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投稿日:2025年7月4日

統計的実験計画法で条件探索を効率化する実践演習ガイド

はじめに:製造現場の「最適解」探しと統計的実験計画法の重要性

製造業の現場では、日々さまざまなプロセスやパラメータの最適化が求められています。
「もっと歩留まりを上げたい」「コストを削減したい」「不良率を減らしたい」、こうした課題はすべて、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。
昭和時代から根強く残る「経験と勘」に頼るやり方も悪くはありませんが、近年はデータドリブン、論理的アプローチの重要性がますます高まっています。

そこで強く力を発揮するのが「統計的実験計画法(Design of Experiments:DOE)」です。
今回は、私の20年以上の現場経験にもとづき、製造ラインや工場の改善活動の実践例を交えつつ、統計的実験計画法の基礎とその現場活用・効率的条件探索方法を解説します。
買い手(バイヤー)も供給側(サプライヤー)も、「共通言語」として実験計画法を理解し、サプライチェーン全体の品質・生産性向上に活かしていきましょう。

製造業現場の典型的な悩みと、実験計画法の有用性

なぜ、昔ながらのやり方では限界があるのか?

製造現場では「一つずつ条件を変えてみて、良い結果が出たものを採用する」という方法が昭和期から主流でした。
いわゆる単変量(ワンファクター)法です。

ところが実際には、Aという温度条件とBという圧力条件を同時に変えた時だけ上手くいく、といった「交互作用」が存在します。
また、数百通りもの組み合わせを一つひとつ試す時間も現場にはありません。

デジタル化・自動化が進んできたとはいえ、工場の現場ではまだアナログ体質——例えば品質改善活動は「QCサークル」が手作業でまとめる方式——が残っていたりします。
そうした状況を打破するヒントが、実験計画法(DOE)です。

実験計画法(DOE)とは何か?

実験計画法は、複数の要因を効率よく組み合わせ、「最適な条件」「重要な要因」「要因の相互作用」を科学的に導き出す統計技術です。

具体的には、次のような特徴があります。

– 複数の要因を同時に検証できる
– 結果のバラつきや要因ごとの影響度を定量的に分析できる
– 必要最小限の実験回数で効率的な条件探索ができる

要するに、「現場で1週間もラインを止めて全パターン試す」ような無駄をなくした、合理的なアプローチなのです。

統計的実験計画法の基本ステップ

1. 目的・課題を明確にする

何のために実験をするのか、「最適な条件値は?」「どの要因が歩留まりに効くのか?」といった課題を最初に具体化します。
目的が不明瞭なまま実験を始めると、分析が迷走します。

2. 実験要因(パラメータ)と水準(レベル)を決める

温度・圧力・時間・原材料の種類など、「何を」「どの値の範囲で」動かすのかを決めます。
この段階で「現場のベテランの意見」や「過去トラ」も整理しておくと、のちの因果関係の仮説立案に役立ちます。

3. 実験計画の立案

代表的なものとしては「直交配列表(タグチメソッド含む)」「二元配置法」「全因子実験」などがあります。
条件の組み合わせと回数を最小限に抑えつつ、最大限に情報が得られる計画を作ります。

4. 実験の実施・データ収集

実際の製造ラインや検証装置で、決めた実験計画通りに条件を変えながら測定を行い、データをまとめます。
このとき「データのばらつき(ノイズ)をできるだけ減らす」工夫が重要です。

5. 結果の分析と最適条件の探索

得られた実験データを統計解析し、「どの要因がどのくらい効いたのか」「最適な条件はどこか」を見つけます。
専門知識が必要ですが、近年はExcelや各種解析ツールでも十分な分析が可能です。

6. 再現実験と実践への展開

得られた最適条件をもう一度現場で試し、安定的なアウトプットが出ること(再現性)を確認します。
この段階を飛ばすと、机上の空論に終わる危険があります。

現場目線で語る!実践編:よくあるトラブル&乗り越え方

「データがバラバラで、良し悪しの判断がつかない」問題

品質指標や測定値が大きくばらつく場合は「ノイズ要因(環境変動、作業者)の影響を減らす」か、「繰り返し数を増やす」ことで対応します。
例えば同じ作業者が集中して測定する時間帯を作る・複数回の測定平均値で判断するなど、現場でのちょっとした工夫が大きな差になります。

「コストや時間の制約で全パターンが試せない」問題

この場合、「直交配列表」を使えば、全パターン(たとえば3因子3水準=27回)の代わりに、9回程度の実験で主な傾向がつかめます。
「これだけは絶対外せないパラメータ」にだけ集中的に実験資源を割くのも現場的な知恵です。

「現場の抵抗感――“面倒くさい”の壁を越えるには?」

現場にありがちな「どうせ机上の計算でしょ」「測定のたびに条件変えるの面倒くさい」…。
この壁は意外に大きいです。
私の経験上、「小さな成功体験(例:実験条件ひとつの最適化で歩留まりが数%改善)」を見せることで空気が変わります。
また、管理職(課長・工場長クラス)が実験の目的と効果、現場の負担軽減策を「自分の言葉で」説明すれば、理解されやすくなります。

バイヤー・サプライヤー双方に必要な「共通言語」としての実験計画法

バイヤー目線:納入部品・外注品の品質コントロールに活かす

バイヤーは、サプライヤーと仕様打合せの中で「この工程は何が制約か?」「どう条件のばらつきを抑えているのか?」を聞かれる場面が増えています。
統計的実験計画法を知っていると「最適化プロセスの妥当性」や「サンプル提出条件の根拠」を論理的に説明できるので信頼が増します。

サプライヤー目線:バイヤーの“why?”に答える力になる

サプライヤー側も、ただ「合格品ができました」ではなく、「どの実験でどう最適案を導いたか」「安定供給のためにどんな再現性確認をしてるか」を科学的に示せると、ビジネス機会が広がります。
現場改善力の高い企業は、実験計画法を軸にした品質保証体制づくりとその“見える化”で、他より一歩先んじることができるのです。

昭和的体質からの脱却:「データが語る現場」に変えるために

実験計画法を本当に職場に根付かせるには、現場リーダーや中堅層が率先して「数字でものを語る」文化を創ることが不可欠です。

– QCサークルや勉強会に統計思考を取り入れる
– Excelの関数機能やグラフ化で“見やすく”する工夫
– 若手社員に、失敗も含めた実験チャレンジの場を与える

昭和世代と令和世代の「現場の思考」が交錯する今、両者の強み——経験とデータ指向——を融合することで、日本の製造業は一段上の実力をつけていけます。

まとめ:データを制する者が製造業を制す

統計的実験計画法(DOE)は単なる理論ではなく、現場で「効く」実践ツールです。
実験計画法を使いこなし、最小の手間で最大の“最適条件”と“安定品質”を引き出す力は、バイヤーにもサプライヤーにも不可欠です。

昭和時代の「勘」と「職人技」も大事にしつつ、これからの日本の製造業は「データが語る現場」を育てましょう。
20年以上現場で汗をかいた経験から断言します。
答えは、きっと現場に落ちています。
ただし、その「答え」を本当に見つけるには、“統計的実験計画法”という強力な目と耳を持って、ラテラルに深く考え抜くことこそが新しい地平線の扉を開ける鍵なのです。

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