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プレス成形の同時穴あけで後加工をなくす順送レイアウト設計

目次
はじめに:製造現場における後加工の課題
製造業のプレス現場では、部品に穴をあける工程は避けて通れません。
しかし、プレス成形後に穴あけなどの後加工を追加すると、工程の増加やリードタイムの延長、品質リスクの増大といったさまざまな課題が発生します。
そのため、これらの後加工をなくし、高効率・高品質な生産ラインを作ることは、現場担当者だけでなくマネジメント層にとっても大きなテーマです。
特に日本の製造業では、いまだにアナログな工程改善や現場対応に頼っている現実があります。
「昭和のやり方を引きずっていて本当に大丈夫か…」と感じる方も多いでしょう。
本記事では、現場目線で「プレス成形と同時に穴あけまで完結する順送レイアウト設計」について、最新の業界動向や、なぜいまだ多くの現場で課題が解消されないかにも触れながら、実践的なアプローチを解説していきます。
順送プレスと同時穴あけの基本メカニズム
順送プレスは、ひとつの材料帯を金型内で複数工程にわたって連続的に加工する生産方式です。
打抜き、絞り、折り曲げなど複数の加工を、材料送りと連動して順番に行う仕組みが特徴です。
この順送化の最大のメリットは、工程集約化による生産効率向上と、自動化による安定品質の創出にあります。
特に近年では、工程を徹底的に集約し、穴あけまでをも同時完結させて、後加工を完全になくす事例が増えています。
- 材料搬送後すぐに打抜き・穴あけ工程に入る
- プレス成形とほぼ同時に複数穴や切込み加工を行う
- 最終端でバリ取りや追加穴加工なしで組立用部品として出荷可能
これを実現するためには、金型設計段階から「一発で全ての機能を満たす順送ステップレイアウト」を緻密に設計する必要があります。
なぜ順送と同時穴あけが進まないのか
進んだ現場ではすでに主流となっているこの手法ですが、なぜ多くの工場では「成形後の追加穴あけ」が常態化しているのでしょうか。
実際の現場ヒアリングや業界調査から、以下のような根深い課題が見えてきます。
金型屋・プレス屋の「昭和的分業体質」
金型製作とプレス成形が分業されている中小製造業では、「金型屋は成形機能のみ」「後加工はプレス屋の安易な場当たり」になりやすく、全体最適なレイアウト提案が出にくい傾向があります。
現場起点の属人的な対処で、根本的な工法転換に踏み込めていません。
一発成形への「品質不安」と責任回避意識
「最初から全てを終わらせて工程短縮したいが、一発勝負は怖い」
「もし寸法ズレや穴歪みが出た時の再加工コスト・責任が重すぎる」
こうした“念のため後加工”の安全策を取る工場が多く、結果的に工程改善を妨げています。
金型投資額と回収期間のプレッシャー
多機能一体型の順送金型は初期投資額が大きくなりやすいです。
「受注が安定するまでは単機能金型+手作業で様子見」となることも珍しくありません。
特に下請け構造の強い業界ではバイヤーとサプライヤー間でコスト負担やリスク分担の擦り合わせが困難となります。
現場目線で考える:順送同時穴あけを実現する3つのアプローチ
現実的な「順送同時穴あけ」実現には次の3つの視点が重要です。
1. 工程全体を俯瞰した金型レイアウト設計
「とりあえず今ある金型を流用」ではなく、最初から“抜き・曲げ・穴あけ・取外し・廃棄品処理”すべての動線をシミュレーションできる設計リーダーを配置します。
最小工程で全要件を満たす「生産ライン最適レイアウト」策定には、生産管理・現場作業者・品質管理が一体となったチーム編成が不可欠です。
2. 金型メーカーとの緊密なEarly Engagement
受注前段階から金型メーカー・材料サプライヤー・品質保証メンバーが参加する「リードタイム短縮プロジェクト」を発足させ、設計段階から仕様決定します。
