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高周波回路基礎と測定法各種回路構成を修得する実践講座

目次
はじめに:高周波回路の重要性と現場で求められる知識
高周波回路は、現代の製造業にとって欠かせない技術分野です。
通信、産業用機器、計測機器、家電、自動車、半導体製造装置など、高周波技術が使われている場面は年々増加しています。
特にIoT化や5Gなどの次世代通信インフラの整備が進む昨今、現場で高周波回路を「測定し、理解し、調整できる技術者」がますます必要とされています。
昭和~平成初期まで幅広く活躍してきた熟練技術者が定年を迎え、デジタルが主流となる一方で、“アナログの壁”に悩む現場も少なくありません。
この記事では、そんな製造現場の視点から、高周波回路の基礎と主要な回路構成、測定法とポイントについて実践的な内容を共有します。
バイヤーを目指す方、サプライヤーサイドの方にも役立つ「現場目線」「アナログの真髄」を意識した内容としました。
高周波回路の基礎知識:現場で押さえておきたいポイント
高周波回路とは、おおよそ10kHz以上の周波数で動作する電子回路を指します。
製造業の自動化設備や産業機器、通信モジュール設計、検査機器の保守運用では以下の点が実用上とても重要です。
インピーダンス整合の基本
高周波では、「インピーダンス整合」がなされていないと、信号が伝送路の途中で大きく劣化したり、反射してしまいます。
結果としてノイズが増えたり、信号波形が崩れたりし、最終製品の品質や検査精度に大きく影響します。
現場では「SMAコネクタを接続しただけで感度がガタ落ちした」「ケーブルを長くしたら異常波形が増えた」といった声を多く耳にしますが、こうしたトラブルの多くはインピーダンス整合が原因です。
目安としては50Ω、75Ωなど、使用しているケーブルやコネクタに合わせて負荷や部品側のインピーダンスを揃えることが求められます。
寄生素子(パラジティック)の理解
回路設計書通りに部品を実装しているはずなのに、なぜか特性がズレるー。
その主な原因は、プリント基板のパターンや部品そのものが持つ「寄生容量」や「寄生インダクタンス」です。
部品1つ1つ、実際には理想的な値から逸脱します。
例えばコンデンサは高周波領域ではインダクタンス成分を持ち始め、抵抗の端子や配線にもインダクタンスが付加されます。
昭和の大ベテランたちは、昔から「現物合わせ」の調整力が求められてきましたが、それは今も変わりません。
原因不明の周波数依存性やノイズ問題は、たいてい寄生素子が影響しています。
グラウンド設計—ノイズとEMC対策の起点
高周波回路の成功・失敗を分ける最大の鍵、それがグラウンド設計です。
シングルポイント、マルチポイント、グランドプレーン、シールド配置など、目的や装置構造ごとに「電流の帰路」を適切につくる必要があります。
不適切なグラウンド設計は、ノイズ混入やEMC(電磁両立性)のトラブル、製品認証の不合格リスクへ直結します。
日本の製造業界は“経験価値”が重んじられ、「なんとなくやっている」「昔からこうだ」と放置されてきた部分も多いですが、現代の高周波回路は確実な設計理論が必須です。
主要な高周波回路構成と現場利用例
高周波回路にはさまざまな構成があります。
ここでは製造現場や量産ラインでよく見かける3つの回路構成と、その利用例を紹介します。
1. 増幅回路(アンプ)—信号の“見える化”に不可欠
高周波信号は微小なことが多く、そのままでは測定機器で読み取れません。
そこで使用されるのが高周波増幅回路です。
業界動向としては、OPアンプだけでなく、GaAs(ガリウム砒素)や最新のCMOSアンプICの利用も増えてきました。
増幅回路の設計では、雑音(ノイズ)指数とゲイン、そして帯域特性が大きなポイントになります。
生産装置で「不良が多発する」「検査値が安定しない」といったケースでは、アンプの設計見直しや現場調整による改善が期待できます。
2. フィルタ回路—“必要な信号だけ”を通す技術
高周波現場でのノイズ対策や信号検出には、フィルタ回路が欠かせません。
バターワース、チェビシェフ、ベッセルなどフィルタ特性にはいくつもの種類がありますが、製造業では「現場での安定再現性」「量産コスト」「調整の簡単さ」が重視されます。
汎用LCフィルタ、SAW(表面弾性波)フィルタ、MEMSフィルタといった専用部品も広く使われています。
昭和の時代は「コイル巻き」など職人芸の保守も必要でしたが、今はメンテ性や品質安定を考え“デジタルフィルタとの融合”も進行中です。
3. 発振回路—工場自動化や検査機の“心臓部”
水晶発振器やLC発振回路、サイン波・方形波ジェネレータとして高周波発振回路は使われます。
