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投稿日:2025年6月10日

実務に活かす粉体解析技術とその応用および実習

はじめに:粉体解析技術が製造現場にもたらす価値

製造業、特に化学、食品、医薬品、金属加工など多様な業界で『粉体』は日常的に取り扱われています。
一見単純に見える粉体の扱いですが、流動性、粒度分布、凝集性といった特性が生産効率、品質、コスト、ひいては安全性に多大な影響を与えています。

この記事では、私が20年以上の現場経験で培った実践的な粉体解析技術の知見と、現場実務での応用・実習方法を、「現場で使える」ことに焦点をあてて解説します。
また、バイヤーやサプライヤー、未知のバリューチェーン関係者にも役立つ内容として、工場の昭和アナログ的な思考の現実にも一歩踏み込みます。

粉体解析技術の基礎と業界の悩み

粉体の特性とは何か?現場でよくある“困った”の本質

粉体とは、固体微粒子が多数集合したものですが、液体や固体とは異なる挙動を示します。
多くの工場で以下のような状況を頻繁に目にします。

– 「同じ材料なのにロットによって流れが全く違う」
– 「タンクから排出したときにブリッジ(詰まり)やラットホール(空洞)が起きて生産が止まった」
– 「攪拌してもダマが取れず製品が不均一」

これらの現象を予防・改善するには、粉体の「粒径分布」「凝集性」「水分含有」「摩擦特性」「静電気」などを定量的に知ることが重要です。

なぜ“アナログな現場”で粉体トラブルは繰り返されるのか?

現場の多くは経験や勘に頼っています。
何十年も「いつものやり方」「前任者のご指導」を継承することで、一見上手く回っているように見える一方、突発的なトラブル対応や再発防止が進まず「イタチごっこ」になりがちです。

その本質的要因は「粉体現象の見える化」が進んでいない事。
最新の解析装置やセンサー投資に難色を示し、「数字を取ってもモノづくりが上手くなるわけじゃない」という昭和的固定観念が根強いのも一因です。

粉体解析の代表的な手法と現場がまず導入すべき技術

グラニュロメトリー:粒径分布の“見える化”で品質を極める

粒径分布(グラニュロメトリー)は、粉体品質管理の基礎中の基礎です。
代表的な方法には「ふるい分け法」「レーザー回折・散乱法」「画像解析」などがあります。

実務ではレーザー回折式の粒度分布計のデータを用いて、
– 製品グレード分け(微粉・粗粉の選別)
– 粉体搬送や供給装置設計の適正化
– 混合プロセスの最適化
などに活用できます。

アナログ現場では「ふるい」で済ませがちですが、デジタル粒度測定を習慣化することで「なぜ流れないのか」「なぜ混ざらないのか」に数値的根拠が得られるため、設備設計から品質クレーム対応まで格段に精度が上がります。

レオロジー:粉の“流れやすさ”を数値化する

粉体の流動特性は、材料投入や搬送に直結します。
「アンガー試験」「傾斜板試験」「粉体レオメーター」などで、
– 崩壊角や安息角(流れやすさの指標)
– 圧縮時の凝集性
などを測定します。

例えば原料サイロからの詰まり対策や新設備検討の際、崩壊角を設計値に反映すれば、未然にトラブルを防止できます。
実際、私が関わった現場でも、実測値データ×CAEシミュレーション連携で大幅な歩留り向上を実現しています。

水分・粒子間相互作用と工場環境の影響

粉体は湿度や静電気の影響を非常に受けやすく、製造工程の環境管理も重要です。
赤外線水分計やカールフィッシャー法による水分測定を行い、エアコンプレッサー・ドライヤーの適正化、加湿・除湿作業の定量管理を進めることが、結局は重大トラブル低減につながります。

粉体解析技術を現場でどう応用するか?

