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工程能力のデータを取り寄せ改善効果を単価に反映させる手順

目次
はじめに ― 製造業の現場と工程能力の重要性
製造業において「工程能力」とは、製造プロセスが設計された通りに製品を安定して生産できる能力を意味します。
この数値を正確に把握することは、高品質な製品を安定供給するための絶対条件です。
しかし現実の製造現場では、過去からの慣習やアナログ管理の文化が根強く残っており、工程能力データの収集や活用が十分に行われていないケースが多いのが実態です。
本記事では、私自身が20年以上の製造業実務経験を活かし、「工程能力のデータを取り寄せ、改善効果を単価に反映させる手順」について現場目線で詳細に解説します。
昭和的な現場でも実践可能なポイントや、バイヤー・サプライヤー双方にとってのメリットにも触れますので、製造業に従事する皆さま、バイヤーを目指す方、またはサプライヤーとして顧客の考えを深く知りたい方々の参考になれば幸いです。
工程能力とは何か?押さえておきたい基本知識
工程能力は、よくCP(Capability Index)、CPK(Process Capability Index)といった指標で表されます。
これは、生産工程で作られる製品がどれだけ規格通りに仕上がるか、バラツキをどれだけ小さく抑えられているかを数値化したもので、数値が高いほど安定した工程=高品質・低ロスの生産が可能です。
たとえばCP値が1.33以上であれば、多くの業界で合格点とされます。
しかし現場では、「長年このままだったから」「ベテラン作業員が感覚で調整しているから」と、きちんとした工程能力データがないまま管理されている場合も少なくありません。
なぜ工程能力データが必要なのか?
製造現場において工程能力データの取得は、品質トラブルの未然防止やムダなコスト増加の回避に直結します。
客観的なデータで問題点を把握できるため、根拠のある改善策立案や、外部からの監査対応にも有効です。
もちろんサプライヤーとバイヤー間の価格交渉やサプライチェーン全体の効率化でも、透明性の高いデータが大きな武器となります。
工程能力データを取り寄せる具体的な手順
1. 自社・取引先の工程フローと管理体制を整理する
まず最初に、どの工程・どの設備・どの品番でデータ取得が必要かを明確にします。
古い図面や仕様書、現場での手順書を改めて確認しましょう。
大手であればすでにFMEAやQC工程表があるはずですし、中小企業でも「〇〇工程での公差管理」といった記録が必ずどこかに残っているはずです。
継続的な現場ヒアリングで、実際に工程管理している担当者から現状課題や期待値を聞き取るのも有効です。
2. 取得するデータの項目と形式を定義する
どの品質特性(寸法、重量、硬度など)をどのタイミングで、どの単位で測定するかを仕様として明確化します。
また、測定後のデータは紙面での記録か、エクセルや専用システムでの電子記録か、自動収集装置の有無なども確認します。
ここで現場が感じている「面倒」「誰が測るか」という運用面の抵抗を拾っておくことが、スムーズな導入の分岐点となります。
3. データ取得のための教育や仕組み化で習慣化する
測定者によってバラツキが出てしまうケースは少なくありませんので、定めた基準通りにデータを取得できるよう「なぜこのデータが必要か」「どう活用するのか」を現場で説明した上で、測定方法の訓練やマニュアル整備を進めます。
昭和的現場では「また余計な仕事が増えた」と反発が出やすいため、「このデータ取得があなたの作業や工程の軽減、品質向上、ひいては顧客満足や会社の利益につながる」というメリットをしっかり伝えましょう。
4. 実際にデータを収集し、工程能力指数を算出する
工程ごとに得られたデータからCP・CPKを計算します。
理想は専門の統計ソフトや自動計算機能付きシステムの活用ですが、エクセルで計算式を組んでも十分運用可能です。
結果として「どの工程が安定していて」「どこに大きなバラツキや改善余地があるか」が明確になります。
5. 分析結果を元に工程改善施策を検討・実施する
データが集まれば、その中で「異常」「傾向」「外れ値」「繰り返し起こるミス」などが見えてきます。
これらに対して、現場と協議しながら改善策(設備の調整、治工具の変更、人員配置の見直しなど)を具体的にプラン化します。
根拠となるデータを見せながら「ここを改善すれば、これだけ歩留まりが上がり、不良率が下がり、工数・コストダウンになる」と説明することで現場の納得感も高まります。
データから見える改善効果を単価に反映させるには?
1. 改善前後のデータを客観的に比較する
工程改善後のデータを再度収集し、CP・CPKや不良率、工数、原材料ロスなどの観点で「何がどれだけよくなったのか」を数値で比較します。
これにより改善の実効性を明確に示すことができます。
2. 改善効果をコスト・単価に落とし込む
例えば歩留まりの向上で廃棄ロスが1%分減った、工数が1ステップ減って人件費が月20時間分削減できた、再検査や手直し工数がなくなった。
このような定量的効果を「年間で○万円のコストダウン=部品単価○円減」という形で算出します。
従来の「勘」と「経験」ではなく、データに基づいて単価改善要請・交渉できるのが大きな強みです。
3. サプライヤー・バイヤー間での透明な対話
バイヤー側としては、サプライヤーから「工程能力データがあります」「こう改善したので利益がでました。値下げできます」などの提案に数字で答えられると大きな安心感が生まれます。
一方サプライヤー側も、単なる「値下げ圧力」ではなく、「お互いに利益が出せる範囲で」「工程を安定化することで品質トラブルや納期遅れのリスクも減る」というWin-Winの提案へとつなげることができます。
昭和から令和へ―アナログ業界が工程能力データ活用で生き残るには
製造業の現場には、いまだ「帳票は手書き」「データというより“感覚”」「なぜやるのかの説明が足りず形骸化する管理」という昭和的風土が色濃く残るケースが見られます。
ですが、人手不足や原材料コストの高騰、サプライチェーンのグローバル化が進むなかでデータ活用こそが、中小メーカーでも生き残れる道だと言えるでしょう。
現場の腹落ちとデータ活用の両輪が進化を生む
単に「上からの指示」や「バイヤーからの要望」だけでデータ収集を始めても、現場は納得しません。
なぜ必要なのか、どんなメリットがあるのか、もし良いデータが出れば「褒められる」「報奨がある」といったインセンティブもセットで運用することが成功のキモです。
その上で、AIやIoTなどの最新技術も小さくても導入し、「ここはデジタル化」「ここはアナログで」と最適なハイブリッド運営を目指しましょう。
実際の現場で成果を上げるノウハウ集
– 紙帳票→エクセル化→自動収集システムへ段階的に進める
– 分析結果を現場に掲示し、可視化・共有する
– 小さな“勝ち体験”(例えば、歩留まり1%UPの実績)を全体会議で表彰する
– 顧客にも改善データを見せ「納期短縮」「品質安定」「単価減」の効果をアピールする
– バイヤーも現場見学し「データに基づく安全・安定」への理解度を高める
まとめ ― 新時代のモノづくりに求められる工程能力データの徹底活用
製造業の永遠の課題は、安定した品質・スピード・コストを両立することです。
そのために不可欠なのが“事実に基づく工程能力データ”の取得・分析・改善運用です。
現場の抵抗を和らげながら、地道な運用で数字を積み重ね、改善の効果をしっかり単価やコストに落とし込む。
それがバイヤー、サプライヤー双方の「信頼」と「長期的な利益」の源泉となるでしょう。
昭和から続く現場文化を活かしつつ、令和の新しいモノ作りのかたちを一緒に創り上げていきましょう。
工程能力データの徹底活用は、これからの日本の製造業が国内外で生き残り、勝ち残るための最強の武器なのです。
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