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Tシャツの形崩れを防ぐ防縮加工と縫製テンションのバランス

目次
Tシャツの形崩れを防ぐ基本的な考え方
Tシャツは毎日のように着用されるため、洗濯や着用の度に型崩れや縮みが発生しやすいアイテムです。
特にアパレルOEM工場や量産工場の現場では「防縮加工のレベル」と「縫製時のテンション管理」がバイヤーからの品質要件を大きく左右します。
ここでは、昭和から抜け出せないアナログな現場でも根強く続く現状と、これからの時代に即した実践的ノウハウを、工場内の管理職経験者の視点で解説します。
なぜTシャツが型崩れしやすいのか
Tシャツは主にコットン(綿)素材で作られます。
コットンは天然繊維で吸水性に優れていますが、水分による膨張と乾燥時の収縮で変形が発生しやすい特徴があります。
また、伸縮性を持たせるために編み組織(天竺やフライスなど)で製造されるため、糸のひっぱりやすさ=テンション管理が難しく、裁断や縫製作業でも生地が歪みやすいという課題があります。
防縮加工の実態と限界
防縮加工とは何か
防縮加工(プリシュランク加工)は、布地をあらかじめ湿らせたり蒸気をかけたりしながら強制的に縮めることで、製品化後の縮みを最小限に抑える加工です。
主に以下の2つの手法があります。
- 物理的防縮加工:生地の段階で蒸気や熱を加えながら縮ませて安定させる
- 化学的防縮加工:樹脂などの化学薬品を使い糸の結合を安定させて動きを抑制する
いずれの方法も、量産や小ロットで安定品質を確保するためには不可欠となっています。
限界はどこにあるか:100%完璧な防縮は不可能
実際には、どんな高精度な防縮加工を行っても“完全に縮まない”Tシャツの製造は現実的ではありません。
理由は主に次の2つです。
- 糸1本ごとに吸湿と乾燥、テンション、繊維の太さが違うため、均一な挙動とならない
- 洗濯や着用などの繰り返し負荷で部分的な伸びや縮みが残るため
それでも、「染め前」「染め後」「タンブル乾燥」「プレス仕上げ」など、各段階での工程管理を高めることで、5%前後の型崩れや縮みに抑えるのが一般的な基準となっています。
縫製テンションのコントロールが品質のカギ
縫製テンション管理の現場実態
Tシャツの製造現場において、意外と見過ごされがちなのが「縫製時のテンション(引っ張り加減)」の管理です。
現場の昭和的な職人肌のベテランは「経験」で調節しますが、実は熟練者でも日々の体調や天候などで微妙な差異が発生します。
特に裾・袖口・ネック周りの縫い合わせ部分で、テンションが強すぎるとパッカリング(シワや波打ち)、弱すぎるとヨレヨレや穴あきに繋がります。
テンション管理を「数値化」する試み
アナログ的職人技から脱却し、全体最適・再現性の向上を目指すためには「テンションの数値化」が非常に重要です。
例えば、
- ミシンごとの縫製速度、送り歯圧、糸調子ダイヤル値を記録し標準化
- 生地の伸縮率にあわせてネックバインダーの引張り長さを数値指定
- テンション計を用いて引張り実験を行い、適正値を工程基準書に明記
などの仕組み化が求められます。
人の勘や経験だけに頼らず、「工程の見える化」と「維持管理」の仕組みを整えることで、小ロットや多品種生産でも品質バラつきの低減に成功しています。
防縮加工と縫製テンション、その「バランス」が崩壊の引き金
どちらが欠けても形崩れは防げない
せっかく防縮加工が万全でも、縫製テンションが合わなければ洗濯による形崩れが起きます。
逆もまた同じです。
サプライヤー側の現場では「どちらか一方が良ければ品質も安定する」という考えが根強いですが、パターンやデザインによって必要なバランスが変化するため、工程間のすり合わせが必須です。
バイヤーは「バランス感覚」を求めている
バイヤーの多くが現場で重視するのは、「型崩れへの総合的な取り組みができているか」です。
どこまで防縮加工に原価と手間をかけ、どこまで縫製ミス(テンション過多・不足)を工程管理や検査で抑え込むか。
サプライヤーには、単なる納期遵守やコスト削減ではなく、
何のためにどの程度の防縮加工を行い、どういったテンション管理手法を使い、なぜその基準にしたのか
というプロセスの再現性・透明性が求められています。
アナログな現場力にデジタルの“補助輪”をプラスする
ラテラルシンキングで「全社改善」に踏み出そう
現場に根付いた昭和的アナログ力――つまり「肌感覚」「長年の勘」は、すぐには手放すべきではありません。
ただ、今後の製造業進化を本当に目指すならば、その暗黙知をデジタル(数値・データ)で補完し、「技能承継」から「技能の見える化」へ進化させる必要があります。
例えば、
- IoTを活用した生地テンションのリアルタイムモニタリング
- ラインごとのテンション値や生産ロットごとの寸法変化データ集積
- 日報管理や不良情報、設備稼働データの一元化とAI分析
こういったデジタル技術はアナログ力の“補助輪”として活用するのが最も効果的です。
バイヤーやサプライヤーが共に進むために必要なこと
発注側(バイヤー)から見ると、工場の見積・品質トークで現場力を担保しつつ「新しい取り組み」や「透明性」「再現性」をどう両立するかが要諦となっています。
一方、サプライヤー側としては、個人の熟練や根性論に頼らず「なぜこのやり方が最良なのか」を説明できる仕組み=見える化が受注の決め手になります。
現場もデスクも巻き込み、そして未来の世代へと“業界標準”を広げていく意識が、今後一層大切になっていくと感じます。
まとめ:Tシャツの高品質化は組織横断的な課題
Tシャツの形崩れを防ぐには、防縮加工と縫製テンションという2大要素のバランス管理が不可欠です。
工場現場の肌感覚とデジタル化による見える化を組合せることで、従来の型崩れや品質トラブルを大きく減らすことができます。
アナログ業界の伝統も尊重しつつ、新たな知見や技術を積極的に取り入れることが、今後の製造現場・サプライヤー・バイヤーの三位一体による高品質ものづくり時代を切り開くカギとなります。
ぜひ現場の皆さまも、新旧のノウハウを融合させ、Tシャツのみならずあらゆる製品の高品質化に挑戦してください。
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