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製造遅延の原因が実は購買の段取り不足にあるケース

目次
製造遅延の原因はどこにあるのか?現場でよくある「購買の段取り不足」問題
製造業の現場では、納期遅延や生産スケジュールのずれ込みが頻繁に話題に上がります。
「機械故障で遅れた」「現場の作業員が足りなかった」など、遅れの理由はさまざまですが、意外と見落とされがちなのが「購買の段取り不足」です。
一見、現場の問題と思われがちな製造遅延ですが、実はバックヤードでもある購買部門の段取りが大きく影響しているケースが少なくありません。
この記事では、20年以上現場と管理職を経験してきた立場から、その実情や課題、業界特有の背景、改善のヒントまで徹底解説します。
製造遅延の現場から見える”ボトルネック”
遅延=現場の責任、の“昭和的思考”は今も根強い
製造業、とくに昭和・平成から続く老舗工場では「納期遅延=現場(生産部門)の責任」という暗黙の認識を持つ方が多いです。
実際、生産計画の遅れが目立つと現場に指摘が集中します。
しかし、現場目線でトラブルの元をたどっていくと、部品・原材料・外注品の調達遅れや仕様ミスマッチといった”購買領域での段取り不備”が原因であることが多々あります。
「なんとなく」の発注と「とりあえず」の調整が混乱を招く
購買担当者は、社内の需給計画や取引先の情報をもとに日々発注業務をこなしています。
ただ、「在庫が減ってきたからそろそろ発注」「去年と同じ流れで進めよう」といった場当たり的な運用が横行している企業も珍しくありません。
また、デジタル化されていない場合はExcel台帳やFAX、電話に頼ることも多く、情報伝達の遅れや抜け漏れが発生しがちです。
サプライヤー任せの”感覚的購買”が生産現場の混乱を招く
日本の製造業は、長年にわたる取引先との関係性や、いわゆる“なあなあ”の商習慣が色濃く根付いています。
「何かあってもサプライヤーが何とかしてくれる」「いつも通り発注していれば足りる」といった思い込みが、意図せぬ在庫不足や納期遅延につながっています。
特に、部材点数が多く納品リードタイムが長い生産体系では、このような“感覚的購買”がリスクを増幅させています。
製造現場が直面する主な購買の「段取り不足」パターン
1.調達リードタイムの見積もりミス
サプライヤーとの取引で「これくらいで届くだろう」という過去実績だけを頼りにしていると、原材料市況や物流情勢、国際情勢の変化で、急に納入リードタイムが延びるリスクを見逃します。
昨今の半導体や電子部品、特殊鋼材などは、コロナ禍や国際的な紛争の影響で、大幅な納期延長が頻発しています。
2.発注ロットミスによる現品不足/過剰在庫
適正在庫管理ができておらず、「念のため大量購入」や「予算調整のため発注抑制」など、場当たり的なロット管理が現物不足の温床となっています。
また、逆に発注し過ぎて倉庫があふれ、品質劣化や余剰在庫による無駄な保管コストが発生します。
3.不十分な発注指示・仕様共有
部品図面や設計仕様の変更、条件変更がうまく伝達されていないケースも多いです。
「前回と同じでOK」と指示されてサプライヤーが旧仕様で納品し、現場で不適合が発覚し作業がストップする、といった事例も頻繁に発生しています。
4.外注先管理のゆるさ
製品加工や組立工程の一部を外注化している工場では、外注管理も購買部門の大きな役割です。
外注先が自社工程の負荷山に気づかず「いつも通り」の納期回答をし、ギリギリで納品され現場が混乱する、といったケースも起きがちです。
長引くアナログ文化と業界特有の課題
なぜ“段取りミス”がなくならないのか?
日本の製造業は「QCサークル」や「カイゼン」に代表される現場力や現物主義で発展してきました。
一方、調達購買や生産管理部門は「裏方」であり、手作業・属人化・紙文化が根強く残っているのも事実です。
ITシステム化やデータ分析が進む企業もある一方、多くの中小メーカーでは業務改善が進まず、ベテラン担当者の頭の中だけで全てが動いているといった現場も珍しくありません。
サプライチェーンの複雑化とグローバルリスク
近年、サプライチェーンのグローバル化や部品点数の増大、取引企業の多様化などにより、購買の段取り難易度は劇的に上がっています。
かつては「100社のサプライヤーから部材を揃えればOK」だったものが、今や何百、何千という関連業者や物流経路、為替や政治環境の変動とも付き合う必要があります。
そのなかで購買現場が従来と同じ業務フロー、従来と同じ思考で走り続けていては、いずれ大きな納期トラブルに直面せざるを得ません。
購買業務を制する者が製造を制す
購買は“単なる担当職”ではなく、サプライチェーン全体の司令塔
一昔前まで購買部門は「業者との窓口」「とにかく安く買う部署」という捉え方が主流でしたが、今や購買はサプライチェーン全体のリスク管理や納期調整の要となっています。
購買段取りの良し悪しが工程の流れを決定し、ひいては企業の利益や顧客満足度を左右する時代となりました。
現場から寄せられる“調達の声”
・こういう部材が欲しいんだけど、今から発注しても間に合わないよね
・1個だけの特注品なのに、半年も待たされるのはなぜ?
・図面が変わったのに、旧仕様のまま届いた!
現場は怒り、呆れ、諦めます。
しかし、こうした声の背景には購買と設計・生産現場のコミュニケーション、段取りの断絶が横たわっています。
次世代バイヤー・購買担当者への期待
今求められるのは「発注業務を正確にこなす人」ではなく、「サプライヤーの状況を見極め、現場と一体となってリスクを先読みし、調整・提案できるプロアクティブなバイヤー」です。
また、従来の”数字合わせ”だけでなく、品質面、環境面(グリーン供給網)、サステナビリティの視点も不可欠になっています。
製造遅延を未然に防ぐための“新しい購買段取り”
1.情報の見える化を徹底する
発注~納入までの進捗をデジタルで“見える化”し、現場・設計・購買・サプライヤー間の情報格差を解消することが先決です。
在庫データや納期アラート、仕様変更履歴などをリアルタイムで共有できるITツールの導入は、もはや必須と言えるでしょう。
2.“なぜなぜ”を積み重ねて段取りを標準化する
属人化されたノウハウや“あうんの呼吸”は、トラブルのもとです。
納期遅延が発生した際は「なぜ?」を多角的に深掘り、購買~現場まで一連の業務プロセスの標準化を進めていきましょう。
「なぜ今発注したのか?」「なぜこのサプライヤーなのか?」など、現場+バイヤーが一体で考える習慣が大切です。
3.現場・設計・購買・サプライヤー4者の協働体制を築く
従来の“購買任せ”“サプライヤー任せ”を脱し、設計段階から購買担当も参画し、仕様変更やリードタイム短縮を一緒に討議する。
また、サプライヤーとも連携し、納期や価格だけでない提案・改善活動(QCD活動)を推進することが大切です。
4.バイヤーのスキルアップ・多能工化の推進
バイヤーも現場をよく知り、加工現場・組立現場の流れや設備、品質管理との関係を学び続ける必要があります。
一方、現場や設計担当者も購買の制約や市況感覚を理解することで、全体最適なものづくりが実現します。
まとめ:購買の段取り不足が「製造遅延の根本原因」に―柔軟な思考と現場力が突破口
製造遅延の影には、現場には見えにくい購買業務の段取りミス・情報不足が潜んでいます。
昭和・平成の枠組みにとらわれることなく、現場・設計・購買・サプライヤーが手を取り合い、ITや新しいマネジメント思考を取り入れることで、これからのものづくりは大きく進化します。
とくに、現場経験を持つ購買担当者やプロアクティブなバイヤー、サプライヤーと真摯に向き合う現場監督など、多様な視点を融合することで、製造業、日本のものづくりは新たな高みに到達するはずです。
あらためて、「購買の段取り不足」が隠れたリスクであることに目を向け、自社の現場を見直してみてはいかがでしょうか。
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