工場自動化装置では各種センサやタイミング検出、通信同期信号発生に利用されます。
発振回路の設計・選定では、周波数の安定性、ノイズの混入しにくさ、温度ドリフトなどの仕様が極めて重要です。
バイヤーの立場の方は、こうした項目を吟味してサプライヤーへヒアリング・交渉していくと高品質な装置開発につなげることができます。
高周波回路の測定法:アナログ現場で生きる基礎技術
高周波回路の開発・検証・保守には、測定技術が欠かせません。
ここでは実際の現場で使える測定方法、および測定機器ごとの使いこなし術を紹介します。
オシロスコープ活用の勘どころ
高周波信号の“見える化”にはいまだに汎用測定器であるオシロスコープが必須です。
特に現場では「プローブの使い分け」や「グラウンドループの回避」が高精度測定の分かれ目になります。
高周波プローブの選択(例:10:1, 100:1, アクティブプローブなど)、接続時の最短化、余分な配線の省略でノイズや波形崩れを回避しましょう。
測定画面に高調波成分や周期的なノイズが現れる時は、プローブの接続法か周辺グラウンドの引き回しミスが定番です。
ネットワークアナライザで“伝送路”特性を把握
ネットワークアナライザは、伝送路や部品のSパラメータ(反射、吸収、透過など)を数値化する測定器です。
通信関連の現場や製品立ち上げ時には「指定周波数でどれだけロスがあるか」「リターンロスやVSWR(定在波比)が規格を満たしているか」を必ず測定します。
昭和~平成の“勘と経験”に頼った時代から、数字とグラフで確実に判断できる時代へ変わっています。
ケーブルやコネクタ、実装基板の製品選定にも活躍する測定器なので、バイヤーを目指す方はまずSパラメータ計測の基礎を押さえましょう。
スペクトラムアナライザ—ノイズ源究明やEMC対策の切り札
高周波系で不良や検査不能が出るとき、現場の最後の砦になるのがスペクトラムアナライザです。
出力信号やノイズの“周波数分布”をまるごと可視化できます。
自動化装置や検査ライン、音響・画像検査機器のトラブル対応でも、電磁ノイズや混入信号の正体究明に役立ちます。
高周波回路の場合、製造現場では「意図しない発振」「異常信号混入」などスペクトラムで特定できる障害が非常に多いです。
現場でスペアナが使えることは、大きな強みになります。
現場で強化するための研修・OJTのポイント
高周波回路は、座学だけでは「コツ」や「失敗回避策」は身につきません。
既存のベテラン層だけでなく、若手技術者や現場の検査担当者も積極的にOJTに取り組むべき分野です。
具体的には、下記のような実践研修が推奨されます。
現場実験と“失敗例”の共有
納入部品を用意し、実機に組み付けた状態でインピーダンス整合、グラウンド引き回し、測定法などを改めて確認します。
「調子が悪いときはどこを疑うべきか」「測定機器の設定を変えるとどう影響が出るか」など、失敗事例を共有することが再発防止につながります。
昭和的な“ぶっつけ本番”の現場知見も、省力化や自動化が進む今の時代にこそ体系的に残していく意義があります。
社外サプライヤーとの連携強化
バイヤーやサプライヤーの立場でも、“ただ注文する”だけでは時代遅れです。
高周波回路の仕様や測定結果について、率直に現場要求や現状課題を共有し合える関係づくりが大切です。
「納入後にテストしたら思わぬ周波数帯でノイズが発生した」など、早期の情報交換と課題解決に動けるかどうかが、製品品質や量産の安定性を左右します。
今後の高周波技術動向と製造業、現場力強化のヒント
AI/IoT化や5G、さらに自動運転など、高速通信・高周波化はこれからの製造現場でも待ったなしです。
一方で、アナログの勘所や現場での“本当のノウハウ”が失われつつあることも事実です。
バイヤーやサプライヤーにとっても「現場で苦戦しがちな高周波の勘どころ」を押さえておくことで、一段上の価値提案や品質交渉ができるでしょう。
測定機器の技術習得、トラブル事例の社内共有、外部とのオープンな意見交換――。
デジタルとアナログ、昭和の知見と新世代のテクノロジー、その“橋渡し役”を担う技術者・バイヤーへの期待はますます大きくなっています。
まとめ:高周波回路技術で現場力を高め、業界の未来を切り拓く
高周波回路は「難しい」「専門家しかできない」と敬遠されがちです。
しかし、現場のベテラン知見と最新の設計・測定理論を組み合わせれば、誰もが現場力を底上げすることができます。
不具合の減少、製品歩留まりの向上、信頼性や安全性の強化など、高周波技術の習得はあらゆる製造現場で大きな武器になるでしょう。
記事で紹介した基礎知識、主要回路、測定技術、現場研修などは、すぐにでも実践につなげることができます。
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