これにより、「後工程任せでの曖昧仕様」や「生産現場での追加穴加工」が激減し、トータルコストとリスクを大幅に低減できます。
3. デジタルシミュレーションと現場実証の融合
DX活用による金型シミュレーション(CAE解析)を前提に、「本当に一発で全てが仕上がるか?」を事前検証します。
バーチャル段階で穴の歪みや補強リブの干渉、バリ発生リスク、歩留まり未達リスクなどを徹底的に洗い出し、現場試作評価とフィードバックを繰り返すサイクルがポイントです。
バイヤー・サプライヤーが知るべき業界最新動向
今ではトヨタ、ホンダ、日産などの自動車大手は、Tier1・Tier2に「順送同時穴あけの標準化」を積極的に働きかけています。
これは、「工程数削減・省力化」を通じて、サプライチェーン全体の生産リードタイム短縮と原価低減を狙うためです。
また、半導体パッケージや電池筐体のような“寸法精度が生命線”の領域ほど、追加工の余地が許されず、設計段階から厳しく順送化を求められています。
これをチャンスととらえ、積極的に「一発同時穴あけ対応」を提案できるサプライヤーは、確実に受注競争で優位に立てる時代です。
2020年代以降は、金型や順送設備のIoT化・状態監視、自動品質判定などの次世代技術も登場し始めています。
昭和型の“泥臭い分業”ではなく、設計から納品までワンストップで最適提案できる体制づくりが評価される傾向も強まっています。
プレス成形順送レイアウト設計の現場ノウハウ集
ここでは、実際に私自身が現場管理職として体感した「順送同時穴あけレイアウト設計」の要点を、体験談を交えてご紹介します。
設計初期段階で求められる要件整理
現場で起こりがちなのは、「図面ができてから材料切り出し・順送レイアウト案を検討」するやり方です。
しかしこれでは、最適な穴位置や送りピッチ、歩留まり改善の工夫が後追いになりがちです。
設計初期に生産技術・金型設計・品質保証がそろって、以下のポイントを必ず押さえることで高効率プロセスが実現できます。
- 製品形状・穴個数・寸法公差の一次整理
- 材料幅・送りピッチ最適化
- 廃棄品除去・スクラップ処理動線の設計
- 組立工程へのリンク要件の明確化
これらを形式的なチェックリストにせず、実際の使用現場や上流~下流工程を巻き込んだ議論をすることが大切です。
順送金型の具体的な工夫ポイント
プレス同時穴あけを円滑に進めるための現場ノウハウをいくつか紹介します。
- 穴加工は極力前段(早い工程)で完了させ、曲げ・成形工程で歪みが生じないよう注意
- 金型冷却・潤滑の追加でバリ発生を防止
- 精密部位ほどインサート型やパンチブッシュ活用で摩耗リスク低減
- サーボプレスの導入で繊細な送り・打抜き制御
- 抜きカスの自動排出構造設計(ダストトラップやエアブロー等)
これらは一見細かい配慮に見えますが、10万ショット以上の長寿命運転では驚くほどの差を生みます。
まとめ:バイヤー・サプライヤーが今こそ取り組むべき理由
「プレス成形と同時に穴あけを完結する順送レイアウト」の実践は、省力化・生産効率向上・後工程削減に直結します。
日本のものづくりが今後も競争力を維持するには、アナログな分業体質や“後加工ありき”の古いやり方から脱却し、設計段階から工程集約・情報集約によるデジタル生産改革を推進するべきです。
現場で悩みを抱えている方や、バイヤーとして生産プロセスを理解したい方、サプライヤーとして新たな付加価値提案を目指す方。
今こそ、順送同時穴あけを中心とした“次世代の現場改善ストーリー”をはじめてみてはいかがでしょうか。
現場力と新技術の融合が、製造業の未来をきっと切り開きます。
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