新設備・プロセス設計段階での有効活用

新工場や増設計画時に粉体解析技術を活かすことで、「装置の詰まり」「原材料の置換」など不確定要素を科学的に除去できます。
設計段階から試験データを逐次フィードバックし、最適なホッパー角度やバルブ選定を進めると失敗投資が大きく減ります。

既存工程のボトルネック解消と省力化投資判断

現場では「日々同じ原因」で機械が止まることが多々あります。
その根本のボトルネックを、粉体特性の違いから因果(なぜ起きているか)で捉え直すことで、最小限の修繕・カイゼンで効果を最大化できます。
「だれがやっても止まる」「この粉だけなぜかうまく流れない」などの経験則から、漏斗や供給シュートの設計修正、加振装置の追加など、狙いを絞った投資が可能です。

品質トラブルの再発防止と証拠資料化

クレーム対応で「本当に粉体特性が原因か」「ロット不良は偶発なのか」を第三者的に説明できるのも解析技術の大きな強みです。
テストデータは、社内外での品質説明やISO監査、顧客指摘対応の客観的証拠としても非常に有効です。

2024年以降の業界動向と、昭和アナログからの脱却ポイント

DX(デジタルトランスフォーメーション)と粉体技術の融合

近年は工場DXの流れにより、AI解析による粉体特性予測や、IoTセンサーでリアルタイムに粒径・水分データをモニタリングする事例も増えています。
また、クラウドを使った分析・レポーティングで、工場内外の技術者・バイヤー・サプライヤー間で素早く情報共有する取り組みも始まっています。

現場が「データを取るだけで満足する」から、「データを判断につなぐ」「全員が見える化する」マインドへ進化することが、新たな収益拡大の原動力です。

バイヤー・サプライヤー間で何が重要になるか?

調達購買のバイヤーも、評価基準が「コスト」一辺倒から「安定品質」「不具合未然防止」へと変化しています。
粉体解析の結果を「商談」に持ち込むことで、サプライヤーは“科学的根拠ある強み”としてアピールできるため、他社との差別化が図れます。
逆にバイヤーは、「なぜその価格・納期なのか」「粉体特性が違えば何が起こるのか」を理解し、最適調達戦略の立案に活用できるようになります。

粉体解析技術の現場実習:最低限押さえておきたい実践例

1. サンプル採取の基本から始める

どんな高度な装置でも、サンプリングが間違っていればすべて台無しです。
「均一に攪拌し、偏りのないサンプルを複数採取する」ことを徹底します。
現場でよくある「取りやすいところから、ついひとつ掬う」はNGです。

2. 粒径分布(ふるい分けorレーザー)の実践

古典的なふるい分けは人海戦術ですが、初めての現場導入なら一番理解しやすい方法です。
一方、レーザー式を用いる場合は操作手順だけでなく、データ解釈ノウハウ(50%粒径がプロセスにどう影響するかなど)を社内勉強会で共有していきましょう。

3. 粉体の流動性評価(安息角、崩壊角)の測定

200g程度の粉を円筒状にして静かに引き抜き、自然に崩れた山の角度を測ります。
この角度が高いほど流れにくく、設計やトラブル時の重要な指標になります。
複数回測定し、バラツキ要因が何かを現場でディスカッションすると理解が深まります。

4. 水分簡易測定およびヒューム・静電気環境のチェック

簡易赤外線水分計を使い、ロット毎・環境条件の異なるタイミングで比較測定を行います。
作業員の気付きやヒヤリハットを吸い上げて、現場巡回プラスアルファの形で分析すると、より実用的な運用が定着します。

まとめ:現場目線の粉体解析が未来の製造業を変える

粉体解析技術は決して「研究室だけのもの」ではありません。
現場・設備設計・品質管理・調達などあらゆる製造活動の底上げの柱です。
今後は、アナログ管理にも最新テクノロジーのノウハウを掛け合わせることで、より高度で持続可能な工場運営が可能となります。

現場での第一歩は「データを取る・見える化する・チームで議論する」ことから始まります。
バイヤー・サプライヤー双方が粉体特性と向き合い、科学的・論理的なコミュニケーションを重視することで、日本の製造業は新たな飛躍ができるでしょう。

製造業の現場で働く皆さま、ぜひ自分の現場の“当たり前”をいま一度見直し、粉体解析技術を日々の実務に活かしてください。それが、現場・工場・業界の未来を切り拓く第一歩です。

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