安定供給力や技術力も正当に評価する必要があります。
バイヤー視点を持ったサプライヤー連携
サプライヤーの立場としては、単なる「納入業者」にとどまらず、バイヤー(顧客側調達担当)の課題や現場状況を“自分事”としてとらえる姿勢が重要です。
例えば、納期遅延リスク・ロットバラつき要因・現場工事中のトラブルなど、現地で起きる「本当の困りごと」に即対応できることが信頼の積み上げに繋がります。
昭和的な「指示待ち」から一歩進み、現場発意で情報発信や改善提案を行うと、バイヤーから頼られるパートナーに昇格できます。
生産管理・品質保証のローカライズ実践
多国籍プロジェクトでは日本製造現場の流儀をそのまま持ち込むと、しばしば現地スタッフに理解されないケースがあります。
たとえば、ISOやJISの品質基準をどこまでそのまま適用できるのか、検査リストや作業標準の言語・フォーマットはどうするかなど現場目線のすり合わせが不可欠です。
現地に合わせた教育と現場巡回、適応可能な自働化なども提案・指導していくことがグローバル人材の役割です。
国際共同開発とビジネスモデルの革新
現地企業・異業種連携による既存領域の突破
海外では、日本のみで完結しない製品・サービスが評価されやすい傾向にあります。
たとえば、膜製品と現地IoTベンダーとの共同で作業遠隔監視を実装したり、現地金融機関と組んだサブスクリプション型の導入モデルを構築するなどが挙げられます。
このとき日本本社主導ではなく、現地スタッフが意思決定できる体制を整えることで、顧客ニーズへの即応性が高まります。
オープンイノベーションとネットワーク化
業界の垣根を超えた共同開発や、人材交流・データ連携の仕組み作りも必須です。
「水処理膜」単体ではなく、地域インフラ全体の一部として市場を見ていく発想が重要です。
現場発意の改善ノウハウや小さな失敗事例も積極的に共有することで、ネットワーク知見が蓄積され、連携先にとって日本企業が不動の存在感を持ち続けられます。
アナログ業務の残滓とどう向き合うか
根付く紙文化をデジタル変革の起点にする
現場では「紙の手順書」「紙の作業指示」「口頭伝達」に頼る場面も依然多いです。
無理やりデジタル化を押し付けるのではなく、現場担当者の安心感・使い勝手を踏まえ“紙⇔デジタル”のブリッジとなる工夫が必要です。
たとえばスマホを使った検査記録取り込みや、紙書類を簡易にPDF化して共有するなど、小さな成功体験を積み重ねることが持続的DXに繋がります。
現場目線の「見える化」とKPI設定
国際連携の成功事例では、リーダー層だけでなく現場スタッフ全員が、生産進捗や品質状況を“自分ゴト”として管理する風土が醸成されています。
デジタルツールを活用したKPI“見える化”や進捗管理はもちろん、現場会議の頻度やトラブル時の共有ルールなど、昭和時代からの“カイゼン”文化をグローバルにアレンジすることがポイントです。
バイヤーを目指す方へ:調達・サプライヤー連携の視座
バイヤー職を目指す方は、単に「コストを下げる」「取引先を選ぶ」だけでなく、サプライヤー現場が実際にどう動いているかを深く理解しましょう。
アナログ文化に配慮したコミュニケーションや、現地プロジェクト推進の障壁を共に取り除く姿勢が、現場に支持されるリーダーにつながります。
また、現地での異文化対応力、現場で発生する“想定外”に迅速・柔軟に対応するための経験値の積み上げが、国際事業連携の現場で必須となります。
今後の展望とまとめ
水処理膜市場は、今後も規模拡大・用途多様化が見込まれます。
単にグローバル展開を標榜するだけでなく、現場の人・物・金・情報が一体となった「国際実践知」の蓄積が成功を左右します。
昭和からのアナログ文化に根ざした業界特性を熟知し、現実的かつ段階的なDX、現場目線の連携を地道に進めることが、日本製造業の新たな成長モデルを創出します。
この記事を通じて、製造業の皆様がバイヤー・サプライヤー・経営層の立場を横断し、水処理膜の国際市場で信頼され続けるパートナーに成長されることを心より願っております。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)