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ワイヤー再利用が難しい工程構造の現実

目次
はじめに
製造業の現場で“当たり前”のように使われているワイヤー類。
日々大量に消費されるそのワイヤーを「再利用できないか?」と考える現場担当者や経営層は少なくありません。
サステナビリティ志向やコスト削減の流れの中で、ワイヤーの再利用は理想的に思える一方、多くの工場では現実として再利用が難しいといわれています。
なぜ“ワイヤー再利用”は簡単に進まないのでしょうか。
本記事では、筆者の現場経験と業界トレンドに基づき、工程構造に潜む課題、バイヤーやサプライヤーの本音、改善に向けた示唆を掘り下げてご紹介します。
ワイヤー利用の基本構造と現状
ワイヤーが現場で果たす役割
製造業の多くの現場では、ワイヤーはケーブルハーネスや部品組み立て、搬送用など様々な用途で使われています。
例えば電気配線用ワイヤーは、品質・信頼性が重要視される上に、加工や取り回しもしばしば1回きりの使い捨てです。
また、結束・梱包用途のワイヤーやステンレスワイヤー、鋼線なども現場消耗品の代表格です。
再利用が困難となる工程上の理由
多くの工程では、ワイヤーが“使い切り”で処理される構造が根付いています。
以下に、再利用を阻む現場の現実を挙げてみます。
・電線などはカットや圧着処理のため、取り外すと損傷し再利用不可
・汚染物質や油分の付着、曲げクセ・変形、断線リスクなど品質保証が難しい
・再利用した際の不良(ショートや通電不良等)が重大事故に波及する恐れ
・“部品トレーサビリティ”確保の観点から、中古部材の利用はルール上禁止されている場合も多い
・そもそもワイヤーの脱着工数が大きく、再利用に要する工数が材料コスト削減を上回る
特に、完成品や重要部品、クリーンルーム工程・自動車など厳格な管理基準が求められる業界では、品質保証の観点から“再利用は絶対禁止”という文化が根強く残っています。
サステナビリティとコスト削減の狭間で
バイヤーが再利用をためらうワケ
調達購買担当、いわゆる“バイヤー”の立場から考えると、サステナブル調達や経費削減の観点から「ワイヤー類の再利用提案」は本来歓迎されるべきものです。
しかし現実には、
・「再利用による品質トラブルの責任を供給元に転嫁できない」
・「現場反発が強い(現場管理者や品質保証担当が“再利用=手抜き”のようにみなす)」
・「規格・ルール(ISO、IATF等)上、再利用材の流用は許されない現場が多い」
というリアルな懸念から、購買主導で一気に推進されるケースは少ないのです。
サプライヤーの苦悩と本音
他方、サプライヤー(部品・材料供給側)の立場でも再利用は難しい選択です。
・「再利用材供給=安かろう悪かろう、と見られるリスク」
・「再利用材は選別・品質保証に余計なコストがかかり、むしろ割高になる」
・「一度製品化されたワイヤーや電線は回収ルート確保自体が困難」
そのため、サプライヤー側も
「ワイヤー再利用ニーズは感じていても、現状では“割に合わない”」
「サステナ要望は大切だが、品質で信頼を崩すリスクを取りたくない」
と考えている企業が多いのが実情です。
再利用できるケースとその条件
部分利用やリワークでの活用事例
一方で、ワイヤー再利用が全く行われていないわけではありません。
“端材”や規格外長さのケーブルのリサイクル活用、検査工程における一時的な使い回し、梱包用バンドワイヤーの再利用など、“工程外・副資材的”な用途では一定の活用余地があります。
たとえば、
・QC工程の簡易治具や評価用途
・自動化設備の内部試験配線
・簡易設備や社内移動用の仮配線
などは、既に廃棄予定であったワイヤーの“ワンショット再利用”の範疇で行われています。
成形・冶金系サイクルにのせた再資源化
使い終えたワイヤーを物理的に“切断・粉砕”し、再資源化(メタルリサイクル)する流れも拡大しています。
とくに銅線・ステンレスワイヤーは、スクラップとして高い価値を持つため、回収→溶解→新材料化は古くから行われてきました。
これら“クローズドループ・リサイクル”は純粋な“部品の再利用”とは異なりますが、現行工程に最も馴染んでいるサステナブルな取り組みでしょう。
昭和型アナログ工程に染み付いた慣習
現場をよく知る立場として、いわゆる「昭和型の現場思考」にも触れておきます。
・「材料に一切手を加えず新品を使うのが“正しい仕事”」
・「万一のトラブル防止のため、安全側に全振りするのが現場管理者の鉄則」
・「リスクより手間の増加を最も敬遠する(“今まで通り”が最強の品質保証)」
こうした意識が数十年にわたり現場の“暗黙ルール”として浸透しているため、いかに合理的な提案でも“前例がない”だけで葬り去られるケースは珍しくありません。
逆に、「現場でうまく再利用した事例を共有し合う」という文化や、「安全・高効率のため再利用を一段と厳格に禁止する」という“極端”な文化が根付きやすいのも、この分野の特徴です。
デジタル化・自動化時代で再利用は広まるか?
IoT・トレーサビリティと再利用問題
近年、IoT活用や製品トレーサビリティ強化が進む中、「ワイヤー一つ一つの管理」「現場ログの詳細把握」も進んでいます。
たとえば、RFIDタグ付きのワイヤー出荷や、材料ロット管理の強化が進めば、「再利用履歴の可視化」によって再利用への壁が一部下がる可能性があります。
自動化ラインの“再利用設計”という新しい潮流
加えて、自動車部品や家電分野では、“ワイヤー脱着・再利用を前提”とした専用治具や装置、モジュール設計が進められるケースも出てきました。
ラインの自動化が進めば、「都度都度ワイヤーを新品に交換する」工程そのものが減少し、“再利用”という概念自体が新たな形で更新されていく時代が来るかもしれません。
まとめ:本当に合理的な“再利用”とは何か
ワイヤー再利用が難しい現場構造には、作業性や品質・安全、そして業界慣習など、複合的な理由が根強く存在します。
コストやサステナ動向の高まりを受け、「安易な再利用」は現場リスクや信頼低下を招きかねません。
一方で、エンジニアリング思考やデジタル・自動化の進展とともに、「“最終製品用途以外”での再利用」や「トレーサビリティに基づく“限定条件下での再利用”」の可能性も拡がっています。
結局、“正しい再利用”とは、「品質・コスト・作業負荷・安全」のバランスを見極めつつ、工程全体を設計・最適化していく現場力に他なりません。
バイヤーやサプライヤーの皆さんは、自社現場の実情や取引先の文化をよく理解しながら、“新たな再利用地平”への一歩をぜひ検討してみてください